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草原の世界での暁闇
07
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俺とアルテは国の城壁の外に出て、しばらく進んだ草原にいた。
「それじゃあテンリ、武器の出し方を教えるね」
「うん。」
アルテの話によるとこの刀身の無い短刀から刀身を出せる技があるらしい。
「えーっと、まずは·····頭に集中して」
「·····できた」
「そしたらその集中をだんだん体の下の方、手の方に移動させて。そのまま手から剣に集中を注ぐ感じに」
言われたとおりに集中を注ぐ感じにする。
「───うーん。どうしても手首で止まっちゃうな」
「あー、私も最初のうちはそうだったよ、練習すればできるようになると思うよ」
「そーだといいけど、ところでアルテの武器はなんなの?」
アマテは自分の手の甲を見せながら嬉々として語る。
「私の武器は指輪だよ」
「指輪?」
「うん、色々便利なんだよ?この指輪」
「へぇ、綺麗な指輪だね。なんの宝石を使ってるの?」
「ホウセキ?」
「え?アルテ宝石知らないの?」
まさか宝石を知らないとは。
てか、指長、白、めっちゃきれい。
「綺麗で硬い石だよ」
「ふーん、よく分からないな」
* * *
しばらく俺は能力の練習をしていた。
アルテはどこから出てきたのか分からないが、いつの間にかフェニクロウと一緒にいてしばらく遊んだ後快眠についていた。
「幼いなぁ」
アルテの寝顔は赤ちゃんの様で思わず撫でたくなる。
そして、今実際に俺の手がアルテに向かっていたのに気がつく。
────いやいや!何してんだ俺!会ったばっかりの人相手に!いつからそんなキモくなった?!
次の瞬間、アルテの瞼が数回痙攣した後開いた。
俺の右手はまだアルテに伸びて行っていた状態のままだ。
俺には今三つ選択肢がある。
その一
フェニクロウを撫でようとしたことにする
その二
自首する
その三
もう開き直ってこのままアルテを撫でる
当然選択したのはその一。
俺はフェニクロウの頭に手を移動させた。
「───あッッッッづぅ!!」
フェニクロウの頭はめちゃくちゃ熱かった。
いや、違う。頭を撫でられそうになったフェニクロウが咄嗟に火をまとったのだ。
「ははははは!何してるの?テンリ!」
「い、いや、フェニを撫でようと·····」
何とか場は誤魔化せたみたいだけど·····うん。思ってたんとちゃう
「ウォォォォォォォン!」
────俺は犬の、いや、狼の遠吠えを聞いた。
その音はアルテにもフェニにも聞こえたらしい。
二人とも驚いたような顔をしている。
「あ、アルテ、この鳴き声って······」
聞くとアルテは言った。
「分からないけど·····フェンリルじゃないことを祈るしかないね」
フェンリル?フェンリルと言ったらあの凶暴で神に縛りつけられている狼か?
───その時、いきなりアルテが叫んだ。
「テンリ!あっち!追われてる人がいる!」
「おってるのはフェンリル?」
「違う!あれはただの狼!」
ただの狼というのがパワーワードで少しおもしろくなるが、そういう雰囲気でもない。
「追っかけようアルテ!」
俺がそう言った瞬間には既にアルテは走り出していた。
俺は慌ててアルテを追いかけながら状況を整理する。
見えている限りでは追われている人間は一人、追っている狼は6匹。
オオカミとの距離は50メートルまで縮まってる。
───不意に後ろから声がする。
「テンリ、私じゃ追いつけないから先に行ってて!」
「分かった!」
俺はいつの間にかアルテを追い越していた。
そのままオオカミを追いかける内に、アルテはほとんど見えなくなった。
「それにしてもオオカミに追われてる人間がやけに足早くないか?」
驚くべきことに追われている人間は馬車に追いつく程の速さを持つ俺の走りに全く引けを取らない速度を出していた。
いつまで経ってもオオカミとその人間との距離が縮まらない。
そのまま、一人と六匹と俺は目の前に見えてきた森に突っ込んだ。
「木は貴重なんじゃ?普通に森あるが?」
森に入ると、開いていた距離のせいもあってオオカミを見失ってしまった。
「嘘だろ、どうしよう·····」
