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悪魔の証明 16
しおりを挟む「敬吾さんーー」
「おう」
ドアを開けるとそこにあった、晴れやかとは言えない逸の顔を敬吾はぺちぺちと撫でてやる。
「大丈夫だっつーの、もうどうにもなんねーよ」
「はい……」
敬吾のことだから、それは本当にそうなのだろう。
半端なことはしない。
「けど」
「………………」
「あいつのこと嫌いにはなれねえな」
「ーーーーー」
これも、予想していたことだった。
そもそもが人嫌いの敬吾が薄くとも長年付き合っていた相手なのだ、本当にろくでなしであるわけがない。
けれど。
泣き出す寸前の子供のようになってしまった逸を見て、敬吾が破顔する。
「だからってなんにもなんねえって!まだ疑うか?でも今日はもーさすがに何にもしねーぞ!」
「あああいやいやそうでは……」
あわあわと困ってしまっている逸の頬を、敬吾はまた両側から叩いてやった。
逸がぱちくりするのを微笑ましく見届けてから、ゆっくりと唇をつける。
逸は未だにぱちくりしていた。
「……自信もってもう少しどっしり構えてろ」
「ーーーーーーー」
少し苦しげに笑いかけられ、逸は胸が詰まった。
これだから頼りがいがないのだ、自分は。
ーーしかし。
「……難しいなあそれえーーー…………」
「がんばれ。腹減った!」
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