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六◆偽りの過去

十六

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◇◇◇

 ――にしてもこの男、デカいな。

 沖田は、自分の前を歩く千早と帝を見比べてそう思った。どうやらこの秋月という男は、斎藤と同じくらいの身長はありそうだ、と。

 そもそもこの時代の日本人男性の平均身長は160cm弱である。それに比べて帝は175cm、つまり大男と呼んでも差し障りのない体格だ。新選組には体格のいい者が揃っているが、ここまで背丈の高い者はそうそういない。
 そして、それは千早もまた同じ。千早の身長はこの時代の男性の平均と変わらない。

 異人は身体が大きいと聞いていたが、もしや異国に住んでいるだけでも身体は大きくなるのだろうか?

 ――ぼんやりとそんなことを考えていると、沖田はふいに名前を呼ばれた。声のした方を振り向けば、いつのまにやら帝が隣を歩いている。
 彼はにこやかな表情で「お聞きしたいことがあるのですが」と沖田に言った。

 いきなり何だと思ったが、その横顔は特に意味ありげな様子でもない。これはきっと自分と親交を深めようとしているのだろう。沖田はそう判断し、無難に返そうと心に決めた。

「何かな」
「千早は、沖田さんの小姓なんですよね?」
「ああ、そうだよ」
「俺が眠ってる間、千早は元気にやってましたか?」
「そうだね、まぁ、それなりには」
「では、沖田さんに迷惑をかけたりとかは……」
「ああ、それは勿論かけられたけど。でも本人は精いっぱい頑張ってたし。今思えば仕方なかったんだと思うから」
「そうですか。沖田さん、お優しいんですね」

 それは少々含みのある言い方で、何となく気になった沖田は再び帝をチラと見やった。すると今度は帝もこちらを見返してくる。その表情はどうも物言いたげで、沖田は無意識に眉をひそめた。すると帝は、何故か顔を寄せて来る。


 ――何だ、この男。
 帝の距離感の取り方に、沖田は気持ち悪さを感じ距離を取ろうと身体を引いた。が、それよりも早く帝が呟く。それは、前を歩く千早には聞こえない程の声量だった。

「沖田さんってもしかして、千早のこと好きだったりします?」
「――っ」
 ――何だと?
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