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1章 リリスのグリモワールの修復師
15 協力者
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リリス様を薔薇姫の塔から逃がすにあたり、必要なことがある。
外は極寒の冬。
この魔法王国ルーナでも辺境にあるこの地は冬の天気が荒れやすい。
この荒れ狂う吹雪でも耐えることができる装備が必要だ。
術式を付与したマントを急ぎ用意する。
食事は保存性がよく栄養価の高い物を入れた焼き菓子をバッグに詰める。
暖かい紅茶も保温の効く道具に入れた。
あとは協力者だ。
さすがに一人でリリスを逃がすことは出来ない。
心当たりのある者が一人だけいる。
フルールという花屋の少女だ。
フルールはこの屋敷に花を届ける旅の花屋だ。
明るい緑色の瞳を持ちウェーブのかかった眩しい金髪を肩にかかるくらいで揃えている。
横にはいつも 二足歩行で歩く毛足の長い白猫ココを連れている。
自分はドラゴンであると毛色と同色翼を広げ猫自身が喋り出した時には、リリス様は大変喜ばれたものだ。
どういう訳かこの隠された塔にまでフールは花を売りに来る。
それもいつも何処からともなく現れて。
初めは警戒したものの、リリス様と楽しそうにする姿を見れば何も言えなくなった。
リリス様には笑ってもらいたい。
彼女たちは交流を続けていくにつれ、親友になった。
この魔術的にも隠されているこの塔に乗り込んでくるほどの力量。
そして、リリス様のことを思う心どれをとっても必要な協力者だ。
確か、リリス様が会いたいって思う時にいつも来てくれると話していた。
呼んでもらおう。
私は、装備品を整えリリス様の部屋へ向かった。
「フルールをよぶの?」
きょとんとした表情で首を傾げる。
「はい、リリス様が無事にこの塔を出るには必要なお人です。
さすがに私一人では屋敷の者を誤魔化して、逃げたリリス様をサポートすることはできませんから」
「ミルキも一緒に来てくれるのかと思ったわ」
驚いたように口に手を当てる。
「できるならそうしたいのですが…」
私はここにいないといけない。
無事にその願いを遂行するために、必要なことなのだ。
「そうだったのね…」
残念そうな表情でリリス様はこちらを見る。
「じゃあ、よぶわね。
フルールを巻き込んでいいのかしら」
リリス様は部屋の花瓶に飾ってある、赤い薔薇を手に取り、優しく花弁に触れた。
そしてひとこと呟いた。
「フルール、あなたに会いたいわ」
するとどうだろう。
こんな簡単な言葉だけで、部屋の中央から煙とともにフルールが現れた。
「リリスちゃん呼んだ?」
「来たにゃー」
「フルール!来てくれてありがとう。
ココも!」
「…」
本当にどうなっているんだ、この塔にこんなに容易くはいってしまうなんて。
人避け、誘拐防止、侵入防止ありとあらゆる術式で薔薇姫を守っている場所なのに。
「フルール、私ね。
ついに今日、この塔を出ようと思うの。
ミルキが言うには出るためにはフルールの協力が必要なんだって、巻き込んでしまって申し訳ないのだけど…」
「わーっ、やっと籠の中から自由に羽ばたく日がやってきたのね!
もちろん、かわいいリリスのお願いなんでも聞いちゃうわよ。
でも、なんで今日なの?」
きゃぴきゃぴと騒がしくフルールははしゃぐ。
「今夜、私の婚約者の魔族が私を迎えに来るのよ。
会ってしまえば、そのまま魔族の国へ連れていかれるわ。
その前に逃げるの!」
「今日中に逃げないとリリス的にはバッドエンドってわけね!
