翼は人を魅せられる。

bluesky

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本編

ポジション決定

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~着任2日目~


「秋本さん、おはようございます。」


「あ、尾島さんおはようございます!良い朝ですね。」


「はい。フライト日和ですよね。今日は他の皆さんとも是非話してください。」


「分かりました!」


尾島さん、良い人だ…。他の皆さんもこういう人なら安心してフライトできそう、と思っていた矢先大きな声が聞こえた。


「伊地知、フライト終わったらプロスピやりましょうや!」


「えー、俺今日草野球しようと思ってたんだけど。昨日プロスピやったし。」


「まあええやないですか~!やりましょやりましょ!」


なんか、これこそクセが強い人達って感じだ。まあとりあえず挨拶を…。


「あ、あの!初めましてー。」


「お、これは秋本さんや!初めまして、三番機の坂元です!タックネームはPixyなんで、よろしく~。ほら、伊地知も挨拶挨拶!」


「あ、六番機の伊地知です。タックネームは確かAmaryllisだっけ。まあいいや、よろしく。」

それだけ言うと2人とも、また話しながら格納庫へ向かっていった。うーん…2人とも変わった人だ…。接し方に悩む。

まあ話していくうちに慣れるだろう。


すると昨日聞いた声が耳元で聞こえた。


「おい、Tide!おっはよー。今日も一日元気にやるぞ!」


「あ、鳥居三佐、おはようございます!」


「おう。今日はTideの腕前も見せてもらうつもりだからな、楽しみにしてるぞー!」

うう…。そうなのだ、今日は他の皆さんの前でフライトをせねばならない。緊張する…。


「が、頑張ります…。」


「そういえばお前少し待ってろ。」

そう言うと、鳥居三佐はすぐに居なくなってしまった。かと思うと、誰かを連れて戻ってきた。


「ほい、宮本!自己紹介!」


「どうも、四番機兼副隊長の宮本と申します。タックネームはTankです。以後お見知りおきを。」


「あ、よろしくお願いします!」

とても律儀というか、真面目というか…。けど間違いなく言えることが一つだけ。それはめちゃくちゃイケボということだ。


「昨日こいつ挨拶しそびれたって落ち込んでたんだよー。まあ仲良くしてやってくれ!」


「断じて私は落ち込んでなんかいない…!けど挨拶ができて本当に良かったと思っています。」


「まあまあ分かったから。じゃあTide、また後でな。じゃあTank格納庫行くぞ!」

宮本三佐もまた少し変わっている。けど、悪い人じゃなさそうだ。鳥居三佐が飛行隊長なら、副隊長にはああいう真面目な人がぴったり、などと思ってしまった。



そうして私も格納庫に行くと、いきなり近寄ってきて声を掛けてきた人がいた。

すごく目を細めた、謎の男。今までで一番怪しい…。



「あ、あの…。初対面ながらすごく申し訳ないんだけど、眼鏡を探してくれないかい?」

どうも目が悪いらしい。


「あ、もしかして…これですね?」


「おお!これこれ、見える見える。どうもありがとう。挨拶が遅れたね。僕は五番機の船戸だ。階級は一尉だから貴方と同じ。タックネームはNoahだ。仲良くしよう。」


「あ、よろしくお願いしますー!」


「君は元気がいいな。ソニックアローズのファンからも人気が出そうだ。一緒に飛ぶのが楽しみだよ。」


「ありがとうございます!」


そう言うと、船戸さんは微笑んで事務所に入っていった。少し王子様風な人だ。ちょっとカッコいいかも…?
というかあんな繊細そうな人が、五番機のダイナミックな操縦をしているのが意外だ。
意外とああいう人の方が、向いてるのかなぁ…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


時は午後。鳥居三佐の声が事務所に響く。


「おいTide!今から飛んでもらうぞー!俺が一緒に上がる。よろしくな!Koboさん、下から見といてくれよー。」


「「任せとけ。」」


「じゃあ飛燕に向かうぞ!もうタキシングできる状態なはずだ。」


こうして私のソニックアローズ1回目のフライトは始まった。



「おい、Tide。いつも通りいけよ?」


「頑張ります…!」

操縦席に座った直後、無線でそう言われた。うーん…やっぱり緊張するんだよなぁ。


そうしてタキシングを終えて、ランウェイにラインアップした。


「1,ready」

「2,ready」


「Throttle90,flaps0,take off ready now!」

エンジン出力を90%まであげた。飛燕はやはり安定している。


そしてふわりと浮き上がった。


やっぱり、空っていいなぁ!


そう思える瞬間であった。


しかしその後は地獄であった。慣れない機動は神経を使う。


「Ok,じゃあ維持旋回行くぞ。Right turn now.」

ぐぬぬぬ…。安定しない…。


「Tide、もっと安定させろ!」

と二回も言われてしまった。



その後は背面編隊、4ポイントロール、編隊宙返りなど、やったこともないようなことの連続。


もちろん綺麗に出来たと自信を持って言えたのは一つもなく、自信を喪失しただけであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はあ…。」


「おい、Tide。元気出せ!初めてにしては悪くなかったぞ?だよな、Tank、Koboさん。」


「ああ、もっと上達できそうだ。宮本もこれなら大丈夫だって見てて言ってたぞ。」


鳥居三佐と植田二佐が精一杯励ましてくれている。本当に有難い。


「あ、ありがとうございます…!」


「それでだ、秋本。お前のポジションが決定した。」

どこなんだろうか。やっぱり三番?それとも意外な六番とか?


「教えてください!」


「四番機だ。もちろん副隊長職になるわけではなく別の誰かに引き継ぐが、お前の操縦具合だと四番がピッタリだ。」

四番機…。地獄のポジションと言われる場所である。自分に出来るだろうか。宙返りなど、綺麗に決められる気がしない…!


そうこうしているうちに、宮本三佐がやってきた。相変わらずのイケボで宮本三佐は言った。


「秋本さん、これからよろしくお願いします。四番機については、全て引き継いでみせます。一緒に頑張りましょう!」

頼れる先輩って感じがすごい…!少し安心できた。



彼女の四番機としての人生は今動き始めた。





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