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草原の世界での暁闇
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俺は目の前に立ちはだかる大岩の前で、立ち尽くしていた。
「アルテ!大丈夫か!?」
呼びかけると、岩の向こう側から声がする。
「テンリ……」
「アルテ!良かった!無事なんだな!今そっちに行くから!」
俺はホッとした気持ちで岩の周りを半周し、声の方に向かう。
もうすぐアルテの姿が見えようか。と言うところで俺は話しかける。
「どっか怪我してな―――」
―――え?。
「テンリ、ごめんね。結構大怪我しちゃったみたい。」
そう言いながら、下半身を岩で押しつぶされると言う大怪我を負ったアルテがはにかんだ。
「あ、アルテ?ああ、いま岩をどけるから!待ってろ!」
「いいよテンリ、私は大丈夫だから。」
「そーゆーわけにも行かねぇよ!」
「どかしても、もうだめだから。」
その声は謎の説得力をもっていた。
「この世界にはどうせどんな怪我でも治す方法とかあるんだろ?」
「ふふ。そんなのないよ」
俺はアルテの言葉は無視して、短刀を引き抜く。
―――頭から!手に!!
必死に力を加えていると、短刀の柄から少しずつ刀身が見え始める。
そのまま力を加えて、刀身を出し、短刀の形にする。
「よし!待ってろアルテ!」
そう言って自分の出せる一番の力で岩に短刀を振り下ろす。
―――ガキィィィ
と、鈍い音がして、短刀は止まった。
「刃が通らない……」
「この岩は城壁から飛んできてるやつだと思うよ。この国の城壁は象でも壊せない硬さ。それどころか神獣が突撃しても壊れなかった。そんな硬いものを壊すなんて。象以外のなにかの仕業かも。」
「くそ!どうすれば。」
俺が絶望に駆られる中、アマテが言う。
「死ぬ前に、テンリが武器を出せるようになったのを見れて嬉しかったよ。」
俺が口を開かず絶望していると、アルテは続けていった。
「いい?三番目のニルゼンに協力して、一と二と四は絶対に信用しちゃだめだよ?」
「……」
「最後のお願いだからさ。一生のお願い、今日ここで使うよ。使っておかなきゃそんでしょ?」
「……わかったよ。」
アルテはニコリと笑って、血まみれの顔で言う。
「やっぱり、あなたは私の大切な人なんだね。あなたは気がついていないけど」
「……どういう」
「だってそうじゃないなら、どうして私のために泣いてくれるの?まだ会ったばかりの私のために。」
そこで気がついた。俺は泣いていた。
なく理由はないはずだ。アルテとは今日知り合ったばかりだし。
深い思い入れもないはずだ。泣く理由なんて。
「……わかんないけど、アルテは友達だし」
「それが理由で……泣いてくれてるの?」
「……幼馴染ににてるんだ。アルテが。俺の。幼馴染だった子に」
「そう。私は…テンリの幼馴染だったんだね。テンリ、ニルゼンに協力してもらって…地球に……帰りな?楽しい事がきっと……待って……る。」
「いや、俺は!……アルテ?」
アルテの瞳からはハイライトが消え、美しい二重の目を半開きにして、口を少し開けていた。
俺は濡れた頬を袖で拭って立ち上がる。
このアルテの死に、俺は心から悲しんでは居ない。幼馴染と重なって。自然に涙が出ただけだ。アルテの言う通り、まだ関係もそこまで深くなかった。これから楽しい異世界ライフを送るはずだった。
「おやおや、現実逃避かい?」
「あ?」
「久しぶりイザナギテンリ。一人目のニルゼンだよ~!」
「アルテ!大丈夫か!?」
呼びかけると、岩の向こう側から声がする。
「テンリ……」
「アルテ!良かった!無事なんだな!今そっちに行くから!」
俺はホッとした気持ちで岩の周りを半周し、声の方に向かう。
もうすぐアルテの姿が見えようか。と言うところで俺は話しかける。
「どっか怪我してな―――」
―――え?。
「テンリ、ごめんね。結構大怪我しちゃったみたい。」
そう言いながら、下半身を岩で押しつぶされると言う大怪我を負ったアルテがはにかんだ。
「あ、アルテ?ああ、いま岩をどけるから!待ってろ!」
「いいよテンリ、私は大丈夫だから。」
「そーゆーわけにも行かねぇよ!」
「どかしても、もうだめだから。」
その声は謎の説得力をもっていた。
「この世界にはどうせどんな怪我でも治す方法とかあるんだろ?」
「ふふ。そんなのないよ」
俺はアルテの言葉は無視して、短刀を引き抜く。
―――頭から!手に!!
必死に力を加えていると、短刀の柄から少しずつ刀身が見え始める。
そのまま力を加えて、刀身を出し、短刀の形にする。
「よし!待ってろアルテ!」
そう言って自分の出せる一番の力で岩に短刀を振り下ろす。
―――ガキィィィ
と、鈍い音がして、短刀は止まった。
「刃が通らない……」
「この岩は城壁から飛んできてるやつだと思うよ。この国の城壁は象でも壊せない硬さ。それどころか神獣が突撃しても壊れなかった。そんな硬いものを壊すなんて。象以外のなにかの仕業かも。」
「くそ!どうすれば。」
俺が絶望に駆られる中、アマテが言う。
「死ぬ前に、テンリが武器を出せるようになったのを見れて嬉しかったよ。」
俺が口を開かず絶望していると、アルテは続けていった。
「いい?三番目のニルゼンに協力して、一と二と四は絶対に信用しちゃだめだよ?」
「……」
「最後のお願いだからさ。一生のお願い、今日ここで使うよ。使っておかなきゃそんでしょ?」
「……わかったよ。」
アルテはニコリと笑って、血まみれの顔で言う。
「やっぱり、あなたは私の大切な人なんだね。あなたは気がついていないけど」
「……どういう」
「だってそうじゃないなら、どうして私のために泣いてくれるの?まだ会ったばかりの私のために。」
そこで気がついた。俺は泣いていた。
なく理由はないはずだ。アルテとは今日知り合ったばかりだし。
深い思い入れもないはずだ。泣く理由なんて。
「……わかんないけど、アルテは友達だし」
「それが理由で……泣いてくれてるの?」
「……幼馴染ににてるんだ。アルテが。俺の。幼馴染だった子に」
「そう。私は…テンリの幼馴染だったんだね。テンリ、ニルゼンに協力してもらって…地球に……帰りな?楽しい事がきっと……待って……る。」
「いや、俺は!……アルテ?」
アルテの瞳からはハイライトが消え、美しい二重の目を半開きにして、口を少し開けていた。
俺は濡れた頬を袖で拭って立ち上がる。
このアルテの死に、俺は心から悲しんでは居ない。幼馴染と重なって。自然に涙が出ただけだ。アルテの言う通り、まだ関係もそこまで深くなかった。これから楽しい異世界ライフを送るはずだった。
「おやおや、現実逃避かい?」
「あ?」
「久しぶりイザナギテンリ。一人目のニルゼンだよ~!」
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