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2章 リリスと闇の侯爵家
78 出かける予感
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「こうしてると落ち着くわ。
リリスが大丈夫でよかった」
背中にピッタリくっついたフルールが安堵のため息をつく。
メルヒと口喧嘩してたはずなのに、静かになってしまった。
「心配してくれて、ありがとう」
フルールがいてくれるのがリリスには心強かった。
いつもどこからともなく現れて、リリスに楽しいことを話してくれる。
困ってる時に力になってくれるのもフルールだ。
私の大切な友達、親友。
男の子だって分かっても、リリスにとってはかわいくて大事な人。
「ステラ…あんまりくっつくんじゃない」
「いいじゃない…
メルヒは少し黙ってて!」
きいっとメルヒを睨みつける。
そんな姿も小動物のようでリリスはかわいらしく思ってしまう。
フルールの頭を優しく撫でた。
嬉しそうにフルールは目を細める。
「…しかたないな」
困ったようにメルヒはため息をついた。
「そうだ、リリス。
気分転換に私と一緒にお出かけしましょうよ。
ずっとメルヒと一緒にここにこもってたでしょう?」
「にゃにゃ!」
いい考えだというようにココも鳴き声で応じている。
フルールの肩の上までよじ登ってきた。
フルールはリリスの両手を握り、目をまっすぐ見つめてくる。
「リリスをあの家から連れ出したら、いろんなところに行って遊びたいなって思ってたの。
この間は出来なかったけど…。
今回はリリスとデートしたいわ。
メルヒとだけ行くなんて狡いもの。
だから、今からお出かけしましょう」
「メルヒとは修復道具を揃えに行っただけよ…」
外へ出かけようと誘われて、リリスの瞳は不安に揺れた。
フルールと出かけたいとは思うが、森でグレイが言っていたことが引っかかる。
『たまたま歩いていた街で、黒い髪に赤い瞳を持つ令嬢が誘拐されたと騒ぎになっていた。
報奨金までついていたぞ』
オプスキュリテ家は本格的にリリスのことを探している。
リリスのことをあの薔薇姫の塔に閉じ込めて、世間に晒そうとしなかったはずなのに誘拐されたと大々的にして探しているのだ。
そんなところに不用意に出て行ってしまっては、家に連れ戻されるのではないだろうか。
「そういえば最近、出掛けてないよねぇ。
行ってきたらいいんじゃない?
フォルセの街で前に話してた絵の具屋さんとか見てきたら楽しいと思うよ」
「あら、リリス行きたいところがあるのね。
一緒に行きましょう!」
メルヒまでリリスに出かけることを勧めてきている。
でも、リリスは怖い。
一瞬の好奇心よりも連れ戻される方が怖いのだ。
自分の体を腕で抱きしめる。
「行きたいけど…。
きっと探されてるから行けないわ。
グレイが教えてくれたの。
私には報奨金がついてるって、騒ぎになってるって」
リリスの言葉にフルールとメルヒが顔を見合わせる。
「狼の魔族の言うことを信じるのかい?
リリスを怖がらせて連れ去ろうとしただけだと思うよ…。
君の家…フルールから事情と共に聞いたけどオプスキュリテ家からはここは遠い場所にあるし、遊びに行く場所だって遠く離れた地だ。
だから、安心して遊んできて大丈夫なんだよ」
「そうよ、リリス。
狼はリリスを連れて帰りたくて、怖がらせてるだけよ。
確かにリリスのことを探しているだろうけど、フォルセの街までは伸びてないわ!
