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ことほぎ 3
しおりを挟む──思った。
思ってそして、それは間違ってはいなかったのだが。
激しく逸に穿たれて、狂ったように啼いている中突如として、最悪の形で敬吾の理性は帰ってきた。
さきほどまでの喘ぎよりも大きく必死に敬吾が逸を諌めている──と言うよりも、懇願している。
「逸っ、逸っ────たのむから!いっかい、やめろってあぁっ、ん……!いわいぃ……っ!」
「……何……?どうしたの、敬吾さん………」
「っあ、いい、っから、待て、ってば!」
「ん……………」
逸の首に縋り付き、命乞いでもするような必死さの敬吾をそれでも逸は取り合わなかった。
こうして喚くようになってから敬吾のそこはやたらきつく締め上げていて余裕など無い上、涙ながらの懇願というのは──
「たまんね……可愛い…………」
「──────」
怖いような薄笑いで自分を見下ろす逸に、敬吾は呆然と顎を落とした。
──この男、聞いていない。一言も。
敬吾がそうして愕然としている間も逸はそれに欠片も気づくことなく腰を振っている。
──そして、全身脱力してしまった敬吾の足の甲が、抵抗から逃れてじわりじわりと持ち上がる。
それに敬吾はまた一挙に慌てた。
「ああっ、逸っやばいんだってやめろってば!!!」
今度はもう、合間に穿たれても反応もしない。
それほど切羽詰まっていた。
が、やはり逸は気にもしない。
「どうしたの……?怖い?」
「は……………?」
やっと敬吾の主張に耳を傾けたかと思えばその囁きはあまりに甘く、楽しげだ。
どうも感じすぎて嫌がっているか何かかと思っているらしい。
そう思い至って敬吾はまた愕然とし、真っ赤になってわなわなと震えた。
「────っ違うバカ!!いいからちょっとやめろってばぁ!」
「あー……いきそう、敬吾さんそんな締めたら……」
「え、っ?い、っ痛………!逸、っ!待てってば……っ」
「んん……ああダメだ、ごめんなさい」
「あ、ゃまんなくっ、………………!!」
──謝らなくてもいい!
やめるなだとか、そういうことでは決してない!
そう心底分からせたかったが、逸の動きは一層激しくなり、もう敬吾も何も言えなくなる。
ただ、耐えた。
「んっ!」
「あー……、敬吾さん……」
「……!ばかっ、そん、な、」
「んん……」
一番奥まで穿ったまま、逸は引くことなく重たく敬吾を突き上げる。
その度敬吾は悲痛に呻き、逸の呼吸は獣のように暴れて敬吾の耳を狂わせた。
何もかも忘れて逸の首を掻き抱く。
「敬吾さん………」
「んんっ──………!」
「ん……………」
耳に直接注がれる、陶酔したような耽美な逸の嘆息。
余韻を愉しむように押し上げられるそこでは逸が痙攣している。
敬吾もとろりと瞼を落とすが、その途端に──
「いぃっ────、………っ!!!!!」
「ん………敬吾さん、」
「うぅあ馬鹿!!!来んな馬鹿っっっどけ!!!!」
改めて腿を押し上げる逸を、敬吾は腹立たしげに罵倒した。
逸は豆鉄砲でも食らったようにぱちくりしているが、まだ尾を引いている快感と充足感がフットワークを鈍らせている。
「……なに?どうしたんですかさっきから、イッてるの?」
「馬鹿か死ね!!!」
「えー………」
「ひとがっ…………」
そう吐き捨てるように言って敬吾はまだ浸りたがる自分の体を無理矢理に叩き起こし、逸を押しのけ起き上がった。
微かに縮んだ逸のそれが抜けて腰がざわついたが、それにも構っていられないほどの──、激痛。
逸がきょとんとしている間に敬吾は逸の腿に乗っている我が脚を引き寄せ、その不自然に持ち上がっている脚の甲を庇った。
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