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祝福と憧憬 4

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鋭い快感とともに、体中に充足感が満ちる。

大きく息を吐きだして逸は自分の下で薄く目を閉じている敬吾を見下ろした。
疲れ切ったように手足を投げ出し、浅く、薄い呼吸を繰り返している敬吾が愛しくて堪らない気持ちになる。

もう一度、──と言わず二度でも三度でも抱きたいが、脱力して真横を向く喉が痛々しい。

隣に横たわり腕を撫でてやると、敬吾がほっと息を逃がす。
髪を撫で、肩に口付けて過ごしているうち、敬吾が身じろぎして逸の方に振り返った。
逸がその後頭部に手を回し、唇を合わせる。

(あ──…………)

──幸せだ。

横腹をしっとりと撫でられて、敬吾の脚が擦り合わせられる。
気づかないふりをしてやることにして逸は唇を離し、ほっと息を吐き出す敬吾を抱きしめた。

「ん………」

その声が少し眠そうで、困ったように逸は笑う。

「……敬吾さん、今日いつもよりトロトロ」
「うるさい…………」
「可愛すぎます」
「うるさいってば──」

真っ赤になる敬吾をまた抱き締め、その髪に唇を埋めて逸はしばらく目を瞑っていた。

背中を撫でられてまた敬吾の瞼は落ち始めたが、逸の態度が神妙過ぎて気に掛かり、ちらりと覗き見る。

ごく静かな瞳をしていた。
無意識に息を飲み、視線を吸い寄せられてしまうほど。

「────、」
「明後日………」
「えっ?」

目線は全く動かないのに声だけがぽとりと落ちて、敬吾は驚きかばりと逸を見上げた。
ゆっくりとそれを見返して逸は目を細める。

「──………」
「……綺麗でしょうねー、お姉さん」
「え…………」
「写真いっぱい撮ってきて下さいね」

まるで聖人か何かのようだったいっそ物悲しいほどの微笑みが、気安く崩れていつもの見慣れた笑顔になった。
敬吾はぱちぱちと瞬き、狐に化かされたような表情のままじわじわと頭を下ろす。

逸は気にすることもなくまた頭を撫で、髪に口付けた。

「写真、敬吾さんのも」
「……お前それ、今言うか………」

僅かに赤らみ、困ったような敬吾の表情を覗いて、それは一体どの意味でだろう──と逸の脳裏に影が過る。

考えるのをやめ小さく謝って唇を合わせると、敬吾の手が背中に回る。
眉根を寄せて微笑みながら、逸は頭の奥にこびり付いた影を無視することにした。

今だけはこうして、全てを放り投げてこの人に触れていたい。



そう思ったことすらも意図して忘れ、逸は食らいつくように敬吾の上に覆いかぶさった。








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