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息子さんを僕にください 2
しおりを挟む──問題の、土曜日。
逸は、慌てに慌てていた。
「………あぁでもどうしようっ俺最初っから一緒に行っちゃって大丈夫なんですかね?誰こいつってなる?衝撃でかい!?」
「……まあ最初は俺ひとりで行っていいとこで呼んでもいいけど」
「いやでもそれもなんか卑怯者っぽくないですか!!?」
「なら最初っから同席しとけよなんにせよいずれ顔合わせんのは一緒だろ!」
「そそそうなんですけど!」
「つうか頼むから落ち着いて前見てろ!!」
助手席からがっしりと頭を固定され、逸はやっとわたわたと敬吾を見るのをやめて真面目に進行方向だけを見るようになった。
「もう次サービスエリアあったら入れ、運転代わる」
「うぅ、はい」
寄りにも寄ってこんな日に事故など起こされたらたまったものではない。
大人しく車を停めたかと思えば、運転を代わるため車の前ですれ違う敬吾の腕をがっちりと捕まえる。
「手土産あれで大丈夫かなぁ?ここでなんか見てきます!?」
「だーいーーじょーーぶだっつーーーのうるせえな!!!」
手土産は敬吾の両親が好きな日本酒と、逸の手製の卵味噌だった。
何かの折り、作りすぎたと言って桜に持たせたものが両親の口に入りいたく気に入ったとかで、添えてみようかという話になったのだ。
二人は白米に合わせて食べるが、岩居家では肴にしてちびちび日本酒を舐めるほどの執心ぶりらしい。
「なんならあれ作ったのお前だっつったらプラス査定だから気にすんな!」
「ほんとですか………」
「いいから乗れっつーのもーー」
「はいー……」
力いっぱい呆れた顔をしながらも、敬吾は内心噴き出しそうになっていた。
──とっくのとうに両親は知っていたのだと知ったらこの男、どんな顔をするのだろう。
堪えきれず少し上がってしまった敬吾の口角に、緊張で視野の狭くなっている逸は全くもって気づいていなかった。
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