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2章 リリスと闇の侯爵家
79 フォルセの街
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街へ出かける準備をしている間に、フルールがリリスの赤いマントに重ねがけで存在感を薄くする魔法を施してくれた。
「はい、マントよ」
「ありがとう、フルール」
これを着れば前よりも印象が薄く姿が目立たなくなるらしい。
赤いワンピースの上からさらに赤いマントを羽織る。
カラス達が羽織るのを玄関先で手伝ってくれた。
「さぁ、リリス。
準備はできたし、お出かけしましょう!」
「にゃー」
頭の上にココを乗せてフルールとリリスは屋敷をでた。
玄関扉のところにはメルヒとカラス達が見送ってくれた。
「夜ご飯には帰るんだよ。
ステラ、あんまりリリスを困らせないようにねぇ」
「「「行ってらっしゃいませ」」」
振り返って手を振るとメルヒも手を振り返してくれた。
こういう小さなことが嬉しくなる。
そうだわ、せっかく街に行くのだからみんなに日頃の感謝をこめてプレゼントを買いたいとリリスは思うのだった。
「リリス」
名前を呼ばれてフルールの方へ顔を向ける。
「何?フルール?」
「今、何考えてたの?
私とのデートなんだから私だけ見てて欲しいわ」
フルールにパチリとウインクをされた。
いちいちポーズが可愛らしい。
「えっと、せっかく街にいくのでお世話になってるメルヒやカラス達や会ったことないけど妖精さんにプレゼントしたいなって思ってたの」
「あら、いいじゃない。
きっとみんな喜んでくれると思うわ。
そういうお店を見て周りまりましょう」
「何がいいか悩んでしまうわ」
「リリスが選んだものなら、みんな喜んでくれるわよ。
感謝の想いが乗せられた物だもの」
「そうだと嬉しい」
目を合わせて互いに微笑み合う。
こうやって外でフルールと遊べる日が来るなんて奇跡のようだ。
何気ない一瞬がリリスにとって宝物になりそうだった。
「もうすぐゲートよ。
フードかぶらなくてはいけないわね」
前方を見るとフルールの言葉通りもうすぐゲートだった。
リリスは背中のフードを持ち上げ深くかぶる。
どうか誰にもリリスに気づかないでと願いながら。
作った本人だからか、フルールにはかぶったところであんまり変わらないらしい。
「視界が悪るそうよね。
手を繋ぎましょう」
フルールがリリスに手を差し伸べてくれる。
リリスはフルールに手を重ねた。
暖かな温度が伝わってきて、安心する。
メルヒと違って柔らかな感触がした。
メルヒの時は、もっとこう大きくて男性の手だった。
フルールは出会った時のまま変わることなく可愛らしい。
気づくとゲートはすぐ目の前まで来ていた。
フルールに手を引かれて身構える暇もなくゲートを潜る。
潜る瞬間の感覚が怖くて目を閉じた。
風が通り抜けるような感覚が終わるとそっと目を開けた。
そこはもうフォルセの街だった。
無事に通れたのよねとほっと胸を撫で下ろす。
暗く細い道に出たらしく、赤いレンガの壁が囲うように高くそびえ立っていて、上を見あげれば明るく青い空が切り取られたかのように広がっていた。
出てきたのがお昼だったから、空は明るい。
穏やかな風に乗って青い空を白い雲がゆっくり流れていく。
暗がりと空のコントラストが美しく思えた。
以前来た時とは別の場所に来たみたいだ。
見知った景色はどこかしらと視界を動かすと、ふわふわの金髪が目の前にあった。
「フォルセについたわね。
行きましょう、リリス」
先程繋いだ手は解かれていることはなく、そのままで歩き出した。
手を引かれてリリスはフルールについて行く。
「素敵なお店に案内するわ!」
「にゃ!」
フルールとココが力強く声を上げた。
今日はたくさん歩きそうだなとリリスは不安に思ったが、それ以上にフルールとのお出かけにワクワクした。
***
「ここが飴屋さんよ。
可愛い形の飴が売ってるの!」
フルールの声にそちらを向けば、赤とピンクに彩られた可愛らしいお店が見える。
ショーウィンドウには飴細工でできたウサギとクマが飾られている。
「本当だわ。
動物の形の飴なのね。
棒が持ち手になっていて食べやすそうね。
こっちはお花の形だわ。
一輪の花を持ってるようでオシャレね。
どれも、かわいいから食べるのがもったいない気もするけれど…」
「おいしくてかわいいって、最強だと思うわ!
