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悪魔の証明 2

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「…………っいち、ん、……」
「敬吾さん今日感度むちゃくちゃ良いですね……」

ぞくぞくと這い回る熱に震えながら、敬吾は楽しげに笑っている逸の首から腕を下ろした。
抱きついていたい気持ちもあるがそれよりも、もっと逸に触れられたい。

それを知ってか知らずか逸はすぐに体を起こし、敬吾の肌を浚い尽くすように舐め、撫でる。
その度に敬吾は細く声を漏らした。

「もー、ほんっと可愛いなあ…………」
「あ、ゃ……」
「声でも感じちゃいます?」

限度を知らない悪童のように笑いながら、逸が持ち上げられていた敬吾の膝を開かせる。
チューブの蓋が開く硬質な聞き慣れた音が響くと、敬吾の表情が僅かに猥溶した。

「……ちょっと冷たいですよ」
「へーーー、」

更に悪どく笑うと、逸は敬吾の谷間を割り開き、チューブの口を充てがう。
すぐに敬吾の内腿が緊張し、腰を引かれる前にと逸がチューブを強く握った。

「っんーーー……!!!何っ、や、やーー……!」
「ああ敬吾さん上手……」
「っあ、冷た……っばか!」

聞くに耐えない音がして、冷たい口が離れる。

「っは、敬吾さんほんと上手、ちゃんと飲み込んで……」
「ばか!!冷たいー…!!」
「そうですか?熱くなってこない?」
「へ、」
「温感のやつだから。あったかくなりますよ」
「んっ……!」

乱暴に尻を鷲掴むと、こすり合わせるように逸が強く揉む。
今注がれたばかりの潤滑液があまりに淫猥な音を立てて、徐々に熱を生んでいく。
慣れない熱さがあまりに刺激的で、敬吾は暴れだしそうな喘ぎを必死で堪えた。

「ああエロい……、敬吾さんが自分で濡れちゃってるみたいです」
「っるさい、ばか………っあ!」

逸が敬吾の腰を丸めさせ、そこを高く持ち上げる。
その羞恥に敬吾の膝から下が暴れるが逸は気にも留めなかった。
それどころか気付いてすらいない様子で、溢れる粘液で濡れていく敬吾のそこに唇をつける。

「っ!!!!? やめろっ何してーーーー」
「んん……?」
「やだ!岩井、っ!舐め、るのはヤだーー……!」
「嫌だ?絶対?」
「やだ……!」

その言葉通り敬吾の表情から快感は垣間見えず、羞恥まみれで、泣き出しそうに赤い。
が、逸としてはその表情も燃料だ。

「ん、逸、やだってば……!」
「んー……」
「逸っ、……!」
「……本当に?震えてきてますけど」
「違う…………っ」

あまりに頑なな表情に逸が苦笑する。

「……じゃあまた今度、ゆっくり」
「ぁーーーー……!」

浮かせていた腰を下ろして中指を埋め込むと、敬吾が切なげに脚を体に寄せた。
むず痒いような感触で焦らされたそこがいつも以上に敏感で、体を張り詰めさせることでしか正気を保てない。
それをまた引きずり下ろして開かせながら、逸が指を往復させる。
豊潤に濡れ、熱を持ったその感触に逸はすぐに夢中になった。

「あ、あ……!逸っ、や、激し、すぎ……」
「っすみません、痛い?」
「いたくは……ないけど、っーー……」
「ちょっと……これ凄すぎて……」
「んッ!んっんっ……ぅ、逸っ!ダメ……」
「やばい指溶けそう」
「やっあっ、だめだってば、逸っーーーー……」

左手で敬吾の膝を割り開いたまま、逸は没頭してそこを注視し、激しく指を往復させていた。

敬吾の制止もまともに聞いておらず、その指が一層きつく締め付けられて初めて、

(あっ)

と、思った。

「んぅーー………………!」
「っあ、敬吾さんーー、」

言った頃には敬吾はもう達していて、抵抗していた膝からも力が抜け、くたりと体を弛緩させて必死に呼吸をしていた。
あまりの恥ずかしさに、額に乗せた手の下から逸を睨んでみるも、逸は打てども響かないようなぼやけた顔をしている。

