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跳ねるように飛び起き、呼吸を落ち着かせようと胸に手を当ててゆっくりと息をする。
「こ…こは…?」
目覚めたのは質のいいベッドの上。辺りを見渡せば高級そうな家具が置かれていた。
・
・
・
記憶を辿ろうとしたがなにも出てこない。確か最後の記憶は…彼女の恋人と揉めて──
「───っ」
慌てて身体を確認する。怪我は……してない?
高そうな寝間着らしい服を着ている以外、特に問題はなさそうだ。
いやまて…体がだいぶ小さくなっている……ということは──
可能性として、あの時死んで、また生まれ変わったというのが正しいだろう。いつもならあるはずの記憶がないので、はっきりとは言えないが。
これまでの流れだと、その時の記憶に前世のそれが追加される感じだった。
なのに、今回は前世の記憶しかない。この身体が記憶喪失なのか?それとも何らかのトラブルで身体が小さくなっただけで、実際はあの続きの世界ということだろうか。
もう一度部屋を見渡す。
……知らない場所だ……
いや……違う?…見覚えがあるような……
部屋は薄暗くてよく見えない。床に足をおろし窓際まで歩く。
外の様子を見れば何か情報が得られるかも。大きく深呼吸し、カーテンを掴むとゆっくりと開いた。
「…あぁ」
朝日が目に入り、眩しくて一瞬瞼を閉じる。再び開いた視界に飛び込んだ景色に呆然としていると、部屋にノックの音が響いた。
「失礼いたし…おや?今日はもう起きられていたんですね。おはようございます、ルーファス様。カーテンなどは私どもがしますのに…」
一礼して入ってきた男には覚えがあった。呼ばれた名にも。
ル…ファス……そうか…この身体はルーファスなのか。
「…は…はは…あははは」
笑いと一緒に涙がこぼれる。
道理で新たな記憶がないはずだ。私はすでにそれを持っていたんだから当然か。
「大丈夫ですか?どこかお加減でも…」
「問題ない…何も問題ないよ、ジェード」
突然蹲って感情をこぼした自分の姿に慌てた男の名はジェード・ノスタリア。代々我が家に使える執事の家系であり、現在の私の教育係でもある。
そして─
私の名前は──ルーファス・クラジスタ。
「…戻ったのだな…私は」
小さく呟く。
忘れたくとも忘れられない。これまでの転生の始まりとなった最初の人生の名前である。
今日がそのいつなのかはわからない。
願わくば、彼女ともう一度やり直したい
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