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第二部
46.隠された真実(前編)
しおりを挟むアレクシスは語った。
急ぎ手当てをしなければと人を呼ぼうとしたものの、オリビアに強く引き留められたこと。
それとほぼ同じくして、オリビアの様子を見にきたであろうリアムが現場に現れたこと。
アレクシスはリアムにオリビアの手当てを申し出たが、リアムはそれを断り、オリビアを連れ帰ってしまったことを――思い出せる限り、詳細に。
「あのときリアムは、はっきりと俺にこう言った。『この件は他言無用だ。オリビアは今日、ここには来ていないことにする。ルクレール侯爵への謝罪も不要だ』と。それに、翌日リアムから届いた手紙には『大した火傷ではなかった』と書かれていたし、オリビアが火傷をしただなんて、噂一つ立たなかった。だから俺は、治ったものだとばかり思っていたんだ。……それなのにまさか、二年経っても消えないほどの火傷だったとは……」
アレクシスの顔が、罪悪感に歪む。
アレクシスは、昔からオリビアが苦手だった。
しかしだからといって、オリビアに不幸になってもらいたいなどとは、一度だって考えたことはなかった。
『頼むから、別の男を当たってくれ』
そう願う程度のものだったのだから。
それなのに、自分のせいで不幸な結婚をさせると聞かされては、いくら女嫌いのアレクシスといえど、責任を感じずにはいられなかった。
「お前には隠していたが、俺はリアムが領地に引き下がるまでの間、何度も『オリビアとの結婚』を迫られたんだ。オリビアに怪我をさせた責任を取れ、と。だが俺は、そんなあいつの言動を卑怯な脅しだと捉えてしまっていた。『大した怪我ではないと言ったくせに、それを引き合いに出すのか』と」
とはいえ、もしリアムが素直に、オリビアを傷物にした責任を取れ、と迫ったところで、アレクシスは間違いなく受け入れなかっただろう。
オリビアは侯爵家の令嬢だ。
痕が残るほどの怪我といっても、手袋で隠せるくらいの程度なら相手には困らない。ルクレール侯爵家と縁を結びたがっている貴族は、ごまんといるのだから。
つまり、たとえ強く出たとしても、「そんなに言うなら、別の相手を用意してやる」と返されるのが関の山。リアムだってそれがわかっていたから、敢えて控えめな言い方に終始したのだろう。
それに、話を聞く限り、火傷の件は事故である。
オリビアを突き飛ばしたアレクシスには当然責任があるが、アレクシスの女嫌いを知りながら、腕を掴んだオリビアにも同じだけ責任がある。
基本的にアレクシスびいきのセドリックは、今の話を聞いてそう判断した。
(……にしても、これでようやく話が繋がった)
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