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1章 リリスのグリモワールの修復師
22 逃げる薔薇姫その三
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「その子になにかしたら、許さないわよ!」
私はリリスに近づく人影に吠える。
空が暗く木々の影で姿がよく見えない。
ただ、リリスの着ている赤いマントが雪の上に広がりながら投げ出されている姿が印象的だった。
人影はこちらを見てにやにや笑っている。
大柄な熊のような男がこちらに近づいてきた。
「小さなお嬢ちゃん一人でなにが出来る?」
嘲るような笑いを後方の者達もしている。
そのまま影の一人がリリスに近づき、口に布をあて何かを嗅がせた。
「…!なにしたの!」
慌てて私は近づこうとするがリリスに刃物が向けられる。
「大人しくするんだな、お嬢ちゃん」
奥歯を噛みしめ相手を睨みつけた。
「リリスになにかしたら、許さないわ!私を舐めるは結構だけど、こんなことした相応の報いは受けてもらうわ!」
「ガハハ、元気なお嬢ちゃんだ。
お嬢ちゃんも高く売れそうな、綺麗な顔と色どりをしてりゃ、珍しい猫までいる」
その言葉に私はこの者達が人さらいであることに気づく。
オプスキュリテ家の追ってではないのね。
「あなた達、私たちを捕まえて売る気ね」
「こんなところに、女の子二人であぶねーよな」
男がこちらに飛びかかってくる。
熊のように大きいので勢いはあるが、攻撃が読みやすい。
するりと身をこなし男の腹に肘を食らわせ避ける。
ちっ、なんて硬いの。
私の中で熊男と呼ぶことにした。
「ココ!」
私はココに向かって石を投げる、素早くキャッチしたココは上空に飛び、男に石を落とした。
「燃えろ」
「な、なんだ!」
当たった石が爆発を起こす。
私はさらに石を数個持ち、リリスのもとへ素早く近づこうとするが雪に足をとられる。
「邪魔」
じゅっと音を立ててあたりの雪が蒸発した。
空気中に水蒸気が上がり霧となり視界を塞ぐ。
「な、なんだ?」
熊男と同じく仲間も腑抜けた声をあげる。
状況についてきていないリリスの周りにいる人さらいの仲間を蹴り飛ばし、石を投げ込む。
「燃えろ」
それぞれ悲鳴を上げながら雪原を転がった。
「ふん」
ふと背後に気配を感じ振り返る。
もろに炎をくらった熊男がまだ立っていた。
「あら、頑丈なのね」
「お嬢ちゃん、ずいぶん魔術が使えるようだな。
ならこちらも…。
ウォォォォ!!!」
地響きのような低い咆哮にビクリとする。
熊男の体がさきほどより一層大きくなる。
メキメキと音を鳴らしながら膨らんだ筋肉で服が破けた。
体中に彫られた刺青が光っている。
毛深いのでより熊のようだ。
「やだ、男臭い無理!!」
強烈に拒否反応がでる。
こういうのほんと無理!
視界に入れたくないくらい、男臭い。
私はこんなものを見たくない!
拒否反応で錯乱していた私を熊男の攻撃が襲う。
シュッと私の耳の横を拳が通った。
「肉体改造よね、これ」
ハッとして反撃にでる。
ガラス板を手に取り唱える。
「リフレクター」
透明な板に印した刻印が作動し、大きく広がり私たちを守ってくれる。
「グハッ!よくも…」
そこに男の拳が壁にあたり、悶えている。
自分の攻撃が跳ね返っているのだから、痛いはずよね。
男が悶えている間にリリスを抱き走り出す。
リリスは私よりも背が高いので運びにくい。
今この場においでは身長があればとも思うが、成長を止めたことは後悔していない。
このままリリスを抱えていたら、攻撃を避けられないだろう。
お願い早く起きて!
私は願いを込めて回復魔法を施す。
何を嗅がされたのかしら。
「…ん、フルール」
ここでやっとリリスが起きた。
「リリス、よく聞いて」
「なにがあったの?」
ぼんやりとしたリリスはかわいいが、今はそういう状況ではない。
「人さらいよ」
「人さらい…」
リリスはあんまりよく分かっていなさそうだった。
「捕まるとどこかに売り飛ばされるわ
私が食い止めるから、リリスは一人で逃げて!」
「一人で…。
フルール、私も戦うわ!」
「ダメよ。
リリス、あなた何も出来ないでしょう!
貴方をかばいながら私は戦えないわ」
「そんな…」
絶望的な顔でこちらを見る。
「あともう少しで目的地だから、歩いてでも向かってちょうだい!
