7 / 7
第一章
#6
しおりを挟む
「まぁ、青木から大まかに聞いたと思うんだけど」
届いたジュースを飲みながら藤井は緋山に話しかける。
「うん、藤井もなの?」
「やっぱり気づいた?」
「うん、まぁ。話聞いてるうちに、そうなのかな? とは」
青木は何だか気まずそうに俯いたまま口を開かない。
「俺は記憶操作もできるんだけど、緋山はどうしたい? 記憶を消して、なかったことにもできるよ」
藤井がそう聞いたが緋山は大して驚きもせずに何かを考えているようだった。少しの間をおいてから藤井と青木に問いかけた。
「それだと、青木はどうなるの?」
「えっ?」
久しぶりの青木の発言は消え入りそうなほど小さかったが、風が起こりそうな勢いで頭を上げた。
「あんなフラフラになるってことは、血が必要なんでしょ?」
青木から求めてもらえる、という緋山にとって激アツ案件をなかったことになんてできない。というかしたくない、という強い思いで真っ直ぐに青木を見つめる。
「青木にはメールで言ったけど、俺にできることはなんでもするよ」
「だって。青木どうする?」
固まっている青木に代わって藤井が繋いでくれる。
「あ……えっと。血の相性が、良くないと戻しちゃって…」
「相性がいい血はなかなか見つけられないんでしょ?」
「お、おう。んで、その…」
久しぶりに話した幼馴染を襲った――と言うと少し語弊があるが――、しかも自分のことを好きな相手を前にうまく話せなくなってしまう。
「緋山がいいなら、その、平気なら」
「うん、なに?」
ちゃんと話せていない青木のことを優しい眼差しで見つめながら頷く緋山。
「ときどき、血をいただきたくて」
「よろこんで」
緋山が被せ気味で答えると、吸血鬼二人は驚いた顔をした。
「よろこんで⁉︎」
防音の部屋を突き抜けそうなほどの大声で聞き返す藤井を煙たそうに青木は見てから緋山に目線を移す。
「まじでお前さ、わかってる?」
「うん、青木のためになる」
「もー、ばかじゃん。殺しちゃうかもだよ?」
本当に俺のことが好きなんだ、と実感した青木は照れ隠しを含めて冗談ぽく言った。
「それでもいいよ」
「おほー、あはっ、よかったじゃん青木ー」
若干引き気味で、しかも棒読みでそう言いながら、藤井は青木の肩を叩いた。
「あ、リヒトから電話だわ。ごめん」
突然鳴り響いた着信音に驚く青木をよそに、藤井は小窓に映し出された名前を冷静に確認して、部屋を出て行った。
「緋山、本当にいいの?」
「俺の気持ちも知ってるでしょ?」
「まぁ。だからこそ嫌かなと思ったんだけど」
――嫌なわけない。どんな形でも好きな人から求められて嫌だなんて思うわけない。歪んでいるかもしれないけど――
青木の目に映る緋山は嬉しいとしか思っていないようだった。
「俺が緋山のこと、餌みたいに思っても?」
「思ってるの?」
「思ってるわけない。けど、理性が……」
「理性が保てないほど求められて、嬉しくないわけないよ」
「へ、へ、変な言い方すんな」
思ったことをそのまま言っているだけの緋山も、改めてこの言葉だけ聞いたら結構なことを言っていると気づいたようで急に恥ずかしさに襲われる。
二人して頬を赤くして俯いていると、戻ってきた藤井に「何してんだ」と怒られてしまった。
「今からリヒト入ってくるけどいい?」
「うん、俺は大丈夫」
「俺も。じゃあこの話終わりな」
山吹のために席を詰めながら荷物や飲み物も移動させる。
「結局パートナーになる、でいいの?」
「パートナー⁉︎」
藤井の一言に、普段冷静でクールで何を考えているのかよくわからない緋山が驚いて声を上げた。
「あぁ……その、ときどき血をもらうっていう、そういう相手ってこと」
青木が説明すると緋山は先走った自分の考えに恥ずかしくなったようだった。
「お互いに照れるのなに?」
「俺が青木のこと好きだから……かな」
なんて、緋山は口元を両手で隠しながら言った。何を暴露してんだ、と青木は頭を抱える。
「あ~、じゃあ尚更パートナーがいいじゃん」
パートナーになれば、他の吸血鬼から狙われることがほぼなく人間側にもメリットがあると藤井は言った。
「ひ、緋山がいいなら、パートナーになって欲しい……です」
「よろこんで」
緋山がまた被せ気味で、さらには満面の笑みで返事をすると、藤井は若干引きながら小さく拍手した。
届いたジュースを飲みながら藤井は緋山に話しかける。
「うん、藤井もなの?」
「やっぱり気づいた?」
「うん、まぁ。話聞いてるうちに、そうなのかな? とは」
青木は何だか気まずそうに俯いたまま口を開かない。
「俺は記憶操作もできるんだけど、緋山はどうしたい? 記憶を消して、なかったことにもできるよ」
藤井がそう聞いたが緋山は大して驚きもせずに何かを考えているようだった。少しの間をおいてから藤井と青木に問いかけた。
「それだと、青木はどうなるの?」
「えっ?」
久しぶりの青木の発言は消え入りそうなほど小さかったが、風が起こりそうな勢いで頭を上げた。
「あんなフラフラになるってことは、血が必要なんでしょ?」
青木から求めてもらえる、という緋山にとって激アツ案件をなかったことになんてできない。というかしたくない、という強い思いで真っ直ぐに青木を見つめる。
「青木にはメールで言ったけど、俺にできることはなんでもするよ」
「だって。青木どうする?」
固まっている青木に代わって藤井が繋いでくれる。
「あ……えっと。血の相性が、良くないと戻しちゃって…」
「相性がいい血はなかなか見つけられないんでしょ?」
「お、おう。んで、その…」
久しぶりに話した幼馴染を襲った――と言うと少し語弊があるが――、しかも自分のことを好きな相手を前にうまく話せなくなってしまう。
「緋山がいいなら、その、平気なら」
「うん、なに?」
ちゃんと話せていない青木のことを優しい眼差しで見つめながら頷く緋山。
「ときどき、血をいただきたくて」
「よろこんで」
緋山が被せ気味で答えると、吸血鬼二人は驚いた顔をした。
「よろこんで⁉︎」
防音の部屋を突き抜けそうなほどの大声で聞き返す藤井を煙たそうに青木は見てから緋山に目線を移す。
「まじでお前さ、わかってる?」
「うん、青木のためになる」
「もー、ばかじゃん。殺しちゃうかもだよ?」
本当に俺のことが好きなんだ、と実感した青木は照れ隠しを含めて冗談ぽく言った。
「それでもいいよ」
「おほー、あはっ、よかったじゃん青木ー」
若干引き気味で、しかも棒読みでそう言いながら、藤井は青木の肩を叩いた。
「あ、リヒトから電話だわ。ごめん」
突然鳴り響いた着信音に驚く青木をよそに、藤井は小窓に映し出された名前を冷静に確認して、部屋を出て行った。
「緋山、本当にいいの?」
「俺の気持ちも知ってるでしょ?」
「まぁ。だからこそ嫌かなと思ったんだけど」
――嫌なわけない。どんな形でも好きな人から求められて嫌だなんて思うわけない。歪んでいるかもしれないけど――
青木の目に映る緋山は嬉しいとしか思っていないようだった。
「俺が緋山のこと、餌みたいに思っても?」
「思ってるの?」
「思ってるわけない。けど、理性が……」
「理性が保てないほど求められて、嬉しくないわけないよ」
「へ、へ、変な言い方すんな」
思ったことをそのまま言っているだけの緋山も、改めてこの言葉だけ聞いたら結構なことを言っていると気づいたようで急に恥ずかしさに襲われる。
二人して頬を赤くして俯いていると、戻ってきた藤井に「何してんだ」と怒られてしまった。
「今からリヒト入ってくるけどいい?」
「うん、俺は大丈夫」
「俺も。じゃあこの話終わりな」
山吹のために席を詰めながら荷物や飲み物も移動させる。
「結局パートナーになる、でいいの?」
「パートナー⁉︎」
藤井の一言に、普段冷静でクールで何を考えているのかよくわからない緋山が驚いて声を上げた。
「あぁ……その、ときどき血をもらうっていう、そういう相手ってこと」
青木が説明すると緋山は先走った自分の考えに恥ずかしくなったようだった。
「お互いに照れるのなに?」
「俺が青木のこと好きだから……かな」
なんて、緋山は口元を両手で隠しながら言った。何を暴露してんだ、と青木は頭を抱える。
「あ~、じゃあ尚更パートナーがいいじゃん」
パートナーになれば、他の吸血鬼から狙われることがほぼなく人間側にもメリットがあると藤井は言った。
「ひ、緋山がいいなら、パートナーになって欲しい……です」
「よろこんで」
緋山がまた被せ気味で、さらには満面の笑みで返事をすると、藤井は若干引きながら小さく拍手した。
20
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる