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残響
しおりを挟む「じゃあ敬吾くん、悪いんだけどお願いね。そんな重く考えなくていいから、さらーっと」
「あ、はい」
慌ただしく腕時計を見ながら席を立ち、軽く手を振って去って行く篠崎。
その後ろ姿を見送り、手元のマグカップの真っ暗な水面を見つめて、敬吾はため息をついていた。
篠崎の頼みごとは、本人としては本当に、気軽なものだったろう。
重要な話ではあるが詮索や強要のたぐいではない、ただ耳に入れておきたいだけだというような。
だが──。
(……俺が言う、ってなるとな………)
何か他の含みを持たせてしまいそうで。
今までに全く勘案したことのなかった事案だからこそ、戸惑ってしまっている。
首筋に冷えた手でも当てられたような、思わず背の縮むような少しの焦燥を敬吾は感じていた。
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