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寸志の快感
しおりを挟む「ねーねー岩井くん」
「なんですか後藤さん」
「俺さー、バイっつっても今まで男としたことなかったわけー」
「へー」
「男抱くなら敬吾くんがいいって思ってたからー」
「そーすか」
「そんな同情してくれなくていいんだよ」
「してねーすけど」
「でね?だもんだからこれが普通なのかどうかが分かんないわけ」
「これがって言われても。そんなアブノーマルなことしてんすか?」
「してないよ?してませんけど、ノーマルかと言われると微妙……な感じ……なくらい気持ちいいのね?」
「良かったじゃないすか」
「だからこう……箍が外れるっつーかさー……」
「柳田さん嫌がってるんですか?」
「いや全然。むしろ状態」
「ならいいじゃないすか別に」
「うーー…………、ん……?」
(何をしてんだ一体)
「いやだからね?そちらはどうなのかしら?と思って?」
「言うわけねえだろバカじゃねーーの」
──なら昔の恋人ってどうだったの?
さりげない響きの後藤の声が耳の奥に去来していた。
後藤としては本当に同じ塩梅の、深くも浅くもない程度の好奇心から尋ねた代問だったのだろうが──
こんな風に同じテーブルの上に並べられるとあまりの違和感に胸が悪くなるほど、逸にとって敬吾と昔の恋人とは別物だ。
その辺りを述べることはなくはぐらかして来てしまったが、本当なら「散らかすな」と一言窘めて元あった場所に片付けておきたいほど。
一つは大切に自分の傍らへ、一つは──どこだろう、古い文集や領収書が放り込まれている物入れの中にでも。
そうしてどうせ、ろくな取捨選択もせずまとめて処分してしまう類のもの。
──そういう程度のものなのだった。
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