そしてそのまま。埋められていた指が中でぐるりと回された。

「んぅっ!!!?」
「敬吾さん………」
「や、馬鹿っ、何してやめっあっ!やめっ、んーーー……!」

そこから敬吾は必死で口を閉じた。
未だ快感の燻る体にそのやり様はあまりに刺激が強く、身を任せるのは恐ろしすぎる。

そうしてびくびくと震えて耐える敬吾の体を、逸は指一本で翻弄しながら呆然と眺めていた。
その指を性急に増やし、また更に掻き乱す。

「敬吾さん……綺麗、すごい可愛い…………」
「ぅるさいばかやめろっ、んぁっ……!!」

逸がものも言わずに指を引き抜き、敬吾はまたすぐそこに絶頂を見た。
ぞっとするほどの快感の波が間近にあって、寸の間、何が何だか分からなくなる。

その一瞬を知る由もない逸が猛り切った先端を押し当て、そのままぬるぬると押し込んでいく。
敬吾は目が眩むような思いがした。

「っ逸!待って今ダメっーーー」
「……?ごめんなさい、無理、止まんない……」
「ゃ………………!」

ゆっくりと重たく一番奥を突かれて敬吾が大きく仰け反る。
逸の腕に縋りながらその衝撃と快感に耐える、が、滑らかに引き抜かれ、もう一度突き上げられるといとも容易く間近にあった頂は降ってきた。

悲痛な声を上げて痙攣する敬吾を、やはり逸は呆然として食い入るように見つめている。

「ーーっ敬吾さん……」
「あ、っは……、んーー…………!」
「ああ……もう、敬吾さん……」
「んっ、んんっ………!」

次から次から溢れる涙を、逸が顔を寄せて舐め取った。
敬吾が苦しげに呼吸を詰めているうち、それは止まりそうにない。

「可愛い……、苦しい?ごめんなさい」

顔を撫でられ、敬吾はそれに縋り付くように必死で頷いた。
逸の手が首へ、胸へと降りていくとその度凄惨なほど体を撓らせ、息を呑む。

「……まだ気持ちいいの残ってる?」

躊躇いながらも敬吾は頷いた。

「うん、じゃあ……我慢しないで。それじゃ敬吾さんがずっと苦しい」

小さく嗚咽のような声を漏らす敬吾に、逸は唇を落とす。

頑なな唇を食みながらゆったりと腰を揺らすと、びくりと敬吾の肩が揺れる。そして必死で逸の首を抱いた。

「ん!ぅんーー………!」
「敬吾さん……力抜いて、ね?」
「ふ……ぅー……」

まだ涙の止まらない敬吾を全身で慰めるように、逸は唇を緩ませ、あやすように体を揺すった。
そこからまた溢れる快感が怖いようでも優しいようでもあり、身を任せてしまえと誘っている。
抵抗すればするほどその圧力は増して、敬吾は屈服した。

それもこれも、逸が悪い。
あまりに優しくて、暖かくて、甘えたくなるーーーー

「…………っふ、んぅー……、逸ー……」
「はい……」

敬吾の唇が離れ、逸の肩に埋まる。
その髪を撫で、くちづけると子猫のように逸の肌を吸いながら敬吾が小さく喘いだ。
我慢するのをやめたらしい。

痛々しいほどに艶っぽく、あどけなくて、逸はたまらない気持ちになる。
優しくしてやりたいが、滅茶苦茶に抱き尽くして壊してしまいたい。

「ん………っん、……んー……」

細く抑えた声を零し続ける敬吾の髪を、逸は狂おしく掻き乱していた。
その中に吹き込まれる呼吸は獣のように荒い。

「敬吾さん…… ……少し強くしてもいい?」
「え………、」

敬吾がその言葉の意味を捉え切るのは格段に遅かった。
肌の中にはまだ滞留しきった快感が火花を散らしていて、その最も深いところはじりじりと熱く脈打っている。
その熱はまるで逸の熱さが侵食しているかのようでもうたまらなかった。
痺れるように打つ脈も自分のものなのか逸のものなのか分からず、まるで、こんな体の奥深くまで、心臓まで掌握されてしまったようで、頭が働かないーー。

「…………へ?なに…………」
「ーーっそんな顔して……」
「あっ!……ぁーーーー………っ!」

堰が切れたように強く腰を振られ、敬吾が喚くように声を上げる。
必死で逸の首に縋り、呼吸だけでも取り返そうとするがそれもできない。
逸が動く度に熱が暴れ、広がって、気が触れそうだった。

確か、あまり大きく声を出してはいけないはず。それは分かるのだが、どうしてだったか。もうどうだっていいのではないか、だって、おかしくなってしまいそうだーーーー。

「んーーー……!んーっ、あ……っ逸っ、あ、っあっ……!」
「敬吾さん……」

凶悪な笑みを浮かべ、逸が敬吾の耳に唇をつける。

「ーー敬吾さん。俺は、めちゃくちゃ嬉しいんですけど……、声、皆に聞こえちゃうかも」
「ーーーーーー!」
「誰も、敬吾さんだとは、思わないと……思いますけどね?」
「っ、ーーーーーっ………!」
「敬吾さんのエッチな声、誰にも………っん、……聞かせたくないなあ」

かなりの範囲の能力を失った敬吾の耳に、逸の言葉の後半は聞こえていなかった。
ただただ最初の一言が頭を殴るように衝撃的で、恥ずかしくて。
敬吾はぶんぶんと首を振る。

「やだ、ーーーやだー、」
「ですよね?ごめんなさい、きついとは思う……、んですけど、」

一時鳴りを潜めていた涙がまたぼろぼろと頬を伝い始めて、しゃくり上げてしまうわ声は閉じた喉を押し上げるわで敬吾は恐慌に陥る。
子供のように咽ながら泣いた。
恥ずかしくて泣けてきて、その泣き声も突き上げるような喘ぎ声も必死で飲み込むのに、それでもまだ快感は怒涛のように襲ってくる。

耳元でただ興奮に浸った呼吸が荒ぶっているのに気づいたとき、やっと敬吾はそれがこの一人快感に耽る男のせいだと思い至った。

「ふ……、っんん……っ!なんっーーじゃあ、じゃあいっかいやめろよばかあっ…………」
「あは……、ですよね。ごめんなさい、無理で……」
「んぅ!んんっ、んーー…………!」
「っああ敬吾さん辛そう……ごめんなさい、でもその顔もすご、いそそる……………」
「ばかー……!おまえがっ、悪いんじゃんかっ、んー……!気持ち、よくする、から、んん………!」
「……………。ほんっともう勘弁してください」

敬吾の腰を思い切り掴み、一層激しく腰を振りながら逸は敬吾の喘ぎを口で塞いだ。
敬吾の目が見開かれ、すぐに悲痛に顰められる。
激しい快感とそれを昇華できない苦しみに、また涙が溢れ出す。
逸を受け止めるたびに腹も胸も激しく上下し、喉が波打った。

必死で縋った逸の背中には、短い爪がそれでも食い込む。熱く感じるほどに痛いが、どうしようもなく興奮してしまう。
激しい呼吸の合間に堪えようもなく溢れる苦しげな声、涙、幾度も肩甲骨に走る痛み、全てが、自分に由来しているのだから仕方がない。
乱れさせているのも、苦しませているのも、縋られているのも慰めるのも自分だ。

凶暴な支配欲が突き上げて、逸は上体を起こし思い切り深くまで穿ってその奥に吐き出す。
敬吾が必死に口を覆いながらも悲痛に喘いだ。

(……今のはほんとに音漏れちゃったかもな)

萎え始めるまでの短い間容赦なく揺すり上げてやると、もはや快感と思っているのかどうか、敬吾はただ切なげな嗚咽を漏らす。
そうして弓なりに体を撓らせ、不安そうに膝を体に引き寄せながら小さく震えて少ない精液を吐き出した。

(えっろ…………)
「っんー、んーーー……、」

未だ健気に口を覆っている手をそっと剥がしてやると、不思議そうに逸に寄越された視線は弛緩しきって溶けてしまっている。

「大丈夫ですか?」

問いかけても、聞こえていないのか全く反応しない。

「…………敬吾さん」

しばらくしてやっとひとつ瞬きをし、逸がほっと安堵したところで敬吾の顔はみるみる赤くなった。
ぎゅっと深く眉間に皺が刻まれて、その顔を枕に押し付けながら逸の顔を横ざまに押しやる。

「うぉ、敬吾さん?」
「……………っうるさい馬鹿犬…………っ」
「ごめんなさいー、ちょ、でもちょっといちゃいちゃしましょうようっ……」
「やだ!!」
「いでっ」

顎を弾き飛ばすように逸の顔から手を離し、敬吾は本格的に枕を抱え込んで籠城した。

頑ななその後頭部を、慰めるように逸が撫でる。

「……すみません、めちゃくちゃしちゃいましたね」
「………………」
「でもね敬吾さん」
「………………」







「こーゆーの、まな板の上の鯉って言いますよ。」
「!!!!!!!?」

顔は腕と枕に埋まっているものの、その他は文字通り一糸まとわぬ丸裸だ。

尾てい骨からまっすぐに背骨の上を指先で遡っていくと敬吾ががばりと体を起こす。
そのまま枕を抱いてわたわたとベッドの隅に体を詰め込み、敬吾はお化けか妖怪かと思っている顔で逸を見た。

(ほんと猫みてー……)
「………無理だぞ!もう!!!」

思い切り釘を刺されて逸が破顔する。

「あはは、冗談ですよ」
「………………」
「敬吾さん、ほんとに体大丈夫?」

壁の角に背中を預けている敬吾に逸がにじり寄ると、また追い詰めているような格好になった。
逃げ場のないところにはまり込んでしまった自分を敬吾は呪うが、逸はその言葉通り優しく敬吾の頭を撫でる。

「すみません、無茶して………」
「…………………」

贖罪のように落ちてくる唇を受けているうち、敬吾の構えはまた軟化する。

それが象徴するように今日は敬吾の秤が妙に逸に優しく設定されているようで、それが逸にはたまらなかった。
我儘に求めても、無理に感じさせても、これと言った抵抗をしない。

ーー本当に自分のものなのだと、今日は何度思ったか知れなかった。

「敬吾さん今日すごい可愛い、いつも以上に可愛い……もう、いじめたくなっちゃって。ほんとごめんなさい」
「可愛くないっつってん、………いやいじめんなよ可愛いとか思ってんなら!小学生かよ!」
「ほんとですよねえ」

困ったように笑いながらも逸はまだ敬吾の首に唇にとキスを施し続けていた。

「あんなことしても敬吾さんが感じてるのが嬉しくて。もっとやっても感じてくれんのかな、許してくれんのかなって思ったらーー」
「ーーーー!うっうるさいって!」
「……止まんなかったんです。敬吾さん、俺には特別優しいって思ってもいい?」
「黙れってばもうっーーーーーー」

すっかり赤くなって背けられた顔をまた強引に自分の方へと向かせ、逸はその唇を奪った。
これも、自分のものだ。

「んっ、…………」

あれだけ存分に情事を交わした後とは思えないほど、逸は鮮烈に色を滲ませて敬吾の舌を追った。
何かしら危機を感じた敬吾が少しずつ肩を押す手に力を込める。

名残惜しそうではあるが思いの外素直に逸は唇を解放した。

「……………お風呂入りましょうか?……一緒に」
「別々だっ、ばか」
「この間一緒に入ったじゃないですかー」
「俺が酔っ払ってたからだろっ、今日は別に……」
「酔ってはないですけど。腰抜けたりしてないですか?」
「!!!?ばっ、だいじょぶだっばか!!」

ばしばしと二の腕を叩かれて逸が声を立てて笑った。

「ん、じゃあ……お風呂どうぞ、」
「………………」

敬吾の前から逸が退くと、敬吾がもそもそとベッドの縁へ移動していく。
なぜか緊張した様子で足を下ろし、そっと立ち上がったーーーーが。

「ほらー」

くすくすと笑いながら手を貸してやり、逸は真っ赤になった敬吾を抱き寄せた。

「一緒に入りましょう。ね?」
「………………っ!!!!」
「お姫様抱っこしていいですか?」
「絶っっっ対イヤだ!!!!!」



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