それで執事さん、私は何をしてリリスを助ければいいかしら?」
はしゃぐのやめ真剣なまなざしでフルールはこちらを見る。
足元の猫もこちらを伺っている。
「この塔を出るところから、移動、保護してもらう先の準備。
全ておまかせしたく思います」
「それ、全部じゃん」
「にゃにゃにゃ!」
猫も一緒に指摘してくる。
「やはり無理なお願いだと、こちらも分かっております。
しかしながら、フルール様」
フルールの顔を見て指摘する。
「すでに、リリス様を逃がす準備しておられますよね?」
それにイタズラが見つかったような笑みを返してくる。
「えへへ」
これが答えだ。
私はこの花屋が屋敷でこそこそ隠れていろいろしていたのを知っていた。
「執事さんは残ってなにをするの?」
「私はこの屋敷に残り、時間を稼ぐのと捜索の撹乱ですね。
厄介なお方がいらっしゃるので」
「ふーん、私がリリスを自由にしたくて準備してたわけだけど今日がその日なのね。
それなら、フルールちゃんに任せなさい!」
そうウィンクを飛ばしながら、彼女は全てを請け負った。
外は極寒の冬。
この魔法王国ルーナでも辺境にあるこの地は冬の天気が荒れやすい。
この荒れ狂う吹雪でも耐えることができる装備が必要だ。
術式を付与したマントを急ぎ用意する。
食事は保存性がよく栄養価の高い物を入れた焼き菓子をバッグに詰める。
暖かい紅茶も保温の効く道具に入れた。
あとは協力者だ。
さすがに一人でリリスを逃がすことは出来ない。
心当たりのある者が一人だけいる。
フルールという花屋の少女だ。
フルールはこの屋敷に花を届ける旅の花屋だ。
明るい緑色の瞳を持ちウェーブのかかった眩しい金髪を肩にかかるくらいで揃えている。
横にはいつも 二足歩行で歩く毛足の長い白猫ココを連れている。
自分はドラゴンであると毛色と同色翼を広げ猫自身が喋り出した時には、リリス様は大変喜ばれたものだ。
どういう訳かこの隠された塔にまでフールは花を売りに来る。
それもいつも何処からともなく現れて。
初めは警戒したものの、リリス様と楽しそうにする姿を見れば何も言えなくなった。
リリス様には笑ってもらいたい。
彼女たちは交流を続けていくにつれ、親友になった。
この魔術的にも隠されているこの塔に乗り込んでくるほどの力量。
そして、リリス様のことを思う心どれをとっても必要な協力者だ。
確か、リリス様が会いたいって思う時にいつも来てくれると話していた。
呼んでもらおう。
私は、装備品を整えリリス様の部屋へ向かった。
「フルールをよぶの?」
きょとんとした表情で首を傾げる。
「はい、リリス様が無事にこの塔を出るには必要なお人です。
さすがに私一人では屋敷の者を誤魔化して、逃げたリリス様をサポートすることはできませんから」
「ミルキも一緒に来てくれるのかと思ったわ」
驚いたように口に手を当てる。
「できるならそうしたいのですが…」
私はここにいないといけない。
無事にその願いを遂行するために、必要なことなのだ。
「そうだったのね…」
残念そうな表情でリリス様はこちらを見る。
「じゃあ、よぶわね。
フルールを巻き込んでいいのかしら」
リリス様は部屋の花瓶に飾ってある、赤い薔薇を手に取り、優しく花弁に触れた。
そしてひとこと呟いた。
「フルール、あなたに会いたいわ」
するとどうだろう。
こんな簡単な言葉だけで、部屋の中央から煙とともにフルールが現れた。
「リリスちゃん呼んだ?」
「来たにゃー」
「フルール!来てくれてありがとう。
ココも!」
「…」
本当にどうなっているんだ、この塔にこんなに容易くはいってしまうなんて。
人避け、誘拐防止、侵入防止ありとあらゆる術式で薔薇姫を守っている場所なのに。
「フルール、私ね。
ついに今日、この塔を出ようと思うの。
ミルキが言うには出るためにはフルールの協力が必要なんだって、巻き込んでしまって申し訳ないのだけど…」
「わーっ、やっと籠の中から自由に羽ばたく日がやってきたのね!
もちろん、かわいいリリスのお願いなんでも聞いちゃうわよ。
でも、なんで今日なの?」
きゃぴきゃぴと騒がしくフルールははしゃぐ。
「今夜、私の婚約者の魔族が私を迎えに来るのよ。
会ってしまえば、そのまま魔族の国へ連れていかれるわ。
その前に逃げるの!」
「今日中に逃げないとリリス的にはバッドエンドってわけね!
それで執事さん、私は何をしてリリスを助ければいいかしら?」
はしゃぐのやめ真剣なまなざしでフルールはこちらを見る。
足元の猫もこちらを伺っている。
「この塔を出るところから、移動、保護してもらう先の準備。
全ておまかせしたく思います」
「それ、全部じゃん」
「にゃにゃにゃ!」
猫も一緒に指摘してくる。
「やはり無理なお願いだと、こちらも分かっております。
しかしながら、フルール様」
フルールの顔を見て指摘する。
「すでに、リリス様を逃がす準備しておられますよね?」
それにイタズラが見つかったような笑みを返してくる。
「えへへ」
これが答えだ。
私はこの花屋が屋敷でこそこそ隠れていろいろしていたのを知っていた。
「執事さんは残ってなにをするの?」
「私はこの屋敷に残り、時間を稼ぐのと捜索の撹乱ですね。
厄介なお方がいらっしゃるので」
「ふーん、私がリリスを自由にしたくて準備してたわけだけど今日がその日なのね。
それなら、フルールちゃんに任せなさい!」
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