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断案と憧憬 11
しおりを挟む──とは言え。
(言えるわけねーー………)
がんがんと痛む頭を抱え、こんな時に限って消えていない記憶に苛まれて逸は思った。
確かに敬吾は豪胆だ。
神経質そうな見た目に反して無頓着だし、一方では理知的な質からか許容範囲が広い。感情で拒否反応を示すことが少ないのだ。
だからといって──
(まずなんて言うんだよ……)
もっと好きでいて。近くにいて。心配させないで、気をつけて、もっと触って、ちゃんと寝て、名前を呼んで。それから。
「言えるわけねえー……」
そう言ったつもりだった。
だが喉が枯れていてまともな言葉にならない。
咳き込む逸の頭の中には、うざいとうるさいが巡っていた。
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