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五◆京の都
二
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◇◇◇
「人、増えて来たね」
「だね」
日向の言葉通り、烏丸通に近づいていくにしたがって更に人通りが増えていく。流石市街地と言えよう。
――ここが四条通だから、自分の通う学校はここから2、3キロの場所だろうか。
千早は町の様子や店の看板を必死に頭に叩き込みながら、ここに来た日のことを思い出す。
あの日、どこをどう通ったのか、新選組と出会った場所はどこなのか。この時代に来たときに自分たちが居た場所は、八条通である可能性が高いのだけれど、と。
そんなことを考えつつも、表面上では日向との会話に華を咲かせる。
露店を見つけては、あのお菓子はどんな味がするんだろう、などと緊張感のない笑顔を浮かべていた。あまりまじまじと町を観察していては、再び沖田に疑われるかもしれないと思ったからだ。
が――それにしても、と千早は慎重に周りの様子を伺う。先ほどからずっと気になっていることがある。
どうも、自分たち新選組は町の人々から避けられている気がするのだ。
確かに自分たちにはどこか物々しい雰囲気があるし(槍も手にしているわけで)――実際、沖田や斎藤は屯所を出てから殆どしゃべっておらず、隊士たちも基本的には無言だが――わざわざ背中を向けてまで避けられるような存在であるのだろうか。
沖田に尋ねてみようかとも思ったが、なんだか聞いてはいけない気がしてとどまった。
そんなこんなで30分ほど歩いていくと、四条河原に辿り着いた。そう言えば今朝日向が、見世物小屋があると言っていた場所だ。
そこは物凄い人通りだった。あっちもこっちも人、人、人。大人だけでなく、子供の姿も多くある。老若男女、あらゆる人が集まる場所のようだった。それに先ほどまでと違ってややカラフルな門構えの店も多い。赤い看板に目をやれば、その店の外壁には目を疑うようなチラシが貼ってある。「蛇女」「牛女」と書かれているが……見間違いだろうか。
「人、増えて来たね」
「だね」
日向の言葉通り、烏丸通に近づいていくにしたがって更に人通りが増えていく。流石市街地と言えよう。
――ここが四条通だから、自分の通う学校はここから2、3キロの場所だろうか。
千早は町の様子や店の看板を必死に頭に叩き込みながら、ここに来た日のことを思い出す。
あの日、どこをどう通ったのか、新選組と出会った場所はどこなのか。この時代に来たときに自分たちが居た場所は、八条通である可能性が高いのだけれど、と。
そんなことを考えつつも、表面上では日向との会話に華を咲かせる。
露店を見つけては、あのお菓子はどんな味がするんだろう、などと緊張感のない笑顔を浮かべていた。あまりまじまじと町を観察していては、再び沖田に疑われるかもしれないと思ったからだ。
が――それにしても、と千早は慎重に周りの様子を伺う。先ほどからずっと気になっていることがある。
どうも、自分たち新選組は町の人々から避けられている気がするのだ。
確かに自分たちにはどこか物々しい雰囲気があるし(槍も手にしているわけで)――実際、沖田や斎藤は屯所を出てから殆どしゃべっておらず、隊士たちも基本的には無言だが――わざわざ背中を向けてまで避けられるような存在であるのだろうか。
沖田に尋ねてみようかとも思ったが、なんだか聞いてはいけない気がしてとどまった。
そんなこんなで30分ほど歩いていくと、四条河原に辿り着いた。そう言えば今朝日向が、見世物小屋があると言っていた場所だ。
そこは物凄い人通りだった。あっちもこっちも人、人、人。大人だけでなく、子供の姿も多くある。老若男女、あらゆる人が集まる場所のようだった。それに先ほどまでと違ってややカラフルな門構えの店も多い。赤い看板に目をやれば、その店の外壁には目を疑うようなチラシが貼ってある。「蛇女」「牛女」と書かれているが……見間違いだろうか。
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