そこでアイテムの中に地図のようなものがあったのを思い出し、内ポケットに手を突っ込む。
「それじゃあテンリ、武器の出し方を教えるね」
「うん。」
アルテの話によるとこの刀身の無い短刀から刀身を出せる技があるらしい。
「えーっと、まずは·····頭に集中して」
「·····できた」
「そしたらその集中をだんだん体の下の方、手の方に移動させて。そのまま手から剣に集中を注ぐ感じに」
言われたとおりに集中を注ぐ感じにする。
「───うーん。どうしても手首で止まっちゃうな」
「あー、私も最初のうちはそうだったよ、練習すればできるようになると思うよ」
「そーだといいけど、ところでアルテの武器はなんなの?」
アマテは自分の手の甲を見せながら嬉々として語る。
「私の武器は指輪だよ」
「指輪?」
「うん、色々便利なんだよ?この指輪」
「へぇ、綺麗な指輪だね。なんの宝石を使ってるの?」
「ホウセキ?」
「え?アルテ宝石知らないの?」
まさか宝石を知らないとは。
てか、指長、白、めっちゃきれい。
「綺麗で硬い石だよ」
「ふーん、よく分からないな」
* * *
しばらく俺は能力の練習をしていた。
アルテはどこから出てきたのか分からないが、いつの間にかフェニクロウと一緒にいてしばらく遊んだ後快眠についていた。
「幼いなぁ」
アルテの寝顔は赤ちゃんの様で思わず撫でたくなる。
そして、今実際に俺の手がアルテに向かっていたのに気がつく。
────いやいや!何してんだ俺!会ったばっかりの人相手に!いつからそんなキモくなった?!
次の瞬間、アルテの瞼が数回痙攣した後開いた。
俺の右手はまだアルテに伸びて行っていた状態のままだ。
俺には今三つ選択肢がある。
その一
フェニクロウを撫でようとしたことにする
その二
自首する
その三
もう開き直ってこのままアルテを撫でる
当然選択したのはその一。
俺はフェニクロウの頭に手を移動させた。
「───あッッッッづぅ!!」
フェニクロウの頭はめちゃくちゃ熱かった。
いや、違う。頭を撫でられそうになったフェニクロウが咄嗟に火をまとったのだ。
「ははははは!何してるの?テンリ!」
「い、いや、フェニを撫でようと·····」
何とか場は誤魔化せたみたいだけど·····うん。思ってたんとちゃう
「ウォォォォォォォン!」
────俺は犬の、いや、狼の遠吠えを聞いた。
その音はアルテにもフェニにも聞こえたらしい。
二人とも驚いたような顔をしている。
「あ、アルテ、この鳴き声って······」
聞くとアルテは言った。
「分からないけど·····フェンリルじゃないことを祈るしかないね」
フェンリル?フェンリルと言ったらあの凶暴で神に縛りつけられている狼か?
───その時、いきなりアルテが叫んだ。
「テンリ!あっち!追われてる人がいる!」
「おってるのはフェンリル?」
「違う!あれはただの狼!」
ただの狼というのがパワーワードで少しおもしろくなるが、そういう雰囲気でもない。
「追っかけようアルテ!」
俺がそう言った瞬間には既にアルテは走り出していた。
俺は慌ててアルテを追いかけながら状況を整理する。
見えている限りでは追われている人間は一人、追っている狼は6匹。
オオカミとの距離は50メートルまで縮まってる。
───不意に後ろから声がする。
「テンリ、私じゃ追いつけないから先に行ってて!」
「分かった!」
俺はいつの間にかアルテを追い越していた。
そのままオオカミを追いかける内に、アルテはほとんど見えなくなった。
「それにしてもオオカミに追われてる人間がやけに足早くないか?」
驚くべきことに追われている人間は馬車に追いつく程の速さを持つ俺の走りに全く引けを取らない速度を出していた。
いつまで経ってもオオカミとその人間との距離が縮まらない。
そのまま、一人と六匹と俺は目の前に見えてきた森に突っ込んだ。
「木は貴重なんじゃ?普通に森あるが?」
森に入ると、開いていた距離のせいもあってオオカミを見失ってしまった。
「嘘だろ、どうしよう·····」
そこでアイテムの中に地図のようなものがあったのを思い出し、内ポケットに手を突っ込む。
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