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2章 リリスと闇の侯爵家
76 はじめての製本制作その六
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「あれ?
…まだ光ってる」
リリスが持つ本はまだ光輝いていた。
まだ何が起こるというのだろうか。
リリスから離れたところに、魔術式が現れ起動する。
大きな薔薇のつぼみが現れ、つぼみが膨らみ花が咲いた。
そこからサファイアとルビーが転がり現れた。
「あれ?」
「ここどこ?」
「リリスだ!」
「主様だ!」
カラス達は何が起きたのか不思議そうにリリスとメルヒを交互に見ている。
本の輝きはやっとおさまり、魔術式も消えた。
リリスはパタリと本を閉じる。
「ふーん、助けを呼ぶ知らせだけじゃ無くて召喚までしたのだねぇ」
「へっ、召喚?」
リリスは助けを求めるためにカラス達まで自分のところまで呼ぶことが出来たらしい。
「すごいねぇ、これなら狼の魔族と遭遇しても安心だよ。
遭遇したら、この術式を使うんだよ。
魔術は無事起動したし、その本は立派な魔術書だねぇ。
素晴らしいできだと思うよ」
メルヒの手には、まだ薔薇の花が握られていた。
さっきは光っていて分からなかったが、よく見ると赤い薔薇だ。
今度は花言葉を思い出して、恥ずかしくなってきてしまう。
きっとリリスだけがそんな気持ちになっているだけだと思うけど。
「その薔薇消えないのですね…」
「そうみたいだねぇ…。
面白いねぇ。
この花は生花みたいだ。
水をあげて世話しないとねぇ。
サファイア、ルビー。
この薔薇の花をあとで僕の部屋に飾っておいてくれるかな?」
なんでここにいるのだろうと、キョロキョロしていたサファイアとルビーはメルヒのよびかけに反応する。
「はい!」
「飾っておきますわ」
二人で手を繋ぎ、床に座り込んでいたが、立ち上がってメルヒのもとへ薔薇を受け取りに行った。
「これは、リリスが魔術で生み出した薔薇だよ。
綺麗だよねぇ」
「リリスが作ったの?」
「すごいわ」
大事そうに二人は薔薇を受け取った。
リリスはいきなり工房に呼び出してしまったことを謝ろうとサファイアとルビーに近づいた。
「二人ともびっくりしたでしょう?
いきなり工房にいるのだものね。
ごめんなさい…。
はじめての作った魔術書で、助けを求める術式を使ったら二人が呼ばれてしまったみたいなの」
「あぁ、リリスが私達をよんだのね。
主様かと思ってましたわ」
「ボク達は精霊の雛だから、呼ばれやすかったんだと思うな。
気にしないで!
助けがほしい時はいつでも呼んで」
「私達を呼べるくらい仲良くなれたということですわ。
困ったらいつでも呼んで欲しいわ」
いきなり呼び出してしまったけれど、迷惑だと思われなくてよかったとリリスはほっと胸をなでおろす。
「それより、ちょうどよかった。
主様とリリスに知らせたいことがあったんだ」
サファイアの言葉にメルヒが反応した。
「ん?何があったのかい?」
サファイアとルビーは二人で並んで口を揃える。
「「主様とリリスにお客様です。
ステラが来ました!」」
その言葉と同時に工房の扉がノックされた。
「どうぞ」
静かに扉が開くとエメラルドの姿があった。
使用人のお手本のように優雅に礼をする。
「主様、お知らせがございます。
ステラがきました」
「うん、エメも知らせてくれてありがとう」
「…エメも?」
礼をしたまま用件を告げると、怪訝そうに顔を上げる。
いるはずのない者の姿を目にして、エメラルドの瞳が少し大きくなった。
「あら…サファイアとルビー?