買って食べましょう」
フルールは店に入りリリスに飴を買ってくれた。
リリスは薔薇の花の飴で、フルールはマーガレットの飴だ。
本物の花のようで不思議な気持ちになる。
食べるのもったいないな、部屋に飾りたい。
「ねぇ、リリス。
妖精さんにプレゼントするなら、この飴が良いと思うわ」
フルールは商品棚の前に立ち止まると、小瓶に入った星屑飴と呼ばれる商品を花で示した。
パステルカラーの小さな星がカラフルに瓶詰められた可愛らしい飴だ。
「小さいお星様の飴なのね。
星屑飴?」
「私がよくあげてる物と似てるからきっと喜ぶと思うわ。
星のモチーフは妖精達好きだもの」
「フルールは妖精さんとも友達なのね。
私は会っても貰えないから、羨ましいわ」
フルールに勧められる通りにリリスは星屑飴を手に取り購入した。
お世話になってる、妖精さん達が喜んでくれると嬉しい。
良いものが買えたと思う。
包んでくれた紙袋は店の外観の通りに可愛いもので、また嬉しくなった。
お店を出ると今度は別の店に向かった。
「こっちは、絵の具屋さんね。
メルヒが言ってたところじゃない?
ガラス瓶に鉱石を砕いた粉がつめられていて綺麗ね」
買う予定はなかったが、見てみたかったお店だ。
お店の中は膨大な量のガラス瓶が並べられている。
硝子と鉱石が太陽の光に反射して、美しさがより際立っていた。
溜息が出るほど素敵な場所だった。
「…素敵なお店ね」
「リリスが楽しそうで嬉しいわ」
見蕩れるリリスに合わせて、急かすことなくゆっくりと見せてくれた。
「こっちは洋服屋さんよ!
リリスのお洋服見ましょうよ。
メルヒから給金出てるんでしょう?」
「そうね、新しい服買おうかしら。
同じものばかり着ていたわ」
「それは良くないわね!
私がリリスに似合う服選んであげる。
ココにも新しい飾り買ってあげるわね」
「にゃ、にゃにゃおーん」
「今度は宝石がついたのがいいって?」
「にゃ!」
ココはお話が分かる猫でフルールとはお話しているみたいだ。
フルールと共にフォルセの街を歩く。
空はまだ明るくて、たくさん遊べそうで気分も明るくなる。
「はい、マントよ」
「ありがとう、フルール」
これを着れば前よりも印象が薄く姿が目立たなくなるらしい。
赤いワンピースの上からさらに赤いマントを羽織る。
カラス達が羽織るのを玄関先で手伝ってくれた。
「さぁ、リリス。
準備はできたし、お出かけしましょう!」
「にゃー」
頭の上にココを乗せてフルールとリリスは屋敷をでた。
玄関扉のところにはメルヒとカラス達が見送ってくれた。
「夜ご飯には帰るんだよ。
ステラ、あんまりリリスを困らせないようにねぇ」
「「「行ってらっしゃいませ」」」
振り返って手を振るとメルヒも手を振り返してくれた。
こういう小さなことが嬉しくなる。
そうだわ、せっかく街に行くのだからみんなに日頃の感謝をこめてプレゼントを買いたいとリリスは思うのだった。
「リリス」
名前を呼ばれてフルールの方へ顔を向ける。
「何?フルール?」
「今、何考えてたの?
