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2章 リリスと闇の侯爵家
86 ダミアンの逃亡その一
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「動けないからって、逃がさないわよ。
術式を付与した道具はたくさんあるんだから!
追い落とせ!雷鳴!」
後ろから魔術を使う文言とともに光がダミアンを追いかけてくる。
金髪の少女は動けないことを受け入れて、魔術で攻撃することにしたようだ。
あたりが一瞬明るく照らされ、焦げ臭い匂いが空気に混ざる。
次の気配に目をやれば、稲妻がダミアンの通った道を跳ねて青白い火花が散った。
少しでも駆け抜ける速さが遅ければ感電していたことだろう。
痺れて肉を焦がされるなんてされたくはない。
こんなにも距離は離れているのに、命中させようとするとはとダミアンは微かに焦った。
稲妻は次々とダミアンの足元だけを狙っていた。
リリスを傷つけない配慮ができるほどの技術があるのかとダミアンは相手の力量を推察する。
早く相手の目視から外れなくてはいけない。
ダミアンは影で防御壁を造り、稲妻を交わす。
次々に放たれる、稲妻を避けながら全力で走った。
この状況なのに手伝わないとはあのダークエルフはどういうつもりだとダミアンの顔が苦くなる。
さすがにこの光で騒ぎに気づいてもいいだろうとダミアンは思った。
この角を曲がれば、視線から外れる。
もう攻撃は来ないだろう。
「それでは、ごきげんよう」
ダミアンは夜の宵闇に溶け混むように身を隠した。
「リリス!」
「にゃ!!!」
***
金髪の少女を撒いたダミアンは、リリスを隠しながら早足で宿に向かっていた。
先程までは、声にならない悲鳴をあげていたのに、今はとっても大人しい。
こうやって大人しい方がリリスらしいとダミアンは思った。
薔薇姫の塔で会っていたリリスは大人しくて人形のように美しかったから、そのままの姿でいて欲しい。
いつだってダミアンの言葉に頷いてくれる子のはずだった。
ダミアンを拒否したあの言葉はきっと間違いだと気づいてくれることだろう。
外に出て悪い子になってしまったのかもしれない。
あの金髪の少女が何かしたのだろうか?
あいつのせいで悪い影響を受けているに違いない。
また元の可愛らしいリリスに戻してあげるからね。
ダミアンは優しくリリスを抱きしめた。
震えるリリスの反応に、この腕の中にリリスがいることに喜びを感じる。
リリスを守ってあげられるのはこのダミアンだけだ。
リリスの赤い瞳にダミアンだけを映して欲しい。
ダミアンはリリスの赤い瞳が見たくなって、目隠しをしていた影を解いた。
邪魔者がいないのならば、心ゆくまでその瞳を眺めていたい。
こんなにも美しいリリスはダミアンの宝物だ。
「…!」
目隠しをはずされたのに気づき、リリスはそっと瞼を開けた。
不思議そうな表情をして何度が瞬きを繰り返す。
状況を確認したいのかキョロキョロと周囲を見渡してた。
あの少女の姿がいないと分かり、リリスは青白い顔になる。
そんなに怯えなくていいのにとダミアンはリリスに微笑みかける。
リリスは目線をあわせてはくれなかった。
何も考えずにダミアンだけを見つめてくれてればいいのにと思うが、これはこれで警戒心の強い小動物のようで可愛らしいのでいいかと思った。
「可愛いね、リリス。
騒がれたら困るから口のはまだ外せないけど、あとでたくさんリリスの声を聞かせてね」
リリスを落とさないように抱きしめダミアンは走った。
動きやすいように、なるべく人通りの少ない場所を通り抜ける。
人がいたところでリリスの着ているもののせいか、リリスが目立つこともない。
リリスを抱き上げて走りながら、ダミアンはこれからの事を考えた。
部屋に帰ったらまずは何をしようかと表情が緩む。
リリスが逃げないように、手枷と足枷をしなくてはいけない。
首輪でもいいけれど、目立つのはリリスが嫌がるかもしれない。
そうなると足枷だけして、丈が長めの赤いドレスで隠せばいいかなとダミアンは楽しくなってくる。
外に出たくなくなるような格好でいさせるのもいいかもれない。
露出の多い格好なんて見たことがないから、見てみたい。
その格好でダミアンの許しをこう姿は、さぞや甘美なものだろうとダミアンの頬が赤く染った。
手に抱えているリリスを見つめているとどんどん楽しみに思うことが湧いてくる。
やっとリリスを手に入れることが出来た。
誰にも渡さない。
自分だけの物にするんだ。
オプスキュリテ家にも絶対に渡さない。
術式を付与した道具はたくさんあるんだから!