私ならリリスをちゃんと守れる!」
「私の家がどこか、メルヒは知っていたのですね…」
「当然だよ。
何も知らないのでは、リリスのこと守りようがないじゃないか…。
せっかく僕の弟子になってくれたのに、手放すなんて嫌だよ」
フルールと兄弟だからリリスのことを話していると思ったが、あまり触れられなかったので驚いてしまう。
そして、優しい瞳で弟子と呼んでくれた。
『僕の弟子を手放すなんて嫌』
メルヒの言葉がリリスの中で何度も再生される。
不安だったはずなのに、こんなこと言われると違う感情が頭の中を独占する。
口角が少し緩んでしまったかもしれない。
「オプスキュリテ家で閉じ込められて過ごした日々を忘れるくらいに、この場所ではリリスに幸せに暮らして欲しいんだ。
これは僕もステラも願ってることだよ」
「そうよ、リリス。
私はリリスに笑顔でいて欲しいの、ずっとリリスと出会ったときから思ってることよ。
だから、そんな不安な顔しなくていいのよ」
リリスがフルールの頭を撫でていたはずなのに、今度はフルールがリリスの頭を撫でる。
優しい手つきに不安な気持ちが溶けるような気がした。
二人がいるなら、大丈夫かもしれないと思いはじめる。
「あのマントの術式があるから大丈夫だと思うよ。
この間も大丈夫だったでしょう?」
「…そうですね。
あの時は何事もなく幸せな時間を過ごせました」
メルヒと歩いたフォルセの街を思い浮かべる。
見たことない景色に、人々、食べ物。
全部素敵なもので溢れていた。
あのマントを深くかぶればまた楽しめるだろうか。
フードは絶対に取らないようにしよう。
「まだ不安なら、あのマントにさらに細工をしようか。
より強く気配を消せる術式を付与すればいいよ」
「それなら安心できそうです…」
前よりも強いものなら見つからないわよね。
リリスは納得して頷いた。
やっぱり、フルールと一緒に外で遊んでみたい。
「ステラ、リリスと出掛けたいならやってあげてねぇ」
「もちろんよ!
それで、リリスとデートできるなら」
笑顔でフルールは答える。
「ふふ、リリスとデートできそうで嬉しいわ」
本当に嬉しそうにフルールはリリスの前で花が咲くようやな笑顔になった。
よほど嬉しいのか、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
ココがバランスを取るのが難しそうに、必死でしがみついている。
そのうち落ちるかもしれない。
「カラス達、ステラにリリスの赤いマント渡しておいてくれるかな」
「「「はい、主様」」」
隅っこにいたカラス達もニコニコとこちらの様子を見ていた。
にまにましてるが正しいような表情をしている気もする。
リリスはフルールと一緒にフォルセの街へ出かけることになった。
不安な気持ちはあるけど、リリスもフルールと出かけたかったから、嬉しい。
リリスが大丈夫でよかった」
背中にピッタリくっついたフルールが安堵のため息をつく。
メルヒと口喧嘩してたはずなのに、静かになってしまった。
「心配してくれて、ありがとう」
フルールがいてくれるのがリリスには心強かった。
いつもどこからともなく現れて、リリスに楽しいことを話してくれる。
困ってる時に力になってくれるのもフルールだ。
私の大切な友達、親友。
男の子だって分かっても、リリスにとってはかわいくて大事な人。
「ステラ…あんまりくっつくんじゃない」
「いいじゃない…
メルヒは少し黙ってて!」
きいっとメルヒを睨みつける。
そんな姿も小動物のようでリリスはかわいらしく思ってしまう。
フルールの頭を優しく撫でた。
嬉しそうにフルールは目を細める。
「…しかたないな」
困ったようにメルヒはため息をついた。
「そうだ、リリス。
気分転換に私と一緒にお出かけしましょうよ。
ずっとメルヒと一緒にここにこもってたでしょう?」
「にゃにゃ!」
いい考えだというようにココも鳴き声で応じている。
フルールの肩の上までよじ登ってきた。
フルールはリリスの両手を握り、目をまっすぐ見つめてくる。
「リリスをあの家から連れ出したら、いろんなところに行って遊びたいなって思ってたの。
この間は出来なかったけど…。
今回はリリスとデートしたいわ。
メルヒとだけ行くなんて狡いもの。
だから、今からお出かけしましょう」
「メルヒとは修復道具を揃えに行っただけよ…」
外へ出かけようと誘われて、リリスの瞳は不安に揺れた。
フルールと出かけたいとは思うが、森でグレイが言っていたことが引っかかる。
『たまたま歩いていた街で、黒い髪に赤い瞳を持つ令嬢が誘拐されたと騒ぎになっていた。
報奨金までついていたぞ』
オプスキュリテ家は本格的にリリスのことを探している。
リリスのことをあの薔薇姫の塔に閉じ込めて、世間に晒そうとしなかったはずなのに誘拐されたと大々的にして探しているのだ。
そんなところに不用意に出て行ってしまっては、家に連れ戻されるのではないだろうか。
「そういえば最近、出掛けてないよねぇ。
行ってきたらいいんじゃない?