私とのデートなんだから私だけ見てて欲しいわ」
フルールにパチリとウインクをされた。
いちいちポーズが可愛らしい。
「えっと、せっかく街にいくのでお世話になってるメルヒやカラス達や会ったことないけど妖精さんにプレゼントしたいなって思ってたの」
「あら、いいじゃない。
きっとみんな喜んでくれると思うわ。
そういうお店を見て周りまりましょう」
「何がいいか悩んでしまうわ」
「リリスが選んだものなら、みんな喜んでくれるわよ。
感謝の想いが乗せられた物だもの」
「そうだと嬉しい」
目を合わせて互いに微笑み合う。
こうやって外でフルールと遊べる日が来るなんて奇跡のようだ。
何気ない一瞬がリリスにとって宝物になりそうだった。
「もうすぐゲートよ。
フードかぶらなくてはいけないわね」
前方を見るとフルールの言葉通りもうすぐゲートだった。
リリスは背中のフードを持ち上げ深くかぶる。
どうか誰にもリリスに気づかないでと願いながら。
作った本人だからか、フルールにはかぶったところであんまり変わらないらしい。
「視界が悪るそうよね。
手を繋ぎましょう」
フルールがリリスに手を差し伸べてくれる。
リリスはフルールに手を重ねた。
暖かな温度が伝わってきて、安心する。
メルヒと違って柔らかな感触がした。
メルヒの時は、もっとこう大きくて男性の手だった。
フルールは出会った時のまま変わることなく可愛らしい。
気づくとゲートはすぐ目の前まで来ていた。
フルールに手を引かれて身構える暇もなくゲートを潜る。
潜る瞬間の感覚が怖くて目を閉じた。
風が通り抜けるような感覚が終わるとそっと目を開けた。
そこはもうフォルセの街だった。
無事に通れたのよねとほっと胸を撫で下ろす。
暗く細い道に出たらしく、赤いレンガの壁が囲うように高くそびえ立っていて、上を見あげれば明るく青い空が切り取られたかのように広がっていた。
出てきたのがお昼だったから、空は明るい。
穏やかな風に乗って青い空を白い雲がゆっくり流れていく。
暗がりと空のコントラストが美しく思えた。
以前来た時とは別の場所に来たみたいだ。
見知った景色はどこかしらと視界を動かすと、ふわふわの金髪が目の前にあった。
「フォルセについたわね。
行きましょう、リリス」
先程繋いだ手は解かれていることはなく、そのままで歩き出した。
手を引かれてリリスはフルールについて行く。
「素敵なお店に案内するわ!」
「にゃ!」
フルールとココが力強く声を上げた。
今日はたくさん歩きそうだなとリリスは不安に思ったが、それ以上にフルールとのお出かけにワクワクした。
***
「ここが飴屋さんよ。
可愛い形の飴が売ってるの!」
フルールの声にそちらを向けば、赤とピンクに彩られた可愛らしいお店が見える。
ショーウィンドウには飴細工でできたウサギとクマが飾られている。
「本当だわ。
動物の形の飴なのね。
棒が持ち手になっていて食べやすそうね。
こっちはお花の形だわ。
一輪の花を持ってるようでオシャレね。
どれも、かわいいから食べるのがもったいない気もするけれど…」
「おいしくてかわいいって、最強だと思うわ!
買って食べましょう」
フルールは店に入りリリスに飴を買ってくれた。
リリスは薔薇の花の飴で、フルールはマーガレットの飴だ。
本物の花のようで不思議な気持ちになる。
食べるのもったいないな、部屋に飾りたい。
「ねぇ、リリス。
妖精さんにプレゼントするなら、この飴が良いと思うわ」
フルールは商品棚の前に立ち止まると、小瓶に入った星屑飴と呼ばれる商品を花で示した。
パステルカラーの小さな星がカラフルに瓶詰められた可愛らしい飴だ。
「小さいお星様の飴なのね。
星屑飴?」
「私がよくあげてる物と似てるからきっと喜ぶと思うわ。
星のモチーフは妖精達好きだもの」
「フルールは妖精さんとも友達なのね。
私は会っても貰えないから、羨ましいわ」
フルールに勧められる通りにリリスは星屑飴を手に取り購入した。
お世話になってる、妖精さん達が喜んでくれると嬉しい。
良いものが買えたと思う。
包んでくれた紙袋は店の外観の通りに可愛いもので、また嬉しくなった。
お店を出ると今度は別の店に向かった。
「こっちは、絵の具屋さんね。
メルヒが言ってたところじゃない?
ガラス瓶に鉱石を砕いた粉がつめられていて綺麗ね」
買う予定はなかったが、見てみたかったお店だ。
お店の中は膨大な量のガラス瓶が並べられている。
硝子と鉱石が太陽の光に反射して、美しさがより際立っていた。
溜息が出るほど素敵な場所だった。
「…素敵なお店ね」
「リリスが楽しそうで嬉しいわ」
見蕩れるリリスに合わせて、急かすことなくゆっくりと見せてくれた。
「こっちは洋服屋さんよ!
リリスのお洋服見ましょうよ。
メルヒから給金出てるんでしょう?」
「そうね、新しい服買おうかしら。
同じものばかり着ていたわ」
「それは良くないわね!
私がリリスに似合う服選んであげる。
ココにも新しい飾り買ってあげるわね」
「にゃ、にゃにゃおーん」
「今度は宝石がついたのがいいって?」
「にゃ!」
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