翼は人を魅せられる。

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小話

植田二佐、ソニックアローズを作るまで。

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※植田目線でのお話です。

~ある日のこと~


「あの…二佐、質問なんやけど。」

相変わらず皆が気ままに活動する事務所で、坂元が話し始めた。


「え、俺?」


「そうそう。なんでソニックアローズってあるん?元々戦闘するのが普通なわけだし。」


「じゃあ、少し話すとしよう。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~2年前の5月~

俺は今、戦闘部隊である第201飛行隊の隊長をしている。しかしまあ…人はまだ5人で少ないし、俺はあまり戦闘が好きではない。まあそんなことを愚痴ったって仕方がない。今日は訓練休みなわけだし、飛行隊のメンバーを連れてどこかいくとしよう。


「なあお前達、今日どこかいかないか?」

すると宮本が反応してくれた。彼はこの隊で一番の古参搭乗員だが、自ら希望してここに来てくれた。宝の持ち腐れのような気がしてならないのだが…。

「お、いいですね。とは言ってもどこに行きましょう?」

伊地知が言った。

「確かさー、今日第64戦隊とか有志の戦闘機部隊が合同で航空祭やってなかったっけ?そこでも行ってみる?」


「あー、確かにどこかで言ってましたね。隊長が良ければ、5人でそこに行きましょうか。」

航空祭か…。悪くないな。私も興味がある。


「ではその航空祭に行くとしよう。伊地知、提案ありがとうな。」


「んじゃあ航空祭で、昼飯でも奢って?俺牛串がいい。」


「全く仕方ない…。では昼飯は俺が皆に奢るから好きなものを食べろ。」


「「「「ヤッホー!!!」」」」

まあ自分含めて5人分ならなんとかなるだろう…。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

宮本が車を出し、5人で航空祭に向かった。宮本の車が、ベンツのGクラス(1513万円~)と超高級車だったのには、一同驚きを隠せなかった。因みに宮本はハーレーのBREAKOUT (284万円~)も乗っている。凄まじい金持ちだ。俺なんてホンダのN-WGN(中古)とスーパーカブ(しかも12年乗っている)だぞ…?


宮本のベンツを駐車場に止めると、けたたましい音とともに隼と鹵獲塗装のハリケーンが通り過ぎた。どうやらオープニングフライトのようだ。ハリケーンが通り過ぎた時、それと同時にキツネを抱っこしたパイロットスーツの男がティーポッドを持って凄まじいスピードで走って行った気がしたが気のせいだろう。


駐車場の側で、1人の関西弁の青年が壁にボールを投げていた。会場に向かうためその前を通り過ぎた瞬間、伊地知が青年に声をかけた。


「おい、俺とキャッチボールするぞ!」

俺は思わず止めたが、伊地知は聞く耳も持たず彼とキャッチボールを始めてしまった。まあ…いっか。


「昼飯には戻ってこいよ?」


「うす!おいお前、ピッチングまだまだ甘いな。」

すっかり打ち解けていやがる…。


そうして4人で航空祭の会場に行くと、色んな機体がならんでいた。次は653空零戦の展示飛行らしい。零戦はうちの部隊の使用機の候補だった。とても興味がある。

15分もすると、飴色の零戦は急上昇で離陸していった。続いてナイフエッジからのループ。


「「うわっ…キレッキレ。」」

宮本も俺も口を揃えて言った。本当に一つ一つの機動が正確で美しい。まさしく戦闘機本来の動きだった。


30分後、零戦は降りてきた。パイロットと話そうと思ったが、基地司令らしき人に「おい、Noah!俺はあそこまで課目増やしていいとは言ってねえぞ!そもそもお前はな~~」とめっちゃ怒られていたのでやめた。だから展示飛行が周りに比べて長いわけだ。


次に、64戦隊隼3機による展示飛行だ。

まずはデルタテイクオフ。緻密な編隊離陸だ。その後、サンライズ、ローリングコンバットピッチ、ダブルナイフエッジと多種多様な課目が続いた。
そんな課目の中に、俺の心に大きく留まった課目があった。それは「ラインアブレストロール」だ。パイロット全員が気持ちを合わせて、実施する。その姿に、俺は心を掴まれた。俺もああやって、アクロバット飛行をしたい。そう心に思った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そうして俺は決意を固めて、部隊の皆と飯を食べた。とりあえずは皆へ提案だ。


「なあ、俺達アクロバット飛行やらないか?」


「あー、次の航空祭でですか?いいと思いますよ。」


「俺は野球しながら地上で見てるからね?」


「いや違う。第201飛行隊をアクロバット飛行部隊にするんだ。」


「「「「え?」」」」


「機材も、制度も全て整える。俺はさっきの隼の展示飛行に心を奪われた。特にラインアブレストロールだ。あそこまで連携が図れるのは素晴らしいことだ。だからアクロバット飛行部隊にしよう。」


皆が固まる中、急に声が掛かった。


「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか!んじゃあ機材は飛燕だな。コールサインはどうする?部隊旗はこんな感じでどうだ?」

インドカレー片手に、パイロットスーツを着ているテンションの異常に高い人。見たこともない顔だった。


「あの…失礼ですが誰でしょうか?」


「ああ、さっき隼で展示飛行してたの俺だぞ!鳥居って言う名前なんだが…。まああの結構ドタバタで仕上げたんだけどな。ガハハハハ!!」


「鳥居三佐、よろしくお願い致します。」


「…やべえ、アンタ二佐じゃねえか。大変失礼致しました…!それでもし良ければなんだが…、アクロバット飛行チームにするならアンタの部隊に入っていいか?俺ももう空戦には疲れたんだ。まあちゃんと戦ったことなんてほぼねえけどな!」


「構わないぞ。これでメンバーは6人になったな。アクロバット飛行をするには好都合だ。」


「では、アクロバット飛行部隊として頑張りましょう!」


「「「「「「おー!」」」」」」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「という感じだ。まあ鳥居はあの後訓練サボったりしたり、宮本がパワー系男子になったり、伊地知はVtuberにどハマりしたり…。色々あったな。メンバーも今とは大幅に違うんだけどな。」 


「んじゃあ、ソニックアローズの今のメンバーの連携を深めるために、飲みに行きましょうや!」


「お前昨日も飲んだろ…?まあいいか!よし一杯行くか!」

こうして皆は、肩を組みながら居酒屋「保盛太」に向かった。





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