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2章 リリスと闇の侯爵家
73 はじめての製本制作その三
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「プレス機から出ている背に定規で測って、七ヶ所印をつけようか。
そこにノコギリで目引きをするよ。
背の部分に均等になるように印をつけてねぇ」
「はい」
修復道具の中から金属で出来た定規を取り出す。
背に当てて均等になるように測り、鉛筆で印をつけた」
「はい、これ」
印をつけたところで、メルヒからノコギリが渡される。
こんな工具持ったことがない。
手に持って悩んでいたらメルヒが使い方を説明してくれた。
「そうだよねぇ…。
リリスは見たこと無いよねぇ。
あまりに自然に作業してたから思わず説明もなく渡してしまったよ。
ノコギリはあまり力を入れないで、引いて使うものなんだよ。
見てて」
そう言ってリリスの手からノコギリを受け取ると、メルヒがお手本を見せてくれた。
ギザギザとした刃先が印をつけた本の背にあたる。
メルヒは初めはゆっくりとノコギリを動かした。
こんなすぐにまっすぐ切れるものなのだろうかとリリス不安に思う。
ノコギリで浅く削られ溝ができた。
「こんな感じで、あと六ケ所やってみて」
メルヒからノコギリをうけとり、おそるおそる印に当てる。
ゴリゴリと紙が削れる音が聞こえた。
最初は取っ掛かりが無くて狙いがはずれて削りにくいが、だんだん削りやすくなってくる。
紙を削る感覚が腕に伝わってきて、楽しくなってきた。
「削るの楽しいと思うけど、浅くねぇ」
「あっ、そうでした!」
夢中でゴリゴリ削っていたら、メルヒに心配された。
深く削りすぎないように注意しなくてはいけない。
この調子で残りも削っていく。
「…できました」
背には七ヶ所、溝ができている。
「大丈夫そうだねぇ。
今度は、この支持体用の麻糸を本の厚さより長めに切って、溝にはめてみて。
麻糸の先をテープで仮どめしたら、糸かがりという作業をするよ」
言われた通りに、修復道具からハサミを取り出して麻糸を切り取る。
薔薇モチーフの装飾的なハサミだったけれど、よく切れた。
かわいいだけじゃなくて、良い道具だと思う。
麻糸を溝に仮どめしたところで、プレス機をゆるめて紙を取り出す。
メルヒが綴じ糸と針を持ってきた。
「この綴じ糸で綴じるよ。
むずかしいところだから、図を書いてみたからこの順番で綴じていこうか。
針を通したら最後まで通さずに数センチ糸を残してね」
「なんですか、これは…。
図を見ても難しいですよ…」
メルヒからもらった図を見ても理解できないほど複雑な綴り方が書かれていた。
「やっぱりそうだよねぇ…。
みててあげるから、一緒に綴っていこうか」
メルヒの指示に従って、一つ目の折丁の外側一番目の穴から針を入れて七番目の穴から抜いていく。
ノコギリで削ったところが糸かがりをするための穴になっていた。
支持体として麻糸が入っているので、ズレることが少ないが難しい。
抜いた穴の真上にあるもう一つの折丁の穴をくぐって、また下の折丁に戻り最初の糸をひっかけてもとの穴から顔を出した。
この作業を繰り返して、最初に残していた糸と結んだ。
こうして一番目の折丁と二番目の折丁が合わさって綴られた。
どうやらこの作業の繰り返しのようだ。
難しそうに見えたが、分かってしまうとすんなりと、糸かがりができる。
「難しいけど、やってみるとすんなりですね。
何回かやらないと分からなくなってしまいますが…」
「しばらくやらないと忘れてしまうから、また練習するといいよ」
メルヒと話をしながらも残りの折丁を糸で綴っていく。
最後までできたところで、真下の糸と絡めて結び目を作り、余分な糸をハサミで切った。
「…ふぅ」
集中していたので、終わってほっとした。
こうして、糸かがりを終えると本ぽくなってきたように思う。
「うん。
ゆるみもなさそうだし、ズレもない。
いい感じに出来てるねぇ」
「これは本当に、忘れそうです…」
「忘れたら、また思い出せばいいんだよ。
やり方はメモしてあるからねぇ。
ここが山場なのかな、綴じるのって複雑だよねぇ。
