82 / 111
2章 リリスと闇の侯爵家
82 迷子
しおりを挟む
「…どうしよう」
リリスは困っていた。
隣にいたはずのフルールの姿がない。
気づいたらはぐれてしまったようだ。
さっきまで、一緒に買い物をしていたはずなのにとリリスはフルールの姿を探す。
周りを見渡しても混雑した通りには、目立つ金髪を見つけることができなかった。
空を見あげれば青かったはずの空がピンクと紫色を混ぜたようないろをしていた。
空の色はとても綺麗だと思うけど、もう夕方ということになる。
そろそろ帰らないといけない時間に近づいてきている。
カバンに入れてあるメルヒのブローチを握りしめた。
このまま見つけられる自信ないし、ひとりで帰ってしまおうかとブローチを握りしめたまま考える。
こんなことになるのなら、迷子になる前にはぐれた時の集合場所を決めておけば良かったとリリスは後悔していた。
考えている間にも空は刻々と夜へ近づいていた。
「…ひとりで帰るのも手だけれど、悪いわよね。
フルールも探してくれてるかもしれないし…」
心細くなってリリスはひとり呟いた。
そうだ、街の人に金髪で翼の生えた猫をつれた少女を見なかったが尋ねてみよう。
ひとりで探すのも無理と判断したリリスは、歩く人に声をかけた。
まずはあの優しそうなおじいさん。
「すいません!」
けれどリリスが話しかけても、聞こえないのかおじいさんは何処かに歩いて行ってしまった。
声が小さかったかしらと首をかしげて、リリスは次の人に挑戦することにする。
あの親子に聞いてみよう。
「あの、お尋ねしたいのですが…」
「今日のご飯はお肉よ」
「わぁーい」
そのまま親子はリリスに気付かすに行ってしまった。
リリスは、ショックを受ける。
フルールがいた時はこんなことなかったのにと。
「私の声は、誰にも届かないのかしら…。
みんな夕方で忙しい?」
まるで空気みたいだわとリリスは悲しい気持ちになってしまったが、そこでリリスは気づいた。
この赤いマントはリリスの姿を隠すための魔術式を掛けていたことに。
しかもリリスが不安を訴えたのでフルールにより重ねてかけられていた。
「この赤いマントのせいで私の声は届かない?」
だからかとリリスは多少納得したが、リリスが分かる同伴者がいないと他者と会話も出来ないのかと頭を抱えた。
「…どうしよう、マント脱ぐ?」
この赤いマントのせいで、人に声が届かないし気づいてもらえないのならば、脱げば話を聞いて貰えるはずだ。
リリスはマントのリボンに手をかける。
そこで手は止まってしまった。
「…見つかるのは嫌」
リリスは現在探されている身だ。
こんなに人が多いのだから、顔と髪を晒すのは危険なことだと踏み切れない。
マントを脱いだ方がフルールを探しやすくなるけど、リリスはオプスキュリテ家から逃げたままでいたい。
リリスはどうすることも出来ず、諦めてマントを着たままフルールを探すことにした。
フルールなら目立ってるからきっとすぐに見つかるはずと思いながら、しばらくの間フォルセの街を歩くことになる。
空は紫と濃紺を混ぜたような美しい夜空へと変わっていた。
夜になったこともあり、リリスは心細くなる。
夜風が吹き、肌にさざ波を立てるがマントのおかげで寒くはなかった。
街路樹にある星の灯火を見て、リリスはメルヒと歩いた道を思い出す。
お守りのようにメルヒのブローチを握りしめた。
リリスは気をしっかり持ち、人混みのなかをキョロキョロと金髪を探す。
それらしい人は見つけることが出来ない。
リリスは街の地理にも詳しくないので、本当に困り果てていた。
ちゃんと手を繋いでいたはずなのに、どうして離してしまったのだろう。
そこに急に寒気が走った。
背後から視線を感じる。
振り返ることも恐ろしくてリリスは立ち止まった。
その瞬間、強い風に吹かれた。
「…きゃ」
目に風があたり強く瞳を閉じた。
リリスのフードが風の力で持ってかれてしまう。
長い黒髪がフードのからこぼれ落ち、風に流れる。
突風が終わる頃には、リリスの顔は外界に晒されていた。
「あっ…」
リリスは慌ててフードを持ち上げかぶり直した。
見られてないし気づかれてないわよねと不安になる。
このマントの力ならきっと大丈夫と思いながらも落ち着くために移動することにした。
先程感じた視線を避けるように人混みを抜ける。
リリスの足は人気のない路地裏へと進んだ。
その足どりを追う人物がいるとは思わずに。
リリスは困っていた。
隣にいたはずのフルールの姿がない。
気づいたらはぐれてしまったようだ。
さっきまで、一緒に買い物をしていたはずなのにとリリスはフルールの姿を探す。
周りを見渡しても混雑した通りには、目立つ金髪を見つけることができなかった。
空を見あげれば青かったはずの空がピンクと紫色を混ぜたようないろをしていた。
空の色はとても綺麗だと思うけど、もう夕方ということになる。
そろそろ帰らないといけない時間に近づいてきている。
カバンに入れてあるメルヒのブローチを握りしめた。
このまま見つけられる自信ないし、ひとりで帰ってしまおうかとブローチを握りしめたまま考える。
こんなことになるのなら、迷子になる前にはぐれた時の集合場所を決めておけば良かったとリリスは後悔していた。
考えている間にも空は刻々と夜へ近づいていた。
「…ひとりで帰るのも手だけれど、悪いわよね。
フルールも探してくれてるかもしれないし…」
心細くなってリリスはひとり呟いた。
そうだ、街の人に金髪で翼の生えた猫をつれた少女を見なかったが尋ねてみよう。
ひとりで探すのも無理と判断したリリスは、歩く人に声をかけた。
まずはあの優しそうなおじいさん。
「すいません!」
けれどリリスが話しかけても、聞こえないのかおじいさんは何処かに歩いて行ってしまった。
声が小さかったかしらと首をかしげて、リリスは次の人に挑戦することにする。
あの親子に聞いてみよう。
「あの、お尋ねしたいのですが…」
「今日のご飯はお肉よ」
「わぁーい」
そのまま親子はリリスに気付かすに行ってしまった。
リリスは、ショックを受ける。
フルールがいた時はこんなことなかったのにと。
「私の声は、誰にも届かないのかしら…。
みんな夕方で忙しい?」
まるで空気みたいだわとリリスは悲しい気持ちになってしまったが、そこでリリスは気づいた。
この赤いマントはリリスの姿を隠すための魔術式を掛けていたことに。
しかもリリスが不安を訴えたのでフルールにより重ねてかけられていた。
「この赤いマントのせいで私の声は届かない?」
だからかとリリスは多少納得したが、リリスが分かる同伴者がいないと他者と会話も出来ないのかと頭を抱えた。
「…どうしよう、マント脱ぐ?」
この赤いマントのせいで、人に声が届かないし気づいてもらえないのならば、脱げば話を聞いて貰えるはずだ。
リリスはマントのリボンに手をかける。
そこで手は止まってしまった。
「…見つかるのは嫌」
リリスは現在探されている身だ。
こんなに人が多いのだから、顔と髪を晒すのは危険なことだと踏み切れない。
マントを脱いだ方がフルールを探しやすくなるけど、リリスはオプスキュリテ家から逃げたままでいたい。
リリスはどうすることも出来ず、諦めてマントを着たままフルールを探すことにした。
フルールなら目立ってるからきっとすぐに見つかるはずと思いながら、しばらくの間フォルセの街を歩くことになる。
空は紫と濃紺を混ぜたような美しい夜空へと変わっていた。
夜になったこともあり、リリスは心細くなる。
夜風が吹き、肌にさざ波を立てるがマントのおかげで寒くはなかった。
街路樹にある星の灯火を見て、リリスはメルヒと歩いた道を思い出す。
お守りのようにメルヒのブローチを握りしめた。
リリスは気をしっかり持ち、人混みのなかをキョロキョロと金髪を探す。
それらしい人は見つけることが出来ない。
リリスは街の地理にも詳しくないので、本当に困り果てていた。
ちゃんと手を繋いでいたはずなのに、どうして離してしまったのだろう。
そこに急に寒気が走った。
背後から視線を感じる。
振り返ることも恐ろしくてリリスは立ち止まった。
その瞬間、強い風に吹かれた。
「…きゃ」
目に風があたり強く瞳を閉じた。
リリスのフードが風の力で持ってかれてしまう。
長い黒髪がフードのからこぼれ落ち、風に流れる。
突風が終わる頃には、リリスの顔は外界に晒されていた。
「あっ…」
リリスは慌ててフードを持ち上げかぶり直した。
見られてないし気づかれてないわよねと不安になる。
このマントの力ならきっと大丈夫と思いながらも落ち着くために移動することにした。
先程感じた視線を避けるように人混みを抜ける。
リリスの足は人気のない路地裏へと進んだ。
その足どりを追う人物がいるとは思わずに。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説


