上 下
6 / 158
零◆始まり

しおりを挟む

「あっ」
 あるものに目を奪われたのだ。そのあまりにも可愛らしい姿に、私は思わず立ち止まる。

「千早? どうかした?」
 追い付いて来た帝も私の視線を追って――目を止めた。そこには――。

「猫!」
 そう――私たちの行く先には、可愛らしい黒猫の姿があった。
 私は無類の猫好きだ。というより、動物全般を愛している。

「ちょっと見てよ! あの子ジジにそっくりじゃない!?」
「……ジジ?」
「魔女の宅急便の!」
「……あー」

 私はつい帝のことなど忘れ、猫に駆け寄った。すると大変嬉しいことに、猫も私の足にすりよって来る。
 かっ……可愛い~!

 だが帝は気に入らないようだ。彼は、「俺は猫以下かよ」などとブツブツ言いながら、不愉快そうに眉をひそめる。が、今は帝より猫だ。猫ちゃんは帝とは対照的に、機嫌良さそうにゴロゴロと喉を鳴らしてくれている。

 それにしても、人慣れしているのだろうか。逃げるどころか、すり寄ってくるなんて。

「こいつ、飼い猫だよな」
 帝も同じように感じたらしい。確かに首輪をしていることから、飼い猫であると思われる。

「そうだねぇ。猫ちゃんは、どこから来たのかなぁ~?」
 私は興味本位で尋ねてみた。もちろん返事など期待していない。しかし……。
 猫は私の質問に答えるように、ピョンと立ち上がったのだ。

「猫ちゃん……?」
 更に猫は、私の呼びかけに対しにゃぉんと一鳴きすると、とてとてと歩き出す。

 嘘、この子……!

「ね、ねぇ! 帝見た? 今の見た? あの子、私の言葉わかったみたい!」
 私は帝を振り返り、猫を指差す。が、鼻で笑い飛ばされた。

「そんなんありえねぇって」
「でも、犬は言うことわかるって言うし!」
「……まぁ」
「とにかく、私はあの子を追いかけるから!」
「はあー? 本気かよ、もう夜だぞ」
「大丈夫! 帝は先に帰ってて」
「なっ……、千早が行くなら俺も行くし」
「なぁんだ、本当は帝も猫好きなんじゃん」
「はあ? 俺は千早を心配して」
「素直じゃないなぁ」
「だから、違うって」

 そんな軽口を叩き合いながら、私と帝は小走りで猫を追いかけた。

◆◆◆

 ……それが、一体どうしてこんなことになってしまったのか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

処理中です...