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彼の好み リベンジ 3
しおりを挟む「岩井」
「はいー」
「ギブ」
「待って敬吾さん、早い諦めるのが早い」
ぐっと敬吾の肩を掴み、逸は深々と落ち込んだ。
「もうちょっと頑張りましょう!その話したの一昨日ですよ?」
「二日考えて出なかったらもうあとなんも出ねーよ」
「気が短い……!」
どさくさに紛れてそのまま敬吾を抱き竦め、嘆くふりをして首に頬を擦り寄せる。
(そういうとこも好きなんだけどさあ…………)
せめて一応は恋人である自分のことくらい、もう少しだけ長くは考えてくれないものか……………。
その逸の胸中を察したかぺんぺんと頭を叩き、敬吾が口を開く。
「考えた方だってばこれ」
「えーーー………」
拗ねたふりをしながら甘えた声を出す逸が、どうにもいじめてやりたくなる。
「……。じゃああれだ、駄菓子の詰め合わせやるよ」
「えっ!!?」
「いいじゃんお前駄菓子好きだし。チョコマシュマロとかなんかあの電卓みてーなグミとかチョコ棒とか山のように二万分くらい」
「やですよぉ!!」
「ほらそうなるだろーが!なら指定しろっつーの!」
「えーーーーーっ……」
肩は掴んだまま体を離しこれでもかと眉を下げる逸に、金貸しよろしく敬吾はその頬を指の背でひたひたと叩いた。
「おら。」
「……………………………」
「………………………。」
「……………考えときます……………」
「おう」
「…………こんなはずじゃないんだけどーーー!!!!」
「はっはー」
「決まったか?」
──あれから三日。
敬吾はこともなげに尋ねるが、逸の表情は気難しげだった。
「うーーん………」
「まあ急かしてるわけじゃねえけどさ」
自分は考える必要のない敬吾は気軽なものだった。
逸としては、思った以上の難題に気分はもうプレゼントをもらう側のそれではなくなっている。
自分が身銭を切るわけではないとなると、俄然相場が分からなくなってしまった。
それはまた違う意味で、敬吾へのプレゼントを考えた時もそうではあったのだが──
「うーーん………」
すっかり困窮してしまっている逸に、敬吾は少々申し訳ない気持ちになりながら苦笑していた。
逸としては、敬吾が考えてくれたプレゼントならば本心何でも良かった。
消耗品以外ならば、だが。
かと言って自分から敬吾に買ってもらいたいと思うものなど何もない。
(バッグとかさらっとおねだりできる女の子ってすげえんだな………)
何と言おうかもはや生物として別物な気すらしてしまう逸であった。
(いや男でもすんのか……マダムにこう……ホスト的な……)
(………いや嬉しいのか!?好きでもねー相手からって──、いや嬉しいか、単純に欲しいもんが手に入ってんだもんな)
考えれば考えるほど、敬吾に関係した事でしか喜べないらしいと逸は自分に呆れてしまう。
が。
(……………あ)
木漏れ日を弾く水面のようにひとつ、閃くものがあった。
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