5 / 40
草原の世界での暁闇
04
しおりを挟む
「運転手さん、あれはなに?」
あれ、とは今目の前で喧嘩している二羽の鳥のことだ。
「あれはフェニックスとサンダーバードだよ」
「の、子供ですか…親はいないんですか?」
見渡す限りの平原の中、どこにも親らしき存在は認識できないが。
「いないだろう。もしいるなら親同士で大喧嘩してるさ。親がいない状態でハンターに見つかったら助からないぞ」
「フェニックスも狩るのか?すごいな…」
「ああフェニックスもサンダーバードも今や狩りの対象だ」
もう一で二羽に目をやると、喧嘩している二羽がどうにも可愛く見えてくる。このままハンターに狩られるのは可愛そうだ。
「……あの二匹俺がもらっていいですか?」
「だめだ。もし街中で見つかったらお前もろとも撃たれるぞ。今やフェニックスもサンダーバードも売れば高い金が付く程度にしか思われてないからな。もしそうなったらどうするつもりだ?」
「その時は俺が守りますよ」
「お前に守る力があるのか分からんからな。なんとも言えん」
その言葉に答えようとした時、ぎりぎり、と言う音が聞こえた。
そして、馬車の後ろからフードを被った男が弓を引き絞りながら出てきた。
弦が切れるギリギリまで引き絞られた弓は今にも二匹を貫きそうだった。
「やばい」
そう言って俺は馬車から飛び降りる。そして腰にかけられていた短刀に手を伸ばす。
「は?」
短刀には刀身がなかった。柄しかなかったのだ。
短刀で放たれた弓を弾こうと考えたのだが、刀身ありでも高難易度なそれを短剣の柄だけで、ましてや素人が成功させることはできるのだろうか。
―――無理だ。できない。ミスして矢がおでこに「ドスッ」だ。
―――じゃあどうすれば?自分を犠牲にしてコイツラを守る?
―――それとも見捨てて逃げる?それか、不可能に近い技に挑戦してみる?
頭の中が散らかった俺は選択できないままその場に立ち尽くした。
矢はすでに放たれている。
矢は二匹とハンターの間に入るように立ち尽くしている俺めがけて飛んでくる。
まるで「どけ」とつぶやくように。だが、俺は動かない、否、動けない。
―――ああ、死ぬのか。こんなくだらない死に方するんだったら転生した意味あったのかな。ないな。じゃあ転移なんてしなければよかった。
死を覚悟したつぎの瞬間目の前で何かが弾け、視界が白く染まる。
「テンリ!死ぬつもりなの?」
―――ああ、助けられたのか。くそ、何が守るだよ。
先程運転手に、守る。と言った自分が急に恥ずかしくなる。
「アルテ。ごめん、助かった」
後ろを見ると運転手が二匹を庇うように立っている。
運転手は俺が走るよりも前に走り出していた。それがわかった上で、俺は飛び出した。
いつの間にかハンターは消えていた。
「テンリ。」
何か言おうとしたアルテがこちらを振り返る。その拍子にアルテの頭からなにか落っこちる。
―――あれは…桂?
アルテに目をやる。アルテをを見て俺は驚きを隠せなかった。
「女の子?」
目の前にいるのは髪の短いアルテではなく、髪の長い美少女だった。
そして…こめかみより少し下あたりに赤黒い線が入り、そこから血がたれていいる。
「いや、そんな事よりもその傷大丈夫?!」
「ああ、へへ。防ぎそこねちゃって。大丈夫、かすり傷だよ」
そう言ってはにかむアルテは美少女にしか見えなかった。あのクール系男子のイメージはどこにもない。あれを演じていたのなら相当な演技力だ。
アルテは上着を脱いだ。どうやら、矢を防ぎきれずに破れてしまったようだ。
───申し訳ない
上着の下から現れた女性者の服に、自分の顔が少しぽっとなるのを感じた。
運転手を見ると彼も少し驚いたような顔をしているので、俺が変態なわけではない。アルテが美しすぎるのだ。
歳は俺と同じくらいだろうか。胸は大きいわけでもなく標準。だがボディーラインはすらっと綺麗だった。
アルテは頬に垂れた血を拭きながら言った。
「それでテンリ!あんな無茶をしたらだめだよ!怪我したらどうするの?」
「ごめん、もうしない」
……お互い様だ。
俺との距離が一メートルほどだった矢と俺の間に入るなんて。
アルテはそんな事全く思っていないようだった。
「ふう。んで?お二人さん。コイツラどうするつもりだい?」
運転手にそう言われて、俺は口ごもった。俺は自分の命をかけてアイツラを守るなんてできない。
「じゃあ、私とテンリが一羽ずつもらいます」
「おいおい、その兄ちゃんに任せるっつーのは一羽殺すってことだぞ」
「じゃあ私がしばらくテンリと一緒に旅をします。それで安心でしょう?」
「いや、でもなぁ」
運転手はしばらく唸った後に「はー。しょーがねぇな。じゃああんたら二人に任せることにするよ。」と、運転手は引き下がってくれた。
* * *
ということで、俺は今サンダーバードかフェニックスかで迷っている。どのくらいかというと。どっかのゲームで御三家を選ぶときぐらいだ。
「なあアルテ、決めていいよ」
「テンリ、決めていいよ」
沈黙の3秒間。の後、俺は言った。
「じゃあコイツラの意思に従おう。コイツラに選んでもらおう」
「そうだね」
そう言って二匹を見る。
二匹は小さな泣き声とともに、一瞬でそれを判断した。
俺の方に走ってきたのはサンダーバードだった。
あれ、とは今目の前で喧嘩している二羽の鳥のことだ。
「あれはフェニックスとサンダーバードだよ」
「の、子供ですか…親はいないんですか?」
見渡す限りの平原の中、どこにも親らしき存在は認識できないが。
「いないだろう。もしいるなら親同士で大喧嘩してるさ。親がいない状態でハンターに見つかったら助からないぞ」
「フェニックスも狩るのか?すごいな…」
「ああフェニックスもサンダーバードも今や狩りの対象だ」
もう一で二羽に目をやると、喧嘩している二羽がどうにも可愛く見えてくる。このままハンターに狩られるのは可愛そうだ。
「……あの二匹俺がもらっていいですか?」
「だめだ。もし街中で見つかったらお前もろとも撃たれるぞ。今やフェニックスもサンダーバードも売れば高い金が付く程度にしか思われてないからな。もしそうなったらどうするつもりだ?」
「その時は俺が守りますよ」
「お前に守る力があるのか分からんからな。なんとも言えん」
その言葉に答えようとした時、ぎりぎり、と言う音が聞こえた。
そして、馬車の後ろからフードを被った男が弓を引き絞りながら出てきた。
弦が切れるギリギリまで引き絞られた弓は今にも二匹を貫きそうだった。
「やばい」
そう言って俺は馬車から飛び降りる。そして腰にかけられていた短刀に手を伸ばす。
「は?」
短刀には刀身がなかった。柄しかなかったのだ。
短刀で放たれた弓を弾こうと考えたのだが、刀身ありでも高難易度なそれを短剣の柄だけで、ましてや素人が成功させることはできるのだろうか。
―――無理だ。できない。ミスして矢がおでこに「ドスッ」だ。
―――じゃあどうすれば?自分を犠牲にしてコイツラを守る?
―――それとも見捨てて逃げる?それか、不可能に近い技に挑戦してみる?
頭の中が散らかった俺は選択できないままその場に立ち尽くした。
矢はすでに放たれている。
矢は二匹とハンターの間に入るように立ち尽くしている俺めがけて飛んでくる。
まるで「どけ」とつぶやくように。だが、俺は動かない、否、動けない。
―――ああ、死ぬのか。こんなくだらない死に方するんだったら転生した意味あったのかな。ないな。じゃあ転移なんてしなければよかった。
死を覚悟したつぎの瞬間目の前で何かが弾け、視界が白く染まる。
「テンリ!死ぬつもりなの?」
―――ああ、助けられたのか。くそ、何が守るだよ。
先程運転手に、守る。と言った自分が急に恥ずかしくなる。
「アルテ。ごめん、助かった」
後ろを見ると運転手が二匹を庇うように立っている。
運転手は俺が走るよりも前に走り出していた。それがわかった上で、俺は飛び出した。
いつの間にかハンターは消えていた。
「テンリ。」
何か言おうとしたアルテがこちらを振り返る。その拍子にアルテの頭からなにか落っこちる。
―――あれは…桂?
アルテに目をやる。アルテをを見て俺は驚きを隠せなかった。
「女の子?」
目の前にいるのは髪の短いアルテではなく、髪の長い美少女だった。
そして…こめかみより少し下あたりに赤黒い線が入り、そこから血がたれていいる。
「いや、そんな事よりもその傷大丈夫?!」
「ああ、へへ。防ぎそこねちゃって。大丈夫、かすり傷だよ」
そう言ってはにかむアルテは美少女にしか見えなかった。あのクール系男子のイメージはどこにもない。あれを演じていたのなら相当な演技力だ。
アルテは上着を脱いだ。どうやら、矢を防ぎきれずに破れてしまったようだ。
───申し訳ない
上着の下から現れた女性者の服に、自分の顔が少しぽっとなるのを感じた。
運転手を見ると彼も少し驚いたような顔をしているので、俺が変態なわけではない。アルテが美しすぎるのだ。
歳は俺と同じくらいだろうか。胸は大きいわけでもなく標準。だがボディーラインはすらっと綺麗だった。
アルテは頬に垂れた血を拭きながら言った。
「それでテンリ!あんな無茶をしたらだめだよ!怪我したらどうするの?」
「ごめん、もうしない」
……お互い様だ。
俺との距離が一メートルほどだった矢と俺の間に入るなんて。
アルテはそんな事全く思っていないようだった。
「ふう。んで?お二人さん。コイツラどうするつもりだい?」
運転手にそう言われて、俺は口ごもった。俺は自分の命をかけてアイツラを守るなんてできない。
「じゃあ、私とテンリが一羽ずつもらいます」
「おいおい、その兄ちゃんに任せるっつーのは一羽殺すってことだぞ」
「じゃあ私がしばらくテンリと一緒に旅をします。それで安心でしょう?」
「いや、でもなぁ」
運転手はしばらく唸った後に「はー。しょーがねぇな。じゃああんたら二人に任せることにするよ。」と、運転手は引き下がってくれた。
* * *
ということで、