さっきまでステラと一緒に玄関にいたのでは?」
サファイアとルビーが工房にいることに驚いている。
「リリスの魔術で飛んできたー」
「気づいたらここにいたの」
「魔術…。
エメ、呼ばれなかった…。
ショック」
あっ、悲しそうな目でエメラルドがこっちを見ている。
なにか言わないといけない。
「エメラルド…。
次はきっと呼べると思うわ。
助けを求める術式を使ったの。
はじめてだったから、二人を呼んだのは事故みたいなものなのよ…」
エメラルドは考え込むような表情を浮かべる。
「…次は呼んで。
危険を退けられるのは、二人じゃなくてエメだから」
「…使い方よくわからないけど、頑張るわ」
ひとまず、納得してくれたようで安心した。
悲しそうな瞳で見つめられるのは耐えられない。
「サファイアとルビーがここにいるということは…。
あの方は一人ですか、これはいけませんね」
エメラルドは慌てた様子でカラスの姿になり飛び立とうとすると廊下の方からパタパタと慌ただしい音が近づいてきた。
「…こっちに、来たみたいだねぇ」
…まだ光ってる」
リリスが持つ本はまだ光輝いていた。
まだ何が起こるというのだろうか。
リリスから離れたところに、魔術式が現れ起動する。
大きな薔薇のつぼみが現れ、つぼみが膨らみ花が咲いた。
そこからサファイアとルビーが転がり現れた。
「あれ?」
「ここどこ?」
「リリスだ!」
「主様だ!」
カラス達は何が起きたのか不思議そうにリリスとメルヒを交互に見ている。
本の輝きはやっとおさまり、魔術式も消えた。
リリスはパタリと本を閉じる。
「ふーん、助けを呼ぶ知らせだけじゃ無くて召喚までしたのだねぇ」
「へっ、召喚?」
リリスは助けを求めるためにカラス達まで自分のところまで呼ぶことが出来たらしい。
「すごいねぇ、これなら狼の魔族と遭遇しても安心だよ。
遭遇したら、この術式を使うんだよ。
魔術は無事起動したし、その本は立派な魔術書だねぇ。
素晴らしいできだと思うよ」
メルヒの手には、まだ薔薇の花が握られていた。
さっきは光っていて分からなかったが、よく見ると赤い薔薇だ。
今度は花言葉を思い出して、恥ずかしくなってきてしまう。
きっとリリスだけがそんな気持ちになっているだけだと思うけど。
「その薔薇消えないのですね…」
「そうみたいだねぇ…。
面白いねぇ。
この花は生花みたいだ。
水をあげて世話しないとねぇ。
サファイア、ルビー。
この薔薇の花をあとで僕の部屋に飾っておいてくれるかな?」
なんでここにいるのだろうと、キョロキョロしていたサファイアとルビーはメルヒのよびかけに反応する。
「はい!」
「飾っておきますわ」
二人で手を繋ぎ、床に座り込んでいたが、立ち上がってメルヒのもとへ薔薇を受け取りに行った。
「これは、リリスが魔術で生み出した薔薇だよ。
綺麗だよねぇ」
「リリスが作ったの?」
「すごいわ」
大事そうに二人は薔薇を受け取った。
リリスはいきなり工房に呼び出してしまったことを謝ろうとサファイアとルビーに近づいた。
「二人ともびっくりしたでしょう?
いきなり工房にいるのだものね。
ごめんなさい…。
はじめての作った魔術書で、助けを求める術式を使ったら二人が呼ばれてしまったみたいなの」
「あぁ、リリスが私達をよんだのね。
主様かと思ってましたわ」
「ボク達は精霊の雛だから、呼ばれやすかったんだと思うな。
気にしないで!
助けがほしい時はいつでも呼んで」
「私達を呼べるくらい仲良くなれたということですわ。
困ったらいつでも呼んで欲しいわ」
いきなり呼び出してしまったけれど、迷惑だと思われなくてよかったとリリスはほっと胸をなでおろす。
「それより、ちょうどよかった。
主様とリリスに知らせたいことがあったんだ」
サファイアの言葉にメルヒが反応した。
「ん?何があったのかい?」
サファイアとルビーは二人で並んで口を揃える。
「「主様とリリスにお客様です。
ステラが来ました!」」
その言葉と同時に工房の扉がノックされた。
「どうぞ」
静かに扉が開くとエメラルドの姿があった。
使用人のお手本のように優雅に礼をする。
「主様、お知らせがございます。
ステラがきました」
「うん、エメも知らせてくれてありがとう」
「…エメも?」
礼をしたまま用件を告げると、怪訝そうに顔を上げる。
いるはずのない者の姿を目にして、エメラルドの瞳が少し大きくなった。
「あら…サファイアとルビー?
さっきまでステラと一緒に玄関にいたのでは?」
サファイアとルビーが工房にいることに驚いている。
「リリスの魔術で飛んできたー」
「気づいたらここにいたの」
「魔術…。
エメ、呼ばれなかった…。
ショック」
あっ、悲しそうな目でエメラルドがこっちを見ている。
なにか言わないといけない。
「エメラルド…。
次はきっと呼べると思うわ。
助けを求める術式を使ったの。
はじめてだったから、二人を呼んだのは事故みたいなものなのよ…」
エメラルドは考え込むような表情を浮かべる。
「…次は呼んで。
危険を退けられるのは、二人じゃなくてエメだから」
「…使い方よくわからないけど、頑張るわ」
ひとまず、納得してくれたようで安心した。
悲しそうな瞳で見つめられるのは耐えられない。
「サファイアとルビーがここにいるということは…。
あの方は一人ですか、これはいけませんね」
エメラルドは慌てた様子でカラスの姿になり飛び立とうとすると廊下の方からパタパタと慌ただしい音が近づいてきた。
「…こっちに、来たみたいだねぇ」
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