万永千年宇宙浮遊一万年後地球目指

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一万年後及現在

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<なんだこのガラクタは?>
<誰かのおもちゃ…にしてはおもちゃよりひどいな>
<どうせ過去の遺産だろ>
<ちょっと遊んでみるか>
<…動かないな>
<チャージ不足だろ>
 
『ピリッ!』
 
<…だめだな>
<壊れてるみたいだ>
<ちょっと貸して>
 
『ヒュン』
 
<はい。どう?>
<ちょっと待ってて>
 
『ピッ』
 
「起動まで五秒」
「四」
「三」
 
<直ったみたいだ>
<動くっぽいぞ>
 
「二」
「一」
「起動」
 
『…ここは…どこだ…あれ…追いかけてきた子供や大人は…あれ…どこだ?ここ』
 
 万永は最後の記憶を呼び起こす。
 
『そうだ…バッテリーが切れたんだ。けど活動停止たはずじゃ…』
 
 万永はレンズを動かそうにも故障しており、浮遊する事すらできない。
 
<なんか震えているな>
<ちょっと見てみるか>
 
 万永は自分の意志とは別に内部の配線や基盤類が自動で動いていることに気づく。
 
<どうだ?>
<分からない。たぶん大丈夫と思うけど>
 
 万永は球体に備え付けられている機能がすべて修繕されていることに気づく。レンズを動かすこともできれば、浮遊機能も問題なく動作する。
 
『一体何が起きたんだ』
 
<直ったみたいだな>
 
 万永は浮遊し、状況を把握するために周囲を見回した。
 
<何か観察しているのか?>
<観察するおもちゃかもしれない>
<こんな球体を使ってか?>
<レンズもあるし、違うか?>
<構造いじってみたけどお粗末なものだったぞ>
<おもちゃだったらそんなもんだろ>
<にしても。劣化版って感じか>
 
 万永は驚愕した。そこはすべてが白かった。色というものが存在していない。地面も白く、建物はすべて同じ形を成していて、角というものが存在しない。唯一違うのはその大きさである。窓もない。扉もない。白い粘土のようなものしかないのだ。目の前に広がる風景は、まるで異世界のようだった。
 万永は誰かがこちらを見ていることに気づくと、レンズをその方向に向ける。そこにはまた異質なものがあった。
 白い無機質なようなもの。塊が二体ある。しかしそれらは動いているではないか。
 
『…ここが一万年後の地球?』
 
 その塊は何か会話しているように思えた。万永はどうにかしてコンタクトを取ろうと、浮遊位置を下げて近づく。
 
<なんか近づいてきたぞ>
<ペット用のおもちゃか?>
<何か電波を発しているみたいだ>
<仕方ない。追加してみるか>
 
 塊の一つが万永を掴み、また内部をいじり始める。すると、万永はその塊とコンタクトを取ることに成功する。
 
『ここはどこだ?』
<お、聞こえる聞こえる>
<どこって?箱庭さ>
『箱庭?』
<知らないの?どこで作られたんだこれ?>
<さぁ?>
『ここは地球?』
<地球?知ってる?>
<いや。ちょっと待って>
 
 塊の一つが何かをし始める。その行動を万永は表す言葉を持っていない。
 
<分かった分かった。かなり昔に滅んだ惑星だ>
<ってことは、このおもちゃは地球ってところで作られた?>
<じゃない?>
『その通りだ。私は地球で作られ、一万年後の地球を観測するために存在する』
<観測器か>
『ここはどこだ?惑星名は?月?金星?』
<なんだそれは?>
<言っただろ?ここは箱庭だ>
 
 万永は知る由もない。ここは当時発見されていない未知の惑星。いや、発見はされていた。それも万永自身にて。
 地球によく類似した星であり、人類未開の地。その星がどこにあるのか。地球から遠く離れた2055.9billionkm先にある。新惑星。それがここ、箱庭であった。
 ただ発見したときとは大きな変化が起こっている。無理もない。発見したときは二百年前。地球時間では二千年前。それから五倍の年月が経過している。
 
『あなた方は新人種というのか?』
<人種?>
<俺たちは俺たちだ>
『…他の者は?』
<他?さぁ>
<いるんじゃない?>
『なぜピンとこない?』
<俺たちは増えることもあれば、減ることもある>
<そうそう。俺たちもこのおもちゃを見つけて増えたしな>
『どういうことだ?兄弟なのか?』
<兄弟?>
<俺たちは全部で俺なんだよ>
 
 万永はその言葉の意味を理解できなかった。言葉に詰まっていると、驚くべき行動を見せてきた。
 
<まぁ見てなって>
 
 そう言って、塊は勝手に分裂していき、それを繰り返していくと、みるみるうちに塊は増えていった。
 
<すべて俺であり、俺たちなんだ>
<意識は個々にあり、意思も共有できる>
<この建物もそう。地面も>
<全部が俺であり、箱庭は俺なんだ>
『…アメーバってことか?』
 
 原生生物の一種であり、単細胞生物のグループに属している。アメーバは細胞膜で覆われたプロトプラズムという粘液状の質量からなり、その形態は不定形で変化することが可能である。アメーバは細胞膜を流動的に変形させることで移動し、周囲の環境から栄養を摂取している。だからこの塊は様々な形へと変貌し、自由に分裂し、個々の意志を持つ。そして環境から生きる原料を得ているのだ。
 一万年後の地球は滅び、誰かが万永をこの惑星へと運んだことは確実だ。なぜなら万永は室町時代に逆行し、そして今はこの箱庭に存在しているから。
 これが万永の見たかった光景かは分からないが、当時を知っている万永にとっては理解できない状況であるのは確実であった。
 ここ箱庭ではひとつの巨大なアメーバが活動をし、結果としては集団で生活を行っている。それは人類の進化なのか、科学の発展なのか、その答えを出すのは不可能だろう。
 そしてここ箱庭はその名の通り箱である。当時観測された形状とは異なり、密閉された箱のようなものが宇宙に浮いている。では宇宙はどうなっているのか。それは知らない。なぜなら箱庭に住む彼らにとって、そんなことはどうでもいいからだ。
 万永は箱庭の中で巨大なアメーバが活動し、集団で生活を行っている光景は、人類の進化や科学の発展とは異なるものであり、万永の知る地球の歴史とは異なる進化の過程がここに存在していることに衝撃を受けた。
 
『これが私の知りたかった一万年後…』
 
 これに万永は満足したのか。それでも望んでいた一万年後。場所は地球ではなかったが、この現状は誰しもが予想をできないことである。ただこれを万永だけしか知らないという事実は、ただの自己満足にすぎない。
 
<また地球に戻りたいか?>
『…え?どういうことだ?』
<あれか!誰も興味ないやつ>
<そうそう。で?戻りたい?>
『よく意味が分からない』
<まぁまぁ>
 
 塊はまた一部を分裂させると言った。
 
『逆行だ』
 
 そう言って、万永は小さなワームホールに吸い込まれていった。





 
 万永は自室で窓を見ながら呟いた。
 
「もうやりたいことはやった…過去は書物を読み漁ればいいが、未来となると…」
 
 適当にパソコンを操作すると、
 
「省エネ技術、再生可能エネルギーへの転換。中産階級が大半を占め、貧困層は一部にとどまる…IT革命のように細部を磨きあげて効率化するといった質的発展の仕方を辿るか…つまらん」
 
 万永は誰しもが予期できない未来を知りたかった。
 
「一万年後はどうなっているのか…」
 
『カコンッ』
 
 後ろで金属音が鳴ると、万永は振り返る。
 
「何だこの球体は?」
 
 そう言って、万永は球体を手に取った。身に覚えのない球体を確認し、中にデータが保存されていることに気づくと、試しに確認をする。
 
「…何だこの白い世界は?」
 
 その光景の異様さと不気味さに惹かれる。
 
「…これは作り物なのか。未来からのメッセージなのか」
 
 鳥肌を立て、身震いする。
 
「面白い!一万年後!この目で見るとしよう」
 
 そうして始まった。万永の一万年後地球計画が。
 
 万永は側近を集めて言った。
 
「一万年後の未来をこの目で見たい」と。
 
 側近たちはこの言葉に困惑しつつも、
 
「なぜ一万年後の未来を見たいのですか?」
 
 と聞くと、
 
「未来は誰しもの憧れだ。島を買った、宇宙にも行った。残りはなんだ?未来しかないだろう」
「ですが、なぜ1万年後なのですか?」
「この目で確かめたいからだ!」
「何をですか?」
「本物かどうかをね」


 それからどうなったのだろうか。分かることは時間に歪が起き、未来には多少の変化が生じている。その生じでどうなるのか。それはひとつ前の未来を知るものしか分からない。それを知っている者はいるのか。もしかしたら生前の記憶を持って生まれたとしたら、知ることも可能かもしれない。
 
『未来を知る』
 
 ある特殊能力を持ってして、未来を視ることができる者がいたらその限りではない。生前に記憶を失っていないことを例に挙げたが、その人物が起こした自らの過去の出来事を知っているだけで、もしかしたら未来を知ることとは別の話かもしれない。
 人間の探究心は凄まじい。だからこそ、我々人間は未来を予測したり想像したりすることができ、それはあくまで仮説であり、確実なことでないとしても楽しむことができる。
 未来は常に変化しやすく、予測することは果てしなく困難である。だから今を楽しむのだ。そして未来に思いを乗せて。

 そして、現在…
 
「万永様。アメーバ分子細胞を使い、タキオンの増加率は八十パーセントを越えました。チェレンコフ光の電子素数は六十パーセント上昇中。発射可能まで残り十秒を切ります」
「タキオン始動。チェレンコフ光確認」
 
 緑と青の光が交差し、チェレンコフ光が出現されると、緑の縄のような円状のワープホールが完成される。
 
「万永様。発車準備整いました」
「うむ…」
 
 万永の目の前にあるボタンを押せば、ロケットはワープホールを通過し、宇宙空間に放たれる。そしてカウントダウンは始まる。
 
『3』
 
『2』
 
『1』
 
「発射!」
 
 万永がボタンを押すと、球体はワープホールに向かって動き出し、一瞬でその場から消えていった。急いでモニターで確認すると、球体は宇宙空間に放たれ、二十万キロ先の遥か彼方を浮遊していることが分かった。
 
「おおよそ百年後には往路を終え、もう百年後には地球に静観します」
「二百年…私が生きていることも可能だな。至急地球に帰還する。アメーバ分子細胞を使い、私の細胞を分裂させる」
「かしこまりました」
 
 こうして今日も万永は一万年後の地球を目指して動く。このときの未来ではマクバは最後まで万永に協力して。



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