ほら、これ貴方の鞄よ」
拾っておいた鞄をリリスに持たせる。
「コンパスの針が示す先に進むのよ。
終わったら、リリスを追いかけるわ」
私はリリスを立たせ、背中を強く叩く。
リリスは顔をくしゃくしゃにしながこちらを向いた。
「ぜったい、追いかけてきてね!」
リリスはそういって、泣きながら私に背中を向け森の中へ走っていった。
「リリス、無事あの場所へたどり着いてね」
私はリリスに近づく人影に吠える。
空が暗く木々の影で姿がよく見えない。
ただ、リリスの着ている赤いマントが雪の上に広がりながら投げ出されている姿が印象的だった。
人影はこちらを見てにやにや笑っている。
大柄な熊のような男がこちらに近づいてきた。
「小さなお嬢ちゃん一人でなにが出来る?」
嘲るような笑いを後方の者達もしている。
そのまま影の一人がリリスに近づき、口に布をあて何かを嗅がせた。
「…!なにしたの!」
慌てて私は近づこうとするがリリスに刃物が向けられる。
「大人しくするんだな、お嬢ちゃん」
奥歯を噛みしめ相手を睨みつけた。
「リリスになにかしたら、許さないわ!私を舐めるは結構だけど、こんなことした相応の報いは受けてもらうわ!」
「ガハハ、元気なお嬢ちゃんだ。
お嬢ちゃんも高く売れそうな、綺麗な顔と色どりをしてりゃ、珍しい猫までいる」
その言葉に私はこの者達が人さらいであることに気づく。
オプスキュリテ家の追ってではないのね。
「あなた達、私たちを捕まえて売る気ね」
「こんなところに、女の子二人であぶねーよな」
男がこちらに飛びかかってくる。
熊のように大きいので勢いはあるが、攻撃が読みやすい。
するりと身をこなし男の腹に肘を食らわせ避ける。
ちっ、なんて硬いの。
私の中で熊男と呼ぶことにした。
「ココ!」
私はココに向かって石を投げる、素早くキャッチしたココは上空に飛び、男に石を落とした。
「燃えろ」
「な、なんだ!」
当たった石が爆発を起こす。
私はさらに石を数個持ち、リリスのもとへ素早く近づこうとするが雪に足をとられる。
「邪魔」
じゅっと音を立ててあたりの雪が蒸発した。
空気中に水蒸気が上がり霧となり視界を塞ぐ。
「な、なんだ?」
熊男と同じく仲間も腑抜けた声をあげる。
状況についてきていないリリスの周りにいる人さらいの仲間を蹴り飛ばし、石を投げ込む。
「燃えろ」
それぞれ悲鳴を上げながら雪原を転がった。
「ふん」
ふと背後に気配を感じ振り返る。
もろに炎をくらった熊男がまだ立っていた。
「あら、頑丈なのね」
「お嬢ちゃん、ずいぶん魔術が使えるようだな。
ならこちらも…。
ウォォォォ!!!」
地響きのような低い咆哮にビクリとする。
熊男の体がさきほどより一層大きくなる。
メキメキと音を鳴らしながら膨らんだ筋肉で服が破けた。
体中に彫られた刺青が光っている。
毛深いのでより熊のようだ。
「やだ、男臭い無理!!」
強烈に拒否反応がでる。
こういうのほんと無理!
視界に入れたくないくらい、男臭い。
私はこんなものを見たくない!
拒否反応で錯乱していた私を熊男の攻撃が襲う。
シュッと私の耳の横を拳が通った。
「肉体改造よね、これ」
ハッとして反撃にでる。
ガラス板を手に取り唱える。
「リフレクター」
透明な板に印した刻印が作動し、大きく広がり私たちを守ってくれる。
「グハッ!よくも…」
そこに男の拳が壁にあたり、悶えている。
自分の攻撃が跳ね返っているのだから、痛いはずよね。
男が悶えている間にリリスを抱き走り出す。
リリスは私よりも背が高いので運びにくい。
今この場においでは身長があればとも思うが、成長を止めたことは後悔していない。
このままリリスを抱えていたら、攻撃を避けられないだろう。
お願い早く起きて!
私は願いを込めて回復魔法を施す。
何を嗅がされたのかしら。
「…ん、フルール」
ここでやっとリリスが起きた。
「リリス、よく聞いて」
「なにがあったの?」
ぼんやりとしたリリスはかわいいが、今はそういう状況ではない。
「人さらいよ」
「人さらい…」
リリスはあんまりよく分かっていなさそうだった。
「捕まるとどこかに売り飛ばされるわ
私が食い止めるから、リリスは一人で逃げて!」
「一人で…。
フルール、私も戦うわ!」
「ダメよ。
リリス、あなた何も出来ないでしょう!
貴方をかばいながら私は戦えないわ」
「そんな…」
絶望的な顔でこちらを見る。
「あともう少しで目的地だから、歩いてでも向かってちょうだい!
ほら、これ貴方の鞄よ」
拾っておいた鞄をリリスに持たせる。
「コンパスの針が示す先に進むのよ。
終わったら、リリスを追いかけるわ」
私はリリスを立たせ、背中を強く叩く。
リリスは顔をくしゃくしゃにしながこちらを向いた。
「ぜったい、追いかけてきてね!」
リリスはそういって、泣きながら私に背中を向け森の中へ走っていった。
「リリス、無事あの場所へたどり着いてね」
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