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後藤の躊躇

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「──あれっ?こんにちは」
「………………?」

朗らかな笑顔で挨拶をされ、敬吾は久しぶりに固まっていた。

ここはバイト先だし相手はスーツ姿だから問屋やメーカーやセンター内の関係者だろうが、その顔に全く覚えがない。

ビジネスマンらしいが幼くて背丈の小さい、人畜無害な、まるでハムスターや小うさぎのような──

「……………あぁっ!!?柳田さん!!!!?」
「やっと分かってもらえたー!」

本当に社会人だったのかと驚愕している敬吾を、柳田はにこにこと笑いながら見ていた。

「この間はお騒がせしちゃって……」
「いえいえ……あ、今更ですけど岩居です。あー、この間いたもう一人も岩井なんで……俺は岩居敬吾です」
「敬吾くん!よろしくお願いします」

お互い会釈をし合っているところに幸が休憩から帰ってきた。
その幸にも挨拶をし、柳田は話を仕切り直して名刺を差し出す。

「実は僕こういう者でして」
「……えっ、スミダさんの社員さんだったんですか!」
「そう、何年か前先輩について少しの間ここの担当してたんです。別件で近くまで来たのでご挨拶にと思ったんですけど……アポなしなので」
「あー、すみません……店長今日2号店の方行ってて」
「そっかあ、いや急に来てしまって」

恐縮して笑う柳田はやはり笑顔が人好きする。
すっかり和まされてしまった幸は時計を見上げた。

「敬吾さん、お知り合いだったら少しお話してきても大丈夫ですよ?暇だし」

どうしたものかと敬吾が戸惑うと、幸は今度は柳田に笑いかける。

「この人半ば店長みたいなものなのでごゆっくりどうぞ!」
「あはは!そういえば僕がお世話になってた頃もそういうスタッフさんいらっしゃいましたね」
「篤さんとかかな?」
「ああ、そう!八幡篤くん!」

さすが営業マン、よく覚えているものだと目を剥きながら、敬吾は少し柳田と話をしてみたくなっていた。

「──じゃあ、柳田さんコーヒーでも飲みましょうか。俺別に何の決定権もないですけど」
「うん、じゃあ少し新商品のご紹介とか……まあ僕も担当ではないんで資料お渡しするだけの感じですけど」


互いに苦笑しながら幸に後を頼み、敬吾は柳田と連れ立ってフードコートに向かった。







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