【完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!
なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」
信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。
私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。
「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」
「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」
「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」
妹と両親が、好き勝手に私を責める。
昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。
まるで、妹の召使のような半生だった。
ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。
彼を愛して、支え続けてきたのに……
「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」
夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。
もう、いいです。
「それなら、私が出て行きます」
……
「「「……え?」」」
予想をしていなかったのか、皆が固まっている。
でも、もう私の考えは変わらない。
撤回はしない、決意は固めた。
私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。
だから皆さん、もう関わらないでくださいね。
◇◇◇◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです。
7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない
結田龍
恋愛
「君との婚約を破棄する!」と六人目の婚約者に言われた瞬間、クリスティーナは婚約破棄の成就に思わず笑みが零れそうになった。
ヴィクトール帝国の皇女クリスティーナは、皇太子派の大きな秘密である自身の記憶喪失を隠すために、これまで国外の王族と婚約してきたが、六回婚約して六回婚約破棄をしてきた。
悪女の評判が立っていたが、戦空艇団の第三師団師団長の肩書のある彼女は生涯結婚する気はない。
それなのに兄であり皇太子のレオンハルトによって、七回目の婚約を帝国の公爵令息と結ばされてしまう。
公爵令息は世界で初めて戦空艇を開発した天才機械士シキ・ザートツェントル。けれど彼は腹黒で厄介で、さらには第三師団の副官に着任してきた。
結婚する気がないクリスティーナは七回目の婚約破棄を目指すのだが、なぜか甘い態度で接してくる上、どうやら過去の記憶にも関わっているようで……。
毎日更新、ハッピーエンドです。完結まで執筆済み。
恋愛小説大賞にエントリーしました。

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。
Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。
それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。
そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。
しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。
命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

忌み子にされた令嬢と精霊の愛し子
水空 葵
恋愛
公爵令嬢のシルフィーナはとあるパーティーで、「忌み子」と言われていることを理由に婚約破棄されてしまった。さらに冤罪までかけられ、窮地に陥るシルフィーナ。
そんな彼女は、王太子に助け出されることになった。
王太子に愛されるようになり幸せな日々を送る。
けれども、シルフィーナの力が明らかになった頃、元婚約者が「復縁してくれ」と迫ってきて……。
「そんなの絶対にお断りです!」
※他サイト様でも公開中です。

二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる