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褒めて伸ばしてー閑話休題ー 15

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敬吾の瞼が、眠たげにとろとろと落ち始める。

「敬吾さん」
「んー……」
「…………もういっかい………」
「んん──…………」

むずかる子供のように目をこすりこすり、それでも敬吾は嫌がる素振りは見せなかった。

「じゃあこれ脱ぐ……」
「えっ?」
「もういいだろーー……、鬱陶しくてやだ」
「うぅん……」

眉根を寄せ、逸は改めて敬吾を見下ろす。

肘の上まで落ちたブラウス、押し上げられた下着からは真っ赤になった乳首が覗いていて、腰元も際どく隠されている。
逸が乱暴に扱ったせいですっかり裂けてしまっているストッキングもまた危うく艶かしくて──

「岩井っ!」
「はいっ!?」
「脱ぐぞ……もー……」

有無を言わせず敬吾が起き上がり始める。
悲しいもので、それを諌めるよりも重たげに畳まれて行く脚を凝視してしまったものだからその間に敬吾はブラウスを脱いでしまっていた。

敬吾が膝立ちになると逸が背中に腕を回してフックを外す。
肩紐をゆっくりと下ろしながら胸に口づけると敬吾が俯き、逸の顔の横にさらさらと髪が揺れた。

「ん………っはぁ、逸、もう……」

その後を引き取ってやるように下着を放り出し、顔を引いてその状態をきちんと記憶に収めてからスカートの中に手を入れる。
ストッキングと下着が合わせて下ろされ中心が解放されると、敬吾がぶるりと背中を震わせた。
嘆息のようなしみじみとした吐息が、どれだけ息苦しかったかを物語る。

「凄いな、中……ぐちゃぐ」
「うるさい………っ」

逸が手を止め、乱暴にスカートを捲り上げた。
そのままそこに顔を埋められ、敬吾が背中を引き攣らせる。

獣が血生臭い餌を食い散らすような呼吸も目つきもスカートの中に隠れていき、見えない恐ろしさと快感がまた敬吾の涙を誘った。
逃げようにも、ストッキングのウエスト部分に腿を縛られている。

「逸ぃ、…………!」
「ん………」

転げてしまいそうになる敬吾を支えてやり、逸が大人しく顔を離す。
離すが、最後の最後まで舌でそこを掬い上げていたのがスカート越しにも分かってしまって敬吾は泣きたくなった。

「はい、綺麗になりましたよー」
「っ馬鹿!!」
「ふふ」

抱きつくようにまた腕を回し、逸がストッキングを下ろしていく。

「敬吾さん、お尻ついてー」
「っ………」

眉を顰めながらも敬吾が従い、逸はその脚を揃えさせてするすると肌を露わにしていった。

「………っお前」
「はい?」
「なんでここで勃つんだ…………っ」
「言ってるでしょー、敬吾さんの脚大好きなんですって。やっぱ生脚もいいな………」
「変態過ぎる………!!」

それは聞こえないふりをして、親子がするような平和なキスを膝に落として逸はパンプスとストッキングを放り出す。
その顔が上げられると瞳が獰猛に熱を孕んでおり、敬吾は怯えたように息を呑んだ。

「敬吾さん、起きて……自分で脱いで見せてください」
「………………っ」

腰を掴む逸の手に導かれるまま、敬吾は逸の足の間に膝で立つ。
おずおずとファスナーを下ろし膝までスカートを脱ぎ落とすと、その途端逸に押し倒された。

「うおぉ!!意味あったのか?意味あったのか今の!!!」
「っああもうたまんねっ……だいすき!」

膝に溜まったスカートも乱暴に引き落として放り投げ、これでもかと腿を開かせていきり立ったそれを飲み込ませる。

「や──……!」
「もーごめんなさい!ほんとごめんなさい俺こんなんでっ」
「うぅ馬鹿っ、んっ──……!」
「けーごさん今日奥すごい好きですよね?きもちい?」
「んー……!やっ、っあ、んー……っ」
「ですよね、ちょっとだけ頑張って、起きて」
「うぅ?なにっ、」

半ば放心している敬吾の腕を引き、自らは背後に腕を突いて体重を支えると逸は思い切り敬吾を突き上げた。
喉を反らせた敬吾の悲痛な喘ぎと、濡れた肌が強く弾け合う音が響く。

「やだ………!っあ、逸だめ、も、だめ……」
「……………」
「あっ!やだ逸ぃ、もーやだ………」
「なんで?ほらもうイキそうでしょ、やだじゃないでしょう」
「ん──……!あっあっ、………………………!!!」
「ね?ほら…………」

激しく昇り詰めながらも、もうほとんど何も出せない敬吾を逸はそれでも突き上げた。
それが、激しすぎる快感を引かせてくれずに敬吾はもう泣くことしかできない。

「あ──………、敬吾さん凄い、もう……中ぐっちゃぐちゃ」
「んんっ……逸、っもう、むりー……」

堰が切れたように喘ぎと涙をただ零しながら、敬吾が真っ直ぐに逸を見る。

「────、」
「おねがぃ、だからっ、……っん!………っ」

一も二もないこんな懇願は初めてのことだった。
怒涛のような快感の激流に翻弄されて、これ以上はもう、本当に分からなくなってしまう。何も。

ついには目を閉じて弱々しく喘いでいるだけの敬吾を逸はそっと横たえた。
敬吾は未だ快感に喘ぎながら、しゃくり上げてしまいそうなほど大粒の涙を零している。

「ごめんなさい、っこれだけ──」

もはやどこにも力を入れられず、持ち上げると撓る腰が本当に柳のようで逸はまた我を忘れそうになった。──事実、忘れた。

激しく突き上げられ、長いこと細く呼吸だけを繰り返して敬吾は一時意識を手放した。
更に弛緩する腰とその内側の感触に、頭を垂れて没頭していた逸が顔を上げる。

「……?敬吾さん?」
「んぅ……」

反らされて喉笛が剥き出しになった首からも力が抜け、打ち付けられる度頭が痛々しく揺れ、それでも瞳はいやに平和に閉じられていた。

──それに興奮してしまう自分はきっと、本当にどうかしている…………。

肘をついて頬を撫でてやりながらももう片手では敬吾の脚を押し上げ、逸は更に激しく穿った。
悲しげなほどに険しく眉根を寄せ、陶酔しきって熱に浮かされた瞳で敬吾を見つめる。

(──敬吾さんに)

あの、敬吾に。

理性的で常識人で、強くて厳しくて恥ずかしがりやな敬吾に。

(俺……………)

敬吾の眉根が微かに震える。

(こんなこと────)

「ん……………?」

敬吾が微かに瞳を開き、濡れた光が広がっていくのを見つめながら逸は思い切り腰を打ち付け吐き出した。

「…………?……………??」

涙に歪んだ視界で、敬吾は猛りと興奮に溺れきった男の顔を見た。
映画のスクリーンでも見ているような気分だった。

「…………?いわい………?」
「………………はい」

無垢な子供のような、不安も疑いもないような視線で敬吾は逸を見る。
あまりに安心しきっていて、逸は自分の狼藉を苦笑うことしかできなかった。

「敬吾さん」
「んん……」
「お風呂入りましょうか」
「ん……………」

逸が背中に腕を回すと、それが抱き上げるためだと分かっていても力が抜けてしまう。

敬吾はまたとろりと目を閉じた。







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