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彼の好み リベンジ 10

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「逸……………っ逸ぃ、それっもう、やだ……」
「それ?ってどれ?」
「ん…………っん──……!っだから、これ……ぇ」
「んー…………?」

自分の脚の間に座って腰を捉えている逸の手首を握り、とろとろと涙を零しながら敬吾は訴えていた。
が、その敬吾を眺めるのが楽しくて仕方がない逸は察していても汲んではくれない。

ついさっきまで狂ったように突き上げていたそこを、今はゆったりとーーと言おうか、ねっとりと抜いては押し上げ抜いては押し上げしている。

その激しさにごまかされない往復が、嫌と言うほどはっきりと存在を主張し、敬吾に絡みつく余地を与え、狂ってしまうことを許してくれない。

「ん……………っ!あぁ……──」
「敬吾さん……、ほんと可愛い………」
「逸──……お願い………だからー……」

温かい波に浚われるような快感が、いつまでも鮮烈に敬吾の体を震わせる。

激しい熱を伴わないそれは、あまりに緩やかに蓄積して敬吾を苛んだ。
少しずつ少しずつ絶頂へと迫るのを、その間ずっと思い知らされるようで──

「逸ぃ…………っ」
「んん…………」

泣きながら懇願する敬吾の頬を撫で、逸は笑いかけて子供にするように言い含めた。

「敬吾さん……気持ちは良いでしょ?」
「……でも、……」
「でもって思わないで、浸ってほしいなー……」
「あっ…………」

ゆっくりと、もう先端が食い込んでいるだけというところまで腰を引くと逸は改めて敬吾の上に重なった。
その体温が少し敬吾の心を解く。

「……入れますよ?」
「ん…………っ」
「……ん、すごい絡んできて、気持ちいい………」

熱に浮かされた逸の声が直接耳に触れ、敬吾はその背中に爪を立てた。
逸が僅かに目を顰め、それでも嬉しげに口の端を上げる。

今その爪が食い込んだからにはきっと分かっているのだろうが、敢えて言い聞かせることにした。

「……気持ちいいとこに当たりますよ」
「………………!」
「あー……、凄いきつくなった」
「ん──…………!」
「……全部入った、敬吾さん──………」

陶酔しきった逸の声が間近に聞こえ、張り付いた腹が大きく蠢く。
逸の感じる酩酊がそのまま伝わってくるようで、最後の一欠片が溶けなかった敬吾の理性もその熱に沈んで消えた。

またゆったりと中を抉られ、それに合わせて何度も素直に声が溢れる。

そうして与えられる快感がやっとのことで頂きに達すると、焦らされた性感が昂りきっていてあまりに激しいものになった。

泣き叫んでいるような敬吾の喘ぎに聞き入りながら体を起こし、その中に逸も吐き出す。
激しすぎる快感から敬吾は何度も弛緩しては締め付け、腰が抜けそうだった。

「っあ………敬吾さんやばい、良すぎる………」
「ん────っ、っぁ、あ…………っ逸………っ」

敬吾に腕を広げられ、逸は微笑んでまた体を伏せる。
と、首を強く抱き締められた上に腰に脚も絡まった。

(うおーー……!)

総身で甘えつかれ、逸は驚愕の表情でばちばちと瞬く。
未だ苦しげに溢れる敬吾の声を聞きながら、慰めるように髪を撫でて逸はその雰囲気に浸った。

「敬吾さん、可愛い………」
「はあ………っ、んー………っ……」
「好きです、敬吾さん大好き………」
「っあ、馬鹿っやめ………」
「敬吾さん…………」
「っぁあっなにでかくしてっ──」
「だって敬吾さん凄いきゅってするから………、血ぃ戻んなくて」
「…………………っ!」

しっとりと落ち着いていた逸の呼吸が、気づくと駆け足になっていた──。

「………っ岩井、待って……ちょっと……休憩、させろ」
「ん………、はい」

逸の呼吸から逃げるように敬吾が顔を背ける。
やや落胆気味に、しかし素直に逸は敬吾の横に半身を立てた。

「でも入れたままでもいい……?」
「ん……」

疲れ果てたように敬吾が頷くのを見届けて、逸は敬吾の体を自分と同じように横にして背中から抱き込む。
逸の腕に頭を預けると敬吾も安心したように吐息を漏らした。逸もふっと微笑む。

「……何か食べます?」
「や、大丈夫……」
「ん」

逸の手に髪を梳かれ、腹を撫でられて敬吾は目を閉じた。

そこまで体が疲れているわけではないのだが──。
体の芯の、心と言うか──魂とでも呼ばれるところに近い部分が震えているような感覚。
決して不快ではないのだが感じたことのない感慨に、少し怖気づくような気持ちになる。

「んっ…………」
「ぁ……ごめんなさい」
「うん……」

逸が身じろぎでもしたのか中を軽く抉られる。
そしてまた、ぞくぞくと胸の奥が総毛立つような切なさ。

逸が後ろにいて良かった──今自分がどんな顔をしているか分からない。

蕩けた顔を更に困ったように眉根を寄せて敬吾が唇を噛んでいると、逸の片脚が敬吾の脚を掻き寄せるように絡んだ。

「ぁ………」
「……ごめんなさい、少しだけ」
「んっ……………」

耳元で逸の呼吸はまた熱くなり、耳に首にと口付けられる音が小さく響く。
脚を撫でていた手が内腿に滑り、鼠径部をくすぐって腹へ胸へと上がっていく。

「や………逸………、」

柔らかく全身を揺すぶられて、敬吾はまた何も考えられなくなった。
撫でられる度また温かい熱が滞留して体が撓る。

「敬吾さん……、可愛い………」
「んゃ……逸、あっ、ぁ………」
「敬吾さん、気持ちい?」
「ん………っ気持ち、いぃ…………」
「ふふっ……」


決して激しい快感ではないのに抗いようもなくその熱に引き込まれてしまう。
そうして正気を手放していた間敬吾は喘ぎに喘いで、逸はにやけににやけた。



自分でも知らないうちにまた激しく達して、文字通り果てるように意識も手放して、敬吾がまた自我を取り戻した時にはとっくに夜は明けていた。






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