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祝福と憧憬 7

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「敬吾さん今頃ごちそう食べてるのかなー、いいなあ」

客足が落ち着き、幸が呟くと篠崎が笑った。

「いやあ、お姉さんの式でしょ?ゆっくり食べてられないと思うよー」
「そうなんですか?」
「お酌したりされたりさー、男泣きしたりさー」
「敬吾さんがぁ!?泣かないですよー!」
「いや、こう迫るものがあるんだってー」
「そりゃそうでしょうけどぉ……」

なんとなくノーコメントを貫くが、逸は内心酌が気になっていた。
自分が酒を飲まないので考えたこともなかったが──

(良いな……敬吾さんのお酌………)
「そう言えば敬吾さんのお姉さんすごい美人なんですよね。写真見るの楽しみだなあ」
「へー、そうなの?」
(でも敬吾さん片手でこう……すげー男らしい方でやりそう)
「そうですよ!ねー、逸くん」
(なんか忘年会みたいな、俺部下みたいな)
「逸くん!」
「えっ!?」
「敬吾さんのお姉さんー!美人だよね?」

幸にべしべしと肩を叩かれ、逸は久方ぶりに現に戻った気がしていた。

「えっあ、そう、すげー綺麗です」
「そうなんだー、俺も後で見せてもらおっと……あ、お客さん引いてるうちに休憩行って来ようかな」

篠崎は何も気にしていないようだが、幸は返事をしつつ横目に逸を睨めつけている。

「行ってきまーす」
「行ってらっしゃーい。……逸くんほんっと敬吾さんいないとダメだねぇ」
「うっ、いや………、すいません」

からかわれ、素直に逸が謝ると幸が破顔した。

「今日帰ってくるの?明日?」
「今日だね」
「良かったじゃない。愛感じるー」
「いやいやそういうんじゃないよ全然」

なにせ相手はあの敬吾である。
泊まる理由はないから帰ってくる、というだけの話だ。
ごく当然のように手を振っている逸を見て、幸はきょとんと意外そうな顔をする。

「……そう?」
「そうだよ」

幸から見れば、敬吾は相当に逸のことを大事にしていると思うのだが。
──もしや、伝わっていない?

「………………」

包材の補充などし始めた逸を見上げ、少々残念な気持ちにはなるものの不躾に自分が踏み入るわけにも行かず。

少し悩んで口を噤んでから、幸は逸を手伝い始めた。



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