思いつきエロ短編集

色葉ロイ

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配達のお兄さん(縦読み推奨)

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 最近は便利になったもので、どんなものでもポチッとすれば家に届く。なんて素晴らしい世の中なんだろうか。
「うわー、こんなのもあるんだ……迷う」
 俺はネットでカメラの付属品をいろいろと漁っている。カラーレンズ使うとおしゃれに撮れるし、種類も多いから楽しい。
 顔出ししてないカメラマンなんだけど、結構売れている。声だけの出演をしてから、声でバレてまうから「外出するなら誰かと一緒か一言も喋らないか、どっちかにして」とアシスタントに言われてしまった。

 ◇
「お前の声、特徴的なんだよ」
「じゃあ隆太くん一緒に買い物行ってよ」
「嫌だ。俺の恋人嫉妬深いんだよ」
 隆太くんは俺のアシスタントをしてくれている。大学のサークルでの活動中に本を読んでいる姿がすごくかっこよくて「撮らせて」から始まった。だけどその時から一緒にいる恋人が怖いんだよな。嫉妬深いというか、なんというか。
「あ、ほら。帰ってこいって」
 見せつけてきた画面には「たむ」と書かれていて「どうせ秋斗だろ、早く帰ってこいよ」と表示されていた。
「田村さん怖い……仕事なのにさ」
「今の時代宅配でいいだろ、ネット注文しろよ」
「んあ! その手があった‼︎」
「今は返品できるのも増えてるし、いいんじゃね? じゃあ帰るわ、このデータやっておくね」
 そう言ってフィルムが一本入ったボトルをカタカタと揺らしながら靴を履いて、そそくさと出ていってしまった。実際にデータ化してくれるのは田村さんなんだけどね。

 ◇
そこからネット注文に変わったんだけど、本当に便利で驚いた。サイズが違うとか、思ってたのと違ったとき、返品できる。こっちのわがままなのになんて優しい世界……

 ――ピンポン――
 ん? 今ネットサーフィンしてるのに、何だったっけ。
「はーい」
「シロネコです」
 シロネコと言って配達してくれるこのお兄さんは最近ここの地域に配属になったらしい。ジパング運輸という会社で、愛称はシロネコ。マークが可愛い!
「いつもありがとうございますっ」
「ここにサインを」
「はい~」
「どうぞ」
「ありがとぉございますっ」
 ガタイが良くて無愛想なお兄さんだけど、箱の持ち方とか渡し方とかとても丁寧で絶対いい人なんだよな。
「では」
 いつものように帽子のツバを少しつまんでお辞儀をすると、踵を返して走り出そうとした。
「はっ! あぶないっ」
「っ!」
 深く被った帽子のせいで見えていなかったのか、住人とぶつかりそうになったところを俺が引き戻した。
「強く引っ張ってごめんなさい、大丈夫ですか?」
「っ、あ、はぃ…大丈夫、です」
 恥ずかしかったんだろうか、赤くなってさらに帽子を深く被ってしまった。
「あんまり帽子、深く被りすぎたら危ないよ?」
 ツバを持って少しだけ上げると、潤んだ瞳と目があった。
「お? おにーさんかっこいいね」
「っ⁉︎ な、なんですか、あ、その、つ、次が、、あるので失礼します」
 戸惑っていた口調が少しずつ戻っていって、何もなかったかのように去っていった。
「にしてもかっこよかったなぁ。写真撮らせてほしーな」
 初めて受け取り以外の会話をしたけど、かっこいいのに可愛らしい人だったな、と思い出す。

