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3章 リリスと魔族の王子様
108 メルヒの判断
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リリスはどんどん修復について詳しくなっていく。
実技も考え方もすっかり吸収して、仕事
任せても大丈夫になってきていた。
もう、一人で魔術書の修復を任せても安心できる気がする。
リリスに任せてみようとメルヒは決めた。
心配事と言えば、リリスの魔力の変化だろうか。
瞳の色は以前よりも明るくなり、薔薇色で宝石のような輝きの色をしている。
三つ子のカラスであるルビーよりも明るい色をしていた。
精霊と同等か、もしくはさらに強い力を持っているかもしれない。
瞳の色は魔力を反映させるものだから。
ここへ来たばかりの時は黒っぽい赤だったはずなのに。
魔を秘めた瞳はどんな世界と事象を映しているのだろうか。
ここの場所にいるだけで、あの瞳はどんどん変化しているように思う。
心境の変化で変わるものなのだろうか。
リリスの雰囲気も来た時とは違うものになっている。
その変化は好ましくもあり心配になるほどだ。
リリスが楽しいことをできるように、のびのびと穏やかに過ごせればいいと考えていたが、今後どうなってしまうのだろう。
メルヒはぎゅっと目を閉じた。
リリスがオプスキュリテ家の兄に見つかって寝込んだ時のことを思い浮かべる。
自分もステラと同じようにリリスの助けになれればよかったのに、何もかも終わってから事が起こったことを知った。
ステラが付きっきりでリリスの手を握りずっとそばにいた。
メルヒはその光景を眺めることしか出来なくて胸になにが引っかかるような思いでいた。
そして、目が覚めたリリスにステラは自分が王であることを打ち明けていた。
まさか伝えるなんて思わなくて、部屋の端でその光景を眺めて呆然としていた。
自分も何か言おうと思ったが、二人の雰囲気に何も言葉が浮かばなくて黙り込んでいた。
メルヒはリリスに何も言わなくてもいいのだろか。
ステラと同じようにすんなりと秘密を打ち明けることができるならいいのにと思う。
月影の王メルヒ・ソルシエール・ルーナは自分の役目に頭を抱えた。
メルヒの本来の仕事はただ修復師をやっているだけの魔術師ではない。
この国の裏側を担う王だ。
表に立つルーナ王国の王ステラ・ソルシエール・ルーナとは違う存在。
表の王らしい人目につく公務はステラが行い。
国守りの結界を司ったり、秘密裏に外敵を退けるのがメルヒ。
そんなメルヒは簡単に秘密をリリスに伝えることが出来ない。
リリスの隣にはミルキという魔族がいるから尚のことだ。
地底深くにある、かの国の住人は魔を扱うことに秀でている。
そして攻撃的であるとこの国に伝わっている。
人のように見える出で立ちでありながら、その身に抱える魔力の禍々しさで一目でミルキは魔族だと思った。
危険な存在だと思うが、しかしミルキという魔族はリリスに完全な忠誠を誓っているのが手に取るように分かった。
なぜ、そんなにもリリスを思い従っているのか不思議に思う。
メルヒにはリリスはか弱い少女にしか見えないから。
薔薇姫という役割にやはり何かあるのではないかとメルヒは考えている。
ミルキに何か変な動きがあれば、見張ることもできるから好都合だと思ってこの屋敷にいることを認めた。
認めたが、ここには国の重要な結界の一つがある。
そんな場所に魔族を入れてしまった。
これで良かったのだろうかと考える日もある。
幸いミルキは本当にリリスのこと以外、興味がないようで、この屋敷を探るようなことはしていないようだ。
メルヒの工房にも来ることは無い。
ミルキなりに気を使ってくれているのだと思う。
「そういえば、リリスはそのうち王城に行く予定だったはず…」
ステラとそう話していたのだから、絶対行くはずだ。
そうとなればこの屋敷の扉を使用するはずだ。
城に出入りするにはその扉が一番都合がいい。
その扉に続く道のことを浮かべて、やっぱり秘密を話さない方がおかしいことに気づき始めた。
話せばリリスならきっと誰にも話さないでいてくれるだろう。
そもそも、見ても理解出来ないかもしれない。
普通に影の王様であることを告げようか、何をしているかは抜きにして。
そして、メルヒは決断した。
やはり機会をみてリリスに自分が何者であるかを打ち明けようと決めた。
リリスは僕の大切な弟子なのだから、自分のことも知ってもらいたい。
それを告げればこの胸の引っ掛かりもおさまるだろうか。
不安なことも多いけれど、大切なものに危険が伴うことを誰も望まないだろう。
だから、きっと大丈夫だ。
