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七◆未来への追憶
二
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「ああ、そう言えば千早ちゃんがお水と間違えてお酒飲んだら気分悪くなっちゃったらしくて、風に当たって来るって言ってたよ。秋月くんは付き添いだって」
「ふ~ん。佐倉、酒飲めねェのか。ちょっくら様子でも見に行くか」
平助は千早の身を案じ、席を立とうとした。
けれどそれを遮るように、どういうわけか上半身裸の状態で、原田が会話に割り込んで来る。
「平助お前、野暮なことすんじゃねェよ」
「ああ? 野暮なことってなんだよ」
「ハッ。これだからお前は餓鬼って言われんだよ」
「はあ? 全っ然意味わかんねぇ。つーか服着ろよ!」
平助が原田にガンを飛ばせば、原田はやれやれと言った様子でぐいと顔を近づける。そして周りの様子を気にしながら、ぼそっと呟いた。
「んっとに全然わかってねェな。あいつらはな、恋仲なんだよ。やっと二人きりになれたんだ。そっとしといてやれ」
「……っ」
刹那、平助の顔が赤く染まる。原田の言わんとすることをようやく理解したのだろう。
そんな平助の動揺に気付いた日向は、平助の体調を案じる。
「あれ? 平助くんさっきより顔赤くない? 大丈夫?」
「なっ……なななんでもねェよ!」
「そうだぞ、日向。こいつ、ただちょっといかがわしいこと考えただけだから」
「いかがわしいこと、ですか……?」
「ばっ……違ェよ!! 酒のせいだよ!」
「ハッ。なーんだ、やっぱ酔ってんじゃねぇか」
「――ッ!」
◇
――左之さんの馬鹿あああ! 残りの酒全部俺が飲んでやるーッ!
――あぁっ! 止めろ平助!
――あははっ、いいぞ平助もっとやれー!
――ちょっとやめてよ、騒ぐなら向こう行ってよね。
そんな穏やかな喧噪を聞きながら、千早と帝は縁側に座り、闇夜に浮かぶ丸い月を見上げていた。
「皆、いい人たちだな」
帝は、先ほどの隊士たちの自分への態度を思い返し、安心したような笑みを浮かべる。
新選組と言うから気性が荒い者ばかりかと思っていたが、どうやら心根は優しい人たちのようだった。千早がこの一ヵ月やってこれたのは、実際周りの助けがあったからなのだろう。
「うん、皆とっても優しいよ。土方さんは怖いけど」
「確かに、あの人はちょっとな」
二人は、ぽつりぽつりと言葉を交わす。今日帝が目を覚ましてから、二人きりの時間はこれがまだ二度目だ。一度目は30分の制限時間付きだったため、ゆっくりと話している時間はなかった。
「そう言えば帝、本当に体調はもう大丈夫なの?」
「ああ。傷跡はまだちょっと痛いけど、大したことない。筋肉落ちてるから、体力には不安があるけどな」
「そっか。なら良かった」
「それより千早こそ大丈夫なのかよ。さっきまで蒼い顔してただろ。酒、抜けた?」
「うん、まだちょっと頭痛いけど大丈夫」
「あんまり辛かったら言えよ。膝くらい貸すから」
「うん、ありがとう」
二人は何気ない会話の中でお互いを気遣いあう。一月ぶりの再会に、付き合い立てのときのようなぎこちなさを感じながら。
「ふ~ん。佐倉、酒飲めねェのか。ちょっくら様子でも見に行くか」
平助は千早の身を案じ、席を立とうとした。
けれどそれを遮るように、どういうわけか上半身裸の状態で、原田が会話に割り込んで来る。
「平助お前、野暮なことすんじゃねェよ」
「ああ? 野暮なことってなんだよ」
「ハッ。これだからお前は餓鬼って言われんだよ」
「はあ? 全っ然意味わかんねぇ。つーか服着ろよ!」
平助が原田にガンを飛ばせば、原田はやれやれと言った様子でぐいと顔を近づける。そして周りの様子を気にしながら、ぼそっと呟いた。
「んっとに全然わかってねェな。あいつらはな、恋仲なんだよ。やっと二人きりになれたんだ。そっとしといてやれ」
「……っ」
刹那、平助の顔が赤く染まる。原田の言わんとすることをようやく理解したのだろう。
そんな平助の動揺に気付いた日向は、平助の体調を案じる。
「あれ? 平助くんさっきより顔赤くない? 大丈夫?」
「なっ……なななんでもねェよ!」
「そうだぞ、日向。こいつ、ただちょっといかがわしいこと考えただけだから」
「いかがわしいこと、ですか……?」
「ばっ……違ェよ!! 酒のせいだよ!」
「ハッ。なーんだ、やっぱ酔ってんじゃねぇか」
「――ッ!」
◇
――左之さんの馬鹿あああ! 残りの酒全部俺が飲んでやるーッ!
――あぁっ! 止めろ平助!
――あははっ、いいぞ平助もっとやれー!
――ちょっとやめてよ、騒ぐなら向こう行ってよね。
そんな穏やかな喧噪を聞きながら、千早と帝は縁側に座り、闇夜に浮かぶ丸い月を見上げていた。
「皆、いい人たちだな」
帝は、先ほどの隊士たちの自分への態度を思い返し、安心したような笑みを浮かべる。
新選組と言うから気性が荒い者ばかりかと思っていたが、どうやら心根は優しい人たちのようだった。千早がこの一ヵ月やってこれたのは、実際周りの助けがあったからなのだろう。
「うん、皆とっても優しいよ。土方さんは怖いけど」
「確かに、あの人はちょっとな」
二人は、ぽつりぽつりと言葉を交わす。今日帝が目を覚ましてから、二人きりの時間はこれがまだ二度目だ。一度目は30分の制限時間付きだったため、ゆっくりと話している時間はなかった。
「そう言えば帝、本当に体調はもう大丈夫なの?」
「ああ。傷跡はまだちょっと痛いけど、大したことない。筋肉落ちてるから、体力には不安があるけどな」
「そっか。なら良かった」
「それより千早こそ大丈夫なのかよ。さっきまで蒼い顔してただろ。酒、抜けた?」
「うん、まだちょっと頭痛いけど大丈夫」
「あんまり辛かったら言えよ。膝くらい貸すから」
「うん、ありがとう」
二人は何気ない会話の中でお互いを気遣いあう。一月ぶりの再会に、付き合い立てのときのようなぎこちなさを感じながら。
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