 ◇
「シロネコです」
 インターホンが鳴って、いつものお兄さんの声がする。また来てくれたと嬉しくなり、るんるんで玄関に行く。
「はーい!」
「サインを」
 差し出されたのはスマホの画面で、指で書いてくださいと言われた。
「変わったんだ! 時代だね」
 サインをし終わると、丁寧に荷物を渡してくれて、仕事用であろうスマホをポケットに戻した。その時別のスマホが落ちてしまって反動で画面がオンになった。
 他にも荷物を持っていたから代わりに拾おうとすると、ロック画面にはこのお兄さんと派手な髪色の綺麗な男性がすごい笑顔で写っていた。
「ん? 綺麗な人だね! 彼氏さん?」
「え?」
「この綺麗な髪色の人! 素敵だね」
「え、あ……ああ。はい」
 変な返事をするなと思った直後、普通は彼氏とか聞かないのか、と気が付いて内心焦ってしまった。
「偏見とか、ないんすね」
 差し出したスマホを受け取りながらお兄さんはそう言って、少し恥ずかしそうに、でもなんだか悲しそうにポケットにしまった。
「山田……さん? 今度時間ある?」
「は?」
「俺カメラマンなんだけど、山田さん綺麗だから写真撮りたくてさ?」
 不在票やら今受け取った荷物のラベルやら、名前が書いてあるのは何度か見ていたから呼んでみた。驚いているみたいだけど、ちゃんと話は聞いてくれるみたい。
「声でずっと気になってたんすけど、福島さんってあのカメラマンの福島さんですか?」
「えぇっ!?知ってくれてるの!?」
「さく……彼が好きみたいで、よく見てて」
「うれしいなぁ! じゃあさっ、彼氏さんと一緒にカップルフォト撮る?」
 さっき見えた二人の笑顔、すっごく綺麗だったし、趣味で撮ってあげたいな、なんて。ストリートスナップみたいにさ。
「いや、でもお金、そんなないんで」
「いらないよ! こっちからのお願いだし」
「秋斗、なにしてんの?」
「あぁん! 隆太くんっ! このお兄さんね、山田さんていって、彼氏さんも綺麗だから写真撮らせてーってお願いしてたの!」
 隆太くんが小さなバッグだけの軽装で現れて、現像してくれた写真かなぁと思っていると、山田さんが仕事中なので、と帰ろうとしてしまった。
「もし時間あったらでいいんで。お金いらないですし、よかったら」
 最高のアシスタントさんじゃん! しれっと俺と隆太くんの名刺二枚渡してた。嬉しくてドヤ顔してたら、なんでお前がドヤ顔してんだ、とおでこをコツンと叩かれた。
「プロでもたくさん練習したいのー!」
 大きく手を振りながらそう伝えると、ちょっと困ったように笑いながら次の配達先に向かってしまった。
「声デカすぎ、家バレるからやめろ」
 そのままお説教タイムになってしまって、配達の人が言いふらしたらどうするんだとか怒られてしまった。さすがに個人情報保護で言わないだろうけど、わからないもんね。
「田村さんは? 大丈夫?」
「下で待ってるからこれ持ってきただけ」
 直後電話が鳴って、遅いんだけど、と漏れて聞こえてきた。田村さん声でか。
「じゃ、帰るわ。さっきの人から連絡きたら俺にも言えよ?」
「はぁーい」
 パタンとドアが閉まった音がして、届いた荷物も開けずにぼーっとする。山田さんのスマホで見た二人の笑顔が焼きついていて綺麗で撮りたくてたまらなかった。

 ◇
 結局連絡はないまま、何週間がすぎ、次に会ったのは配達してくれた時だった。
「サインを」
「ねえ、写真嫌い?」
「……仕事中なので」
「連絡くれなかったじゃん」
 仕事中だ、とすぐに行ってしまいそうだったので、咄嗟に腕を掴んでしまった。
「っ、時間指定、とかもあるので離してください」
 筋肉すごいのに振り払おうとせずに、耳が赤くなってる。かわいいな。
「何時に終わるの? 今サインしないから今日の一番最後に再配達お願いします」
 配達員さんには迷惑な話だろうけど、どうしても山田さんのことが気になって、無理やり押し返した。
「……わかりました」
 え? わかりました? いいの? 彼氏に怒られたりしない?
「時間、わからないですけどまた来ます」
 自分からあまり話してくれない印象だったのに、そのとき少しだけ表情が柔らかく見えて嬉しかった。