「…信じてるよ、リリス」
誰もいない、メルヒしかいない工房の中で、手を組みながら静かにメルヒは呟いた。
実技も考え方もすっかり吸収して、仕事
任せても大丈夫になってきていた。
もう、一人で魔術書の修復を任せても安心できる気がする。
リリスに任せてみようとメルヒは決めた。
心配事と言えば、リリスの魔力の変化だろうか。
瞳の色は以前よりも明るくなり、薔薇色で宝石のような輝きの色をしている。
三つ子のカラスであるルビーよりも明るい色をしていた。
精霊と同等か、もしくはさらに強い力を持っているかもしれない。
瞳の色は魔力を反映させるものだから。
ここへ来たばかりの時は黒っぽい赤だったはずなのに。
魔を秘めた瞳はどんな世界と事象を映しているのだろうか。
ここの場所にいるだけで、あの瞳はどんどん変化しているように思う。
心境の変化で変わるものなのだろうか。
リリスの雰囲気も来た時とは違うものになっている。
その変化は好ましくもあり心配になるほどだ。
リリスが楽しいことをできるように、のびのびと穏やかに過ごせればいいと考えていたが、今後どうなってしまうのだろう。
メルヒはぎゅっと目を閉じた。
リリスがオプスキュリテ家の兄に見つかって寝込んだ時のことを思い浮かべる。
自分もステラと同じようにリリスの助けになれればよかったのに、何もかも終わってから事が起こったことを知った。
ステラが付きっきりでリリスの手を握りずっとそばにいた。
メルヒはその光景を眺めることしか出来なくて胸になにが引っかかるような思いでいた。
そして、目が覚めたリリスにステラは自分が王であることを打ち明けていた。
まさか伝えるなんて思わなくて、部屋の端でその光景を眺めて呆然としていた。
自分も何か言おうと思ったが、二人の雰囲気に何も言葉が浮かばなくて黙り込んでいた。
メルヒはリリスに何も言わなくてもいいのだろか。
ステラと同じようにすんなりと秘密を打ち明けることができるならいいのにと思う。
月影の王メルヒ・ソルシエール・ルーナは自分の役目に頭を抱えた。
メルヒの本来の仕事はただ修復師をやっているだけの魔術師ではない。
この国の裏側を担う王だ。
表に立つルーナ王国の王ステラ・ソルシエール・ルーナとは違う存在。
表の王らしい人目につく公務はステラが行い。
国守りの結界を司ったり、秘密裏に外敵を退けるのがメルヒ。
そんなメルヒは簡単に秘密をリリスに伝えることが出来ない。
リリスの隣にはミルキという魔族がいるから尚のことだ。
地底深くにある、かの国の住人は魔を扱うことに秀でている。
そして攻撃的であるとこの国に伝わっている。
人のように見える出で立ちでありながら、その身に抱える魔力の禍々しさで一目でミルキは魔族だと思った。
危険な存在だと思うが、しかしミルキという魔族はリリスに完全な忠誠を誓っているのが手に取るように分かった。
なぜ、そんなにもリリスを思い従っているのか不思議に思う。
メルヒにはリリスはか弱い少女にしか見えないから。
薔薇姫という役割にやはり何かあるのではないかとメルヒは考えている。
ミルキに何か変な動きがあれば、見張ることもできるから好都合だと思ってこの屋敷にいることを認めた。
認めたが、ここには国の重要な結界の一つがある。
そんな場所に魔族を入れてしまった。
これで良かったのだろうかと考える日もある。
幸いミルキは本当にリリスのこと以外、興味がないようで、この屋敷を探るようなことはしていないようだ。
メルヒの工房にも来ることは無い。
ミルキなりに気を使ってくれているのだと思う。
「そういえば、リリスはそのうち王城に行く予定だったはず…」
ステラとそう話していたのだから、絶対行くはずだ。
そうとなればこの屋敷の扉を使用するはずだ。
城に出入りするにはその扉が一番都合がいい。
その扉に続く道のことを浮かべて、やっぱり秘密を話さない方がおかしいことに気づき始めた。
話せばリリスならきっと誰にも話さないでいてくれるだろう。
そもそも、見ても理解出来ないかもしれない。
普通に影の王様であることを告げようか、何をしているかは抜きにして。
そして、メルヒは決断した。
やはり機会をみてリリスに自分が何者であるかを打ち明けようと決めた。
リリスは僕の大切な弟子なのだから、自分のことも知ってもらいたい。
それを告げればこの胸の引っ掛かりもおさまるだろうか。
不安なことも多いけれど、大切なものに危険が伴うことを誰も望まないだろう。
だから、きっと大丈夫だ。
「…信じてるよ、リリス」
誰もいない、メルヒしかいない工房の中で、手を組みながら静かにメルヒは呟いた。
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