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1章 リリスのグリモワールの修復師
26 私の居場所
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「カァ!リリス様はここに住むのですか?」
「カァ、カァ!ボクたちと一緒に住むの?」
「…」
カラスたちが騒ぐ。
「リリスはしばらくこの屋敷で暮らすことになったから、仲良くね。
他に行くところもないしだろうし…。
僕の仕事も手伝ってくれるそうだよ」
「お手伝い頑張ります」
メルヒの仕事は興味深いのでお手伝いは楽しい。
いろんなことを覚えていきたいと思っている。
手に職って大事よね。
カラスたちは人の姿になり床に降りる。
「リリス様!リリス様のことリリスって呼んでもいい?」
「私もそう呼びたいですわ」
「…リリス」
三つ子がこちらに寄ってくる。
そんなふうに見つめられるとなんでも、頷いてしまいそうだ。
「そうね、他人行儀じゃなくてリリスって呼んで欲しいわ」
リリスと名前を呼んでくれる人が増えて嬉しい。
それだけでも世界が広がった気がする。
「リリス。
僕のことも呼ぶ時、様はいらないよ」
メルヒも三つ子達に便乗してかそう言ってくる。
「ここの主人ですよね?
いいのでしょうか…」
なんだか戸惑ってしまう。
「僕がいいって言ってるんだよ」
「では、メルヒと呼びます」
名前を口に出してみると心が温かくなった。
このぽかぽかした気持ちはなんだろう。
ぼんやりしていると声が耳に入ってきた。
「さて、今日はもう遅いから工房を閉めるよ。
上に行って夕食にしょう」
「ご飯の時間」
「ご飯」
「…お腹すいた」
三つ子達もお腹がすいているようだ。
メルヒの背中を追いかけて工房の外へ出る。
厳重な扉を抜け、階段を上がる。
一階の食堂へ向かった。
案内して貰った時は、何も無かった食堂に出来たての夕食が並んでいる。
サラダにかぼちゃのスープ、メイン料理はソースがかかったお肉が置かれている。
どこに座ればいいか分かるように名札まで置いてあった。
「私の席は…メルヒの隣ですね」
自分の椅子を引き座る。
様を付けないで呼ぶのは、なんだか違和感を感じる。
向かい側には三つ子達が座っていた。
給仕の格好しているけれど、一緒に座って食べるのね。
ミルキは決して一緒には食べてくれなかったわ。
思い出して寂しくなるが、今はこうやって人数多く食事を囲めるのが嬉しい。
「今日は肉料理だねぇ。
じゃぁ、みんな食べようか…」
メルヒも三つ子達を目を閉じ、祈りを捧げる。
私もそれに倣い祈りを捧げる。
「「素晴らしき、隣人に感謝します」」
祈りが終わるとみんな食事を始める。
メルヒはナイフとフォークを持ち、誰よりも綺麗に食べていた。
食べる姿だけで気品を感じる。
三つ子達に目を移すと、こちらはマナーは気にせず好きなように食べていた。
口の周りにいろいろつけている。
「美味しいですわ」
「スープ甘くて美味しい」
「…美味」
メルヒが三つ子を見て苦笑している。
「口の周りをあとで拭くんだよ」
「「「はーい」」」
私も周りの様子をみてスープをすくって飲む。
「ほくほくして美味しい…」
妖精さんって本当に料理上手なのね。
あっという間に夕食を食べてしまった。
案内してもらった時の厨房は、なんの気配もなかったのに不思議なものだ。
いつの間に食事を作っているのだろう…