フォルセの街で前に話してた絵の具屋さんとか見てきたら楽しいと思うよ」
「あら、リリス行きたいところがあるのね。
一緒に行きましょう!」
メルヒまでリリスに出かけることを勧めてきている。
でも、リリスは怖い。
一瞬の好奇心よりも連れ戻される方が怖いのだ。
自分の体を腕で抱きしめる。
「行きたいけど…。
きっと探されてるから行けないわ。
グレイが教えてくれたの。
私には報奨金がついてるって、騒ぎになってるって」
リリスの言葉にフルールとメルヒが顔を見合わせる。
「狼の魔族の言うことを信じるのかい?
リリスを怖がらせて連れ去ろうとしただけだと思うよ…。
君の家…フルールから事情と共に聞いたけどオプスキュリテ家からはここは遠い場所にあるし、遊びに行く場所だって遠く離れた地だ。
だから、安心して遊んできて大丈夫なんだよ」
「そうよ、リリス。
狼はリリスを連れて帰りたくて、怖がらせてるだけよ。
確かにリリスのことを探しているだろうけど、フォルセの街までは伸びてないわ!
私ならリリスをちゃんと守れる!」
「私の家がどこか、メルヒは知っていたのですね…」
「当然だよ。
何も知らないのでは、リリスのこと守りようがないじゃないか…。
せっかく僕の弟子になってくれたのに、手放すなんて嫌だよ」
フルールと兄弟だからリリスのことを話していると思ったが、あまり触れられなかったので驚いてしまう。
そして、優しい瞳で弟子と呼んでくれた。
『僕の弟子を手放すなんて嫌』
メルヒの言葉がリリスの中で何度も再生される。
不安だったはずなのに、こんなこと言われると違う感情が頭の中を独占する。
口角が少し緩んでしまったかもしれない。
「オプスキュリテ家で閉じ込められて過ごした日々を忘れるくらいに、この場所ではリリスに幸せに暮らして欲しいんだ。
これは僕もステラも願ってることだよ」
「そうよ、リリス。
私はリリスに笑顔でいて欲しいの、ずっとリリスと出会ったときから思ってることよ。
だから、そんな不安な顔しなくていいのよ」
リリスがフルールの頭を撫でていたはずなのに、今度はフルールがリリスの頭を撫でる。
優しい手つきに不安な気持ちが溶けるような気がした。
二人がいるなら、大丈夫かもしれないと思いはじめる。
「あのマントの術式があるから大丈夫だと思うよ。
この間も大丈夫だったでしょう?」
「…そうですね。
あの時は何事もなく幸せな時間を過ごせました」
メルヒと歩いたフォルセの街を思い浮かべる。
見たことない景色に、人々、食べ物。
全部素敵なもので溢れていた。
あのマントを深くかぶればまた楽しめるだろうか。
フードは絶対に取らないようにしよう。
「まだ不安なら、あのマントにさらに細工をしようか。
より強く気配を消せる術式を付与すればいいよ」
「それなら安心できそうです…」
前よりも強いものなら見つからないわよね。
リリスは納得して頷いた。
やっぱり、フルールと一緒に外で遊んでみたい。
「ステラ、リリスと出掛けたいならやってあげてねぇ」
「もちろんよ!
それで、リリスとデートできるなら」
笑顔でフルールは答える。
「ふふ、リリスとデートできそうで嬉しいわ」
本当に嬉しそうにフルールはリリスの前で花が咲くようやな笑顔になった。
よほど嬉しいのか、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
ココがバランスを取るのが難しそうに、必死でしがみついている。
そのうち落ちるかもしれない。
「カラス達、ステラにリリスの赤いマント渡しておいてくれるかな」
「「「はい、主様」」」
隅っこにいたカラス達もニコニコとこちらの様子を見ていた。
にまにましてるが正しいような表情をしている気もする。
リリスはフルールと一緒にフォルセの街へ出かけることになった。
不安な気持ちはあるけど、リリスもフルールと出かけたかったから、嬉しい。
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