追い落とせ!雷鳴!」
後ろから魔術を使う文言とともに光がダミアンを追いかけてくる。
金髪の少女は動けないことを受け入れて、魔術で攻撃することにしたようだ。
あたりが一瞬明るく照らされ、焦げ臭い匂いが空気に混ざる。
次の気配に目をやれば、稲妻がダミアンの通った道を跳ねて青白い火花が散った。
少しでも駆け抜ける速さが遅ければ感電していたことだろう。
痺れて肉を焦がされるなんてされたくはない。
こんなにも距離は離れているのに、命中させようとするとはとダミアンは微かに焦った。
稲妻は次々とダミアンの足元だけを狙っていた。
リリスを傷つけない配慮ができるほどの技術があるのかとダミアンは相手の力量を推察する。
早く相手の目視から外れなくてはいけない。
ダミアンは影で防御壁を造り、稲妻を交わす。
次々に放たれる、稲妻を避けながら全力で走った。
この状況なのに手伝わないとはあのダークエルフはどういうつもりだとダミアンの顔が苦くなる。
さすがにこの光で騒ぎに気づいてもいいだろうとダミアンは思った。
この角を曲がれば、視線から外れる。
もう攻撃は来ないだろう。
「それでは、ごきげんよう」
ダミアンは夜の宵闇に溶け混むように身を隠した。
「リリス!」
「にゃ!!!」
***
金髪の少女を撒いたダミアンは、リリスを隠しながら早足で宿に向かっていた。
先程までは、声にならない悲鳴をあげていたのに、今はとっても大人しい。
こうやって大人しい方がリリスらしいとダミアンは思った。
薔薇姫の塔で会っていたリリスは大人しくて人形のように美しかったから、そのままの姿でいて欲しい。
いつだってダミアンの言葉に頷いてくれる子のはずだった。
ダミアンを拒否したあの言葉はきっと間違いだと気づいてくれることだろう。
外に出て悪い子になってしまったのかもしれない。
あの金髪の少女が何かしたのだろうか?
あいつのせいで悪い影響を受けているに違いない。
また元の可愛らしいリリスに戻してあげるからね。
ダミアンは優しくリリスを抱きしめた。
震えるリリスの反応に、この腕の中にリリスがいることに喜びを感じる。
リリスを守ってあげられるのはこのダミアンだけだ。
リリスの赤い瞳にダミアンだけを映して欲しい。
ダミアンはリリスの赤い瞳が見たくなって、目隠しをしていた影を解いた。
邪魔者がいないのならば、心ゆくまでその瞳を眺めていたい。
こんなにも美しいリリスはダミアンの宝物だ。
「…!」
目隠しをはずされたのに気づき、リリスはそっと瞼を開けた。
不思議そうな表情をして何度が瞬きを繰り返す。
状況を確認したいのかキョロキョロと周囲を見渡してた。
あの少女の姿がいないと分かり、リリスは青白い顔になる。
そんなに怯えなくていいのにとダミアンはリリスに微笑みかける。
リリスは目線をあわせてはくれなかった。
何も考えずにダミアンだけを見つめてくれてればいいのにと思うが、これはこれで警戒心の強い小動物のようで可愛らしいのでいいかと思った。
「可愛いね、リリス。
騒がれたら困るから口のはまだ外せないけど、あとでたくさんリリスの声を聞かせてね」
リリスを落とさないように抱きしめダミアンは走った。
動きやすいように、なるべく人通りの少ない場所を通り抜ける。
人がいたところでリリスの着ているもののせいか、リリスが目立つこともない。
リリスを抱き上げて走りながら、ダミアンはこれからの事を考えた。
部屋に帰ったらまずは何をしようかと表情が緩む。
リリスが逃げないように、手枷と足枷をしなくてはいけない。
首輪でもいいけれど、目立つのはリリスが嫌がるかもしれない。
そうなると足枷だけして、丈が長めの赤いドレスで隠せばいいかなとダミアンは楽しくなってくる。
外に出たくなくなるような格好でいさせるのもいいかもれない。
露出の多い格好なんて見たことがないから、見てみたい。
その格好でダミアンの許しをこう姿は、さぞや甘美なものだろうとダミアンの頬が赤く染った。
手に抱えているリリスを見つめているとどんどん楽しみに思うことが湧いてくる。
やっとリリスを手に入れることが出来た。
誰にも渡さない。
自分だけの物にするんだ。
オプスキュリテ家にも絶対に渡さない。
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