 ◇
 ――ピンポン――
 この音で喜んでモニターを見るとお兄さんがいた。でも仕事とは違う帽子だった。
「荷物、です」
 ささっとサインをして受け取って、部屋に迎える仕草をすると、「え?」と戸惑った顔をした後帽子のツバを持って顔が見えないくらい下げてそのまま入ってきてくれた。
「ん、あの」
「んー? コーヒー飲む?」
「あっ、じゃあ、はい……」
 なんで連絡してくれなかったのかを一番聞きたかったのに、今は全然違うことばかり考えてしまう。なんですんなりオッケーしたのか、なんで制服じゃないのか、なんで入ってきたのか、何か話したいことがあるのか、気になって仕方がない。
「どーぞ」
 コーヒーを机に置くと、小さく会釈をして飲んでくれた。蚊みたいな小さい声で美味しいだって。かわいすぎるよね……
「色々聞きたいことあるんだけど……」
 いろいろ聞くと、汗臭かったのでシャワーを浴びてから来たことを教えてくれて、そこから少しずつ話してくれた。
「自分の家に福島さんの荷物置いて、トラック戻してから来ました」
「手間かけちゃったね、ごめんね」
「いや、えっと……」
「話したいことは? なぁに?」
 レールを敷いてあげると話しやすそうに思えたからこちらから質問をしてみる。
「スマホの人……は、元彼です」
「そうなんだ」
「元彼というか、付き合ってなかったのかも」
「なんで話してくれるの?」
「福島さん、偏見がなくて。俺周りには言ってないから」
 話せる人がいなかったから、つい甘えてしまったと、謝ってくれた。誘ったのは俺だし、謝らなくてもいいのに。
「あ、それで、写真の件はできないなって」
「それならすぐ言ってくれたらよかったのに」
「すごく、嬉しそうな顔……してたから」
 話しながらすぐに泣きそうな顔になるのが可愛くて、帽子を取りたくなった。
「っ? なんですか」
 ビクッと怯えたように縮こまる彼が小動物みたいで可愛くて、なぜだか抱きしめたくなった。
「かわいいね、抱きしめてもいいかな?」
「なっ、え? なんでっ」
 返事も聞かないままぎゅーっと抱きしめると、可愛らしい声の嗚咽が聞こえてきて、寂しかったんだなーと思った。
「っ、ごめんなさい、肩濡れちゃった」
「いいよ、寂しかったの?」
「ん、あったかくて、なんか勝手に」
 なんでそんなえっちな顔するの? 誘ってるのかなって勘違いする。胸の前で両手握りしめて可愛いし。
「んっ⁉︎  ふくしむぅ、ん」
 気づいたらキスしてしまっていて、でもちゃんと応えてくれる。かわいいじゃん。
「下の名前、なんて言うの?」
「ひっ、ひかる」
「ヒカルさん、この先してもいーい?」
「ん、福島さん、タチ……なの?」
「俺秋斗。どっちでも、かな」
「アキト……くん、俺こんなだけど、あの」
「ネコちゃんなんだ? じゃあ今日俺はタチだね」
 優しく微笑みながらそう言うと、寂しそうな顔をしながらもちょっと嬉しそうなヒカルさん。元彼(?)と言っていた派手な髪の人は可愛らしかったけど、タチだったんだ。びっくり。
「ん、いーの? こんな、ノリみたいな」
「そういうもんじゃない? こっちの世界って」
 ん……と言ってから黙り込んでしまったからまたキスをしてあげた。
「相性わからないと、先に進めないじゃん?」
 いろんなタイプがいるけど、俺は先に一回シたいんだよね。夜の相性が良くないのに付き合えないから。
 ヒカルさんはずっとむすっとしていて、嫌みたいだったけど、行為自体はすごく求めていて、身体は正直だった。
「んっ、は。アキ、トくんっ」
「ヒカルさん、感じやすいね? かわいい♡」
「あ、まっ……て」
「シャワー入ってきたんでしょ? いいよね?」
 下着の中に手を滑り込ませて握ったり擦ったりすると、ピクピクと腰が動く。
「はっ、はずかし。でんきっ消して」
 本当は見たいから消したくないけど間接照明あるからまあいいか、と電気を消してあげた。
「んっ⁉︎ はっ、なに?」
 電気を消した途端抱きついてきて、ねっとりと俺の体をなぞってきた。
「ずっとシてなくてッ。はやく、シたいです」
「おお、でもほぐさないと。ずっとしてないならなおさら」
 言葉を最後まで言い終わるギリギリで唇を塞がれてそのまま激しくキスをされた。ベッドに傾れ込んで、押し倒す形になって、気づけばパンイチ。2人とも硬くなって擦れるのも気持ちがいい。
「ほんとにいいの?」
 あまりほぐしてないけどいいの? と本当は嫌なんじゃないの? の二つの意味を込めて聞いたのが、ちゃんと伝わったみたい。
「ん、相性……だいじ、と思うから」
 でも顔に出ちゃってて、本当は付き合うとかそういう確証が欲しいらしい。
「相性よかったら、付き合ってくれるの?」
「えっ?」
 なに? その、いいの? みたいな顔。そんなん可愛すぎるやん。
「そっかぁ。じゃあ、確かめないとね?」
「んっ……ぁ……っ」
「んー? もしかして準備してきたの? えっちだね」
「はっ、あ……アキトくんッ、おっきぃ」
「あはっ、締まった、ここすきなの?」
「んぁっ、あ、だ……めッ、だめッ♡」
 だめという割に腰動かして、えっちな人だ。
「なんか溢れてるよ? かわいいね」
 頭を撫でると嬉しそうに擦り寄ってくる。
「んぅ、ふ……ぁ、あぅッ」
 筋肉質でガタイが良くて俺よりも背が高いのに、弱々しく俺の下でないてるのが可愛くて可愛くてたまらなかった。
「ぁ……だ、めっアキくんぅッ♡はぁっ」
「前触ってないのに……相性いいね?」
 その言葉に嬉しそうに微笑んで、期待した目で俺のことじっと見つめてくる。
「付き合おっか?」
「うんっ、ん、はっ、はげし、んあッ♡」

