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安心させて 13
しおりを挟む「やぁーーだぁーーー」
「っもーーーー」
「今日ーーーは行っっちゃやーーーだぁあああーーーー」
「あーのーーなーーーーー」
敬吾の目指す玄関までほんの1メートル、敬吾の腰に抱きついて駄々をこねている逸は、最終的に金色夜叉さながら蹴り飛ばされた。
無論、本気でバイトをサボれなどと敬吾に頼んでいるはずもなく、逸はわざとらしく拗ねた顔をしながらも後追いはせずにいる。
それを敬吾も分かっているが、もしバイトでなく大学の、少々余裕のある講義だったなら絆されていたかも知れない……と思って敬吾は空咳をした。
昨夜、かなり抽象的ではあったが褒めてやったことで逸は──やや意図的に──幼児返りしてしまっている。
「いい子で待ってなさい!」
「…………はぁい」
しゅんと正座している逸をわざと呆れさせた表情で眺め、敬吾はわしわしとその頭を撫でてやった。
その手を捕まえて逸が立ち上がり、そっと敬吾を抱き寄せる。
甘えるように首元に、くしゃくしゃと頭がすり寄せられた。
「………今日」
「………………」
寂しげに掠れる逸の声が妙に色っぽくて、敬吾は危うげに目を細めた──が。
「……豚汁作って待ってたら褒めてくれますか?」
「おお、褒める褒める」
「あと小田巻蒸しも………」
「めっちゃ褒めるめっちゃ褒める」
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