ちらりと厨房の方を見る。
「厨房が気になるの?」
メルヒが聞く。
「はい、ルビーとサファイアに案内してもらった時は誰もいなかったのに不思議で」
私は首をかしげる。
一体いつの間に作ったのかしら。
「こんなに美味しいもの作ってもらったのでお礼がしたいです」
その言葉にメルヒは微笑む。
「リリスは良い子だねぇ。
彼らは滅多に姿を現さないけど、枕元にお菓子とか牛乳を置いておくと喜ぶよ。
何かしたいなら、そうするといいよ」
「枕元まで妖精さんが来てくれるのですか?」
私はその話を聞いてわくわくする。
早速、今夜からお菓子を置いておこう。
夕食が終わるとサファイアとルビーに何かお菓子がないか聞いてみたが、街に買いに行かないとお菓子はなさそうだった。
また今度、妖精さんに良さそうなものを探してみよう。
それぞれ自室に向かい階段を登る。
二階に着いたところでメルヒがこちらを振り返る。
「明日の予定だけど街行こう。
リリスの道具でも揃えに行こうか」
「道具ですか?」
「工房に道具は一人分しかないから、手伝ってくれるなら揃えないとねぇ。
リリスはいい目を持ってるから期待してるよ」
「街に出て大丈夫でしょうか…」
家の者に探されていると思うので不安になる。
「早い方が伝達来てなくて大丈夫だと思うよ。
今のうちに買いに行こうねぇ。
それじゃ、おやすみ」
三つ子達に順番に頭を撫でる。
同じように私にも優しい手つきで頭を撫でて寝室にむかって行った。
「みんな、おやすみ」
「「「おやすみなさい」」」
メルヒが早に入るのを見送る。
三つ子は私の部屋についてきてくれる。
「お洋服、着替えましょう」
「ボクも手伝います」
「…エメの仕事は見てること」
豪華な白いワンピースを脱ぐのを手伝ってもらう。
身につけていた時は慣れてしまっていたが、脱ぐとやっぱり動きやすくなった。
「ありがとう、もう大丈夫よ」
私は三人にお礼を言う。
「では、私たちも自室に戻りますわ」
「おやすみなさい」
「…良い夢を」
三つ子達は眠そうにあくびをして部屋を出ていった。
私はこのまま一人で湯浴みをする。
部屋に浴室があるので好きな時に使えそうだ。
お湯を浴びると、気持ちもさっぱりした。
テキパキと身軽なインナー姿になる。
キャミソールタイプのワンピースとドロワーズ姿だ。
このままベッドに寝転ぶ。
いろんなことがあって疲れたが、明日のことも楽しみだ。
ここが私の居場所になるといいな。
そのまま疲れて眠りに落ちた。
「カァ、カァ!ボクたちと一緒に住むの?」
「…」
カラスたちが騒ぐ。
「リリスはしばらくこの屋敷で暮らすことになったから、仲良くね。
他に行くところもないしだろうし…。
僕の仕事も手伝ってくれるそうだよ」
「お手伝い頑張ります」
メルヒの仕事は興味深いのでお手伝いは楽しい。
いろんなことを覚えていきたいと思っている。
手に職って大事よね。
カラスたちは人の姿になり床に降りる。
「リリス様!リリス様のことリリスって呼んでもいい?」
「私もそう呼びたいですわ」
「…リリス」
三つ子がこちらに寄ってくる。
そんなふうに見つめられるとなんでも、頷いてしまいそうだ。
「そうね、他人行儀じゃなくてリリスって呼んで欲しいわ」
リリスと名前を呼んでくれる人が増えて嬉しい。
それだけでも世界が広がった気がする。
「リリス。
僕のことも呼ぶ時、様はいらないよ」
メルヒも三つ子達に便乗してかそう言ってくる。
「ここの主人ですよね?