次は表紙の方のパーツを作るよ。
本紙はしばらく置いておこうねぇ」
「…はい」
なんだか綴じるのが難しくて疲れてしまった。
そこにノコギリで目引きをするよ。
背の部分に均等になるように印をつけてねぇ」
「はい」
修復道具の中から金属で出来た定規を取り出す。
背に当てて均等になるように測り、鉛筆で印をつけた」
「はい、これ」
印をつけたところで、メルヒからノコギリが渡される。
こんな工具持ったことがない。
手に持って悩んでいたらメルヒが使い方を説明してくれた。
「そうだよねぇ…。
リリスは見たこと無いよねぇ。
あまりに自然に作業してたから思わず説明もなく渡してしまったよ。
ノコギリはあまり力を入れないで、引いて使うものなんだよ。
見てて」
そう言ってリリスの手からノコギリを受け取ると、メルヒがお手本を見せてくれた。
ギザギザとした刃先が印をつけた本の背にあたる。
メルヒは初めはゆっくりとノコギリを動かした。
こんなすぐにまっすぐ切れるものなのだろうかとリリス不安に思う。
ノコギリで浅く削られ溝ができた。
「こんな感じで、あと六ケ所やってみて」
メルヒからノコギリをうけとり、おそるおそる印に当てる。
ゴリゴリと紙が削れる音が聞こえた。
最初は取っ掛かりが無くて狙いがはずれて削りにくいが、だんだん削りやすくなってくる。
紙を削る感覚が腕に伝わってきて、楽しくなってきた。
「削るの楽しいと思うけど、浅くねぇ」
「あっ、そうでした!」
夢中でゴリゴリ削っていたら、メルヒに心配された。
深く削りすぎないように注意しなくてはいけない。
この調子で残りも削っていく。
「…できました」
背には七ヶ所、溝ができている。
「大丈夫そうだねぇ。
今度は、この支持体用の麻糸を本の厚さより長めに切って、溝にはめてみて。
麻糸の先をテープで仮どめしたら、糸かがりという作業をするよ」
言われた通りに、修復道具からハサミを取り出して麻糸を切り取る。
薔薇モチーフの装飾的なハサミだったけれど、よく切れた。
かわいいだけじゃなくて、良い道具だと思う。
麻糸を溝に仮どめしたところで、プレス機をゆるめて紙を取り出す。
メルヒが綴じ糸と針を持ってきた。
「この綴じ糸で綴じるよ。
むずかしいところだから、図を書いてみたからこの順番で綴じていこうか。
針を通したら最後まで通さずに数センチ糸を残してね」
「なんですか、これは…。
図を見ても難しいですよ…」
メルヒからもらった図を見ても理解できないほど複雑な綴り方が書かれていた。
「やっぱりそうだよねぇ…。
みててあげるから、一緒に綴っていこうか」
メルヒの指示に従って、一つ目の折丁の外側一番目の穴から針を入れて七番目の穴から抜いていく。
ノコギリで削ったところが糸かがりをするための穴になっていた。
支持体として麻糸が入っているので、ズレることが少ないが難しい。
抜いた穴の真上にあるもう一つの折丁の穴をくぐって、また下の折丁に戻り最初の糸をひっかけてもとの穴から顔を出した。
この作業を繰り返して、最初に残していた糸と結んだ。
こうして一番目の折丁と二番目の折丁が合わさって綴られた。
どうやらこの作業の繰り返しのようだ。
難しそうに見えたが、分かってしまうとすんなりと、糸かがりができる。
「難しいけど、やってみるとすんなりですね。
何回かやらないと分からなくなってしまいますが…」
「しばらくやらないと忘れてしまうから、また練習するといいよ」
メルヒと話をしながらも残りの折丁を糸で綴っていく。
最後までできたところで、真下の糸と絡めて結び目を作り、余分な糸をハサミで切った。
「…ふぅ」
集中していたので、終わってほっとした。
こうして、糸かがりを終えると本ぽくなってきたように思う。
「うん。
ゆるみもなさそうだし、ズレもない。
いい感じに出来てるねぇ」
「これは本当に、忘れそうです…」
「忘れたら、また思い出せばいいんだよ。
やり方はメモしてあるからねぇ。
ここが山場なのかな、綴じるのって複雑だよねぇ。
次は表紙の方のパーツを作るよ。
本紙はしばらく置いておこうねぇ」
「…はい」
なんだか綴じるのが難しくて疲れてしまった。
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