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「久しぶりの王都だわ」
あの卒業式から今まで、領地に引っ込んでいたアリアは、例の二人の結婚式のため、半年ぶりに王都に来ていた─
あれから、この国の宰相を務める父に婚約解消を伝えたが、概ね陛下から聞いていたのだろう。
特になにも言わず領地へ帰ることを許してくれたので、ここぞとばかりに羽を伸ばした。
王都から離れた場所にあるランドバートの領地でのんびりと過ごしていたアリアの元に、結婚式の招待状が届いたのは、庭で優雅に紅茶を飲んでいるときだった。
よく送ってこれたわね…って仕方ないか。仮にも私、公爵令嬢だし。
流石に宰相の娘である彼女が不参加というのは要らぬ噂を立ててしまうので、面倒と思いながらも、参加の返事をすると同時に、王都へ旅立つ準備を始めた。
そして今日─半年ぶりに戻って来たのである。
ランドバートの屋敷は王都の中でも立地のいい場所にあり、王城からも近い。
とはいえ、もちろん馬車を必要とする距離ではある。
懐かしい顔ぶれに迎えられ、アリアは此処もやっぱりいいわねと再認識した。
特に何も変わったこともなく、結婚式当日となる。
朝から侍女たちに全身磨かれ、ドレスを着せられた彼女は、鏡に映る自分をみて彼女たちの思惑に苦笑いがこぼれる。
(これは見初められて来いってことね……)
あの婚約解消のあと、父も母も新たな婚約者を立てることはなかった。
跡継ぎには兄がいるので、慌てなくてもいいということなのか、我が家は意外とそこが寛容だ。
もともと王太子との婚約も、あちら側から言われただけで、我が家としてはどちらでも良かったという。
アリア自身も彼が嫌とかは特になく、貴族だしこんなものか…ぐらいの気持ちしかなかった。
特に好きな相手もいないため、自分では焦っているわけではないのだが、使用人たちは違ったのだろう。
今回の結婚式で他国からも高位貴族らが集まってくる。
あわよくば…
そんな思いが見え隠れする彼女たちに呆れるが、心配かけていることもわかる。
とりあえず準備はできたので、この場を立ち去るのが吉とばかりに、玄関に待たせている両親の元へアリアは急いだ。
◇
式は恙無く終わった。
その後の披露宴にて、皆が順番に新郎新婦へと祝いを述べるなか、アリアも両親と共に向かった。
もう何も思っていなかったのに、フェルナンドには申し訳なさそうな顔、カナリアに関しては、アリアにしか聞こえない小さな声で「アリア様も愛する相手が見つかるといいですわね」と上から目線の言葉をかけられ、イラッとしたのは仕方がない。
まぁ、両親がピクッと反応したので、二人には確実に聞こえたはず。
しかし、そこは長年王妃教育で使った仮面で、華麗にスルーした。
その後は料理を堪能したり、他国の方に誘われてダンスをしたりして過ごした。
パーティーが終わった後、招待客には部屋が用意されているらしく、時間も遅かったので、そのままアリアたちは自分たちに用意された部屋へと案内してもらった。
そして深夜─
目が覚めた彼女は、何だか眠れないからと、ガウンを纏い部屋に面した庭へと足を踏み出した。
あの卒業式から今まで、領地に引っ込んでいたアリアは、例の二人の結婚式のため、半年ぶりに王都に来ていた─
あれから、この国の宰相を務める父に婚約解消を伝えたが、概ね陛下から聞いていたのだろう。
特になにも言わず領地へ帰ることを許してくれたので、ここぞとばかりに羽を伸ばした。
王都から離れた場所にあるランドバートの領地でのんびりと過ごしていたアリアの元に、結婚式の招待状が届いたのは、庭で優雅に紅茶を飲んでいるときだった。
よく送ってこれたわね…って仕方ないか。仮にも私、公爵令嬢だし。
流石に宰相の娘である彼女が不参加というのは要らぬ噂を立ててしまうので、面倒と思いながらも、参加の返事をすると同時に、王都へ旅立つ準備を始めた。
そして今日─半年ぶりに戻って来たのである。
ランドバートの屋敷は王都の中でも立地のいい場所にあり、王城からも近い。
とはいえ、もちろん馬車を必要とする距離ではある。
懐かしい顔ぶれに迎えられ、アリアは此処もやっぱりいいわねと再認識した。
特に何も変わったこともなく、結婚式当日となる。
朝から侍女たちに全身磨かれ、ドレスを着せられた彼女は、鏡に映る自分をみて彼女たちの思惑に苦笑いがこぼれる。
(これは見初められて来いってことね……)
あの婚約解消のあと、父も母も新たな婚約者を立てることはなかった。
跡継ぎには兄がいるので、慌てなくてもいいということなのか、我が家は意外とそこが寛容だ。
もともと王太子との婚約も、あちら側から言われただけで、我が家としてはどちらでも良かったという。
アリア自身も彼が嫌とかは特になく、貴族だしこんなものか…ぐらいの気持ちしかなかった。
特に好きな相手もいないため、自分では焦っているわけではないのだが、使用人たちは違ったのだろう。
今回の結婚式で他国からも高位貴族らが集まってくる。
あわよくば…
そんな思いが見え隠れする彼女たちに呆れるが、心配かけていることもわかる。
とりあえず準備はできたので、この場を立ち去るのが吉とばかりに、玄関に待たせている両親の元へアリアは急いだ。
◇
式は恙無く終わった。
その後の披露宴にて、皆が順番に新郎新婦へと祝いを述べるなか、アリアも両親と共に向かった。
もう何も思っていなかったのに、フェルナンドには申し訳なさそうな顔、カナリアに関しては、アリアにしか聞こえない小さな声で「アリア様も愛する相手が見つかるといいですわね」と上から目線の言葉をかけられ、イラッとしたのは仕方がない。
まぁ、両親がピクッと反応したので、二人には確実に聞こえたはず。
しかし、そこは長年王妃教育で使った仮面で、華麗にスルーした。
その後は料理を堪能したり、他国の方に誘われてダンスをしたりして過ごした。
パーティーが終わった後、招待客には部屋が用意されているらしく、時間も遅かったので、そのままアリアたちは自分たちに用意された部屋へと案内してもらった。
そして深夜─
目が覚めた彼女は、何だか眠れないからと、ガウンを纏い部屋に面した庭へと足を踏み出した。
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