いいのでしょうか…」
なんだか戸惑ってしまう。
「僕がいいって言ってるんだよ」
「では、メルヒと呼びます」
名前を口に出してみると心が温かくなった。
このぽかぽかした気持ちはなんだろう。
ぼんやりしていると声が耳に入ってきた。
「さて、今日はもう遅いから工房を閉めるよ。
上に行って夕食にしょう」
「ご飯の時間」
「ご飯」
「…お腹すいた」
三つ子達もお腹がすいているようだ。
メルヒの背中を追いかけて工房の外へ出る。
厳重な扉を抜け、階段を上がる。
一階の食堂へ向かった。
案内して貰った時は、何も無かった食堂に出来たての夕食が並んでいる。
サラダにかぼちゃのスープ、メイン料理はソースがかかったお肉が置かれている。
どこに座ればいいか分かるように名札まで置いてあった。
「私の席は…メルヒの隣ですね」
自分の椅子を引き座る。
様を付けないで呼ぶのは、なんだか違和感を感じる。
向かい側には三つ子達が座っていた。
給仕の格好しているけれど、一緒に座って食べるのね。
ミルキは決して一緒には食べてくれなかったわ。
思い出して寂しくなるが、今はこうやって人数多く食事を囲めるのが嬉しい。
「今日は肉料理だねぇ。
じゃぁ、みんな食べようか…」
メルヒも三つ子達を目を閉じ、祈りを捧げる。
私もそれに倣い祈りを捧げる。
「「素晴らしき、隣人に感謝します」」
祈りが終わるとみんな食事を始める。
メルヒはナイフとフォークを持ち、誰よりも綺麗に食べていた。
食べる姿だけで気品を感じる。
三つ子達に目を移すと、こちらはマナーは気にせず好きなように食べていた。
口の周りにいろいろつけている。
「美味しいですわ」
「スープ甘くて美味しい」
「…美味」
メルヒが三つ子を見て苦笑している。
「口の周りをあとで拭くんだよ」
「「「はーい」」」
私も周りの様子をみてスープをすくって飲む。
「ほくほくして美味しい…」
妖精さんって本当に料理上手なのね。
あっという間に夕食を食べてしまった。
案内してもらった時の厨房は、なんの気配もなかったのに不思議なものだ。
いつの間に食事を作っているのだろう…
ちらりと厨房の方を見る。
「厨房が気になるの?」
メルヒが聞く。
「はい、ルビーとサファイアに案内してもらった時は誰もいなかったのに不思議で」
私は首をかしげる。
一体いつの間に作ったのかしら。
「こんなに美味しいもの作ってもらったのでお礼がしたいです」
その言葉にメルヒは微笑む。
「リリスは良い子だねぇ。
彼らは滅多に姿を現さないけど、枕元にお菓子とか牛乳を置いておくと喜ぶよ。
何かしたいなら、そうするといいよ」
「枕元まで妖精さんが来てくれるのですか?」
私はその話を聞いてわくわくする。
早速、今夜からお菓子を置いておこう。
夕食が終わるとサファイアとルビーに何かお菓子がないか聞いてみたが、街に買いに行かないとお菓子はなさそうだった。
また今度、妖精さんに良さそうなものを探してみよう。
それぞれ自室に向かい階段を登る。
二階に着いたところでメルヒがこちらを振り返る。
「明日の予定だけど街行こう。
リリスの道具でも揃えに行こうか」
「道具ですか?」
「工房に道具は一人分しかないから、手伝ってくれるなら揃えないとねぇ。
リリスはいい目を持ってるから期待してるよ」
「街に出て大丈夫でしょうか…」
家の者に探されていると思うので不安になる。
「早い方が伝達来てなくて大丈夫だと思うよ。
今のうちに買いに行こうねぇ。
それじゃ、おやすみ」
三つ子達に順番に頭を撫でる。
同じように私にも優しい手つきで頭を撫でて寝室にむかって行った。
「みんな、おやすみ」
「「「おやすみなさい」」」
メルヒが早に入るのを見送る。
三つ子は私の部屋についてきてくれる。
「お洋服、着替えましょう」
「ボクも手伝います」
「…エメの仕事は見てること」
豪華な白いワンピースを脱ぐのを手伝ってもらう。
身につけていた時は慣れてしまっていたが、脱ぐとやっぱり動きやすくなった。
「ありがとう、もう大丈夫よ」
私は三人にお礼を言う。
「では、私たちも自室に戻りますわ」
「おやすみなさい」
「…良い夢を」
三つ子達は眠そうにあくびをして部屋を出ていった。
私はこのまま一人で湯浴みをする。
部屋に浴室があるので好きな時に使えそうだ。
お湯を浴びると、気持ちもさっぱりした。
テキパキと身軽なインナー姿になる。
キャミソールタイプのワンピースとドロワーズ姿だ。
このままベッドに寝転ぶ。
いろんなことがあって疲れたが、明日のことも楽しみだ。
ここが私の居場所になるといいな。
そのまま疲れて眠りに落ちた。
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