 ◇
 またインターホンが鳴って、画面にはヒカルさん。いつもの服を着て、荷物を持っている。
「シロネコです」
「どうぞ~」
 少しして玄関の前のインターホンも鳴った。ドアを開けると無愛想なヒカルさん。
「サインを」
「はぁい」
「ありがとうございました」
 何もなく去ろうとするヒカルさんの腕を掴んで引き寄せると、一気にメスの顔になる。たまらなくかわいい。
「っ!」
「夜、楽しみだね?」
 頬にキスすると、耳だけ赤くして小さく頷いて、帽子を深く被った。
「でっ……では、失礼します」
 平静を装って踵を返したけど足が絡まって転びそうになる。それを抱えてあげたら、また前みたいに赤くなって瞳が潤んでいた。
「……あ、ヒカルさん、もしかして一目惚れ?」
「っ……はぃ、ごめんなさぃ」
「悪いことじゃないよ、俺もだし」
 イシシッと意地悪く笑うと、呆れたような笑顔で俺を見てくれた。初めて見る顔で可愛かったけど、今は仕事だもんね。
「帽子は深く被ってね?」
「⁇」
 ヒカルさんは小さくお辞儀をして仕事に戻って行った。またここに来るんだけどね。
 前は帽子深く被ったら見えなくて危ないよと言ったけど、あんな可愛い顔するのに見られたら困るよね。顔見られた方が危ないじゃん? 狙われちゃう。
「もう俺のネコさんだから」

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