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寸志の快感 19
しおりを挟む──激しい呼吸の音。
それだけが、ひしめくように絶え間なく繰り返されていた。
敬吾に至ってはそこに嗚咽さえ混じってしまいそうなほど、快感が強い。
喘ぎのようにも聞こえるそれに、逸は耳をそばだて敬吾の頭を掻き寄せた。
「敬吾さん……」
「……っ、」
呼ぶな、と敬吾は言いたかったが、それすら甘く崩れてしまいそうで口を開けない。
敬吾の表情が見えないだけに、逸にそのあたりの機微は伝わらなかった。
そこで初めて、自分が視界の障りをそのままにしていたことに気付き、今なら除けるがどうしようか──と考えた。そして、するべきではないだろうとも思う。
「敬吾さん」
「! な、っなに」
「……ごめんなさい。腕抜けちゃった」
「──あ、う、うん……」
殊勝な様子で謝る逸は、敬吾の施した制限に抗うつもりはもう無いようだった。
その神妙な態度の通り、自由になったのは腕だけのはず。はずだが──
「お前……見えてないんだよな?それ」
「えっ?はい」
きょとんとした様子の逸は当然だろうとでも言いたげに頷き、バンデージはその頭に医療用品らしくぴったりと張り付いていて隙間もなさそうだ。
ならば──
「……お前はなに?千里眼でも使えんの?」
「はい??」
「……見えてんのかと思った」
「? ああ──」
やっと腑に落ちたらしく笑って頷いた逸はまた、滑らかに敬吾の髪を撫でる。
「そりゃ敬吾さんのことなら──」
──しまった。
そこまで言って、これは──少なくとも今日は──歓迎されないかも知れない、とほんのり背中が冷えた。
しかし、もう大半言ってしまっている。
「……やっぱ嫌でした?」
「え、」
少し驚いて瞬き、逸があまりにもしょぼくれているので敬吾は形にならないながらも慌てて言葉を探す。
「あ、いや……やだっつうか。びびったし恥ずかしいのはある……」
「……そっか」
ほっとしたような逸の口元を見て、初めて思考回路が追いついた。
そうだ、当初は、逸の好きにされるのが癪で──
「………………」
「敬吾さん?」
どうも敬吾が赤面している気がする。
何故だ。
「うるさい」
「えぇ……」
結局はこの男の掌と快感に、なし崩しにされてしまう。
──それに結局のところ、勝てるわけがないのだ。こんなびっくり人間ぶりを披露されて。
「! ッあ、っこら」
「ん……ダメ?」
「ゃ……」
そう言えば今日は、逸の指を感じるのも初めてだ。何も考えられなくなってしまう──
「ふふ、かわいい……」
「お前それっ、取るなよ!ぜったいとんなよ……ッ」
「あはは、どんな顔してるんだろ……」
「想像すんなっ……」
「そんな無茶なー」
──どうせ、勝てないのだ。
見られないのを良いことに敬吾は存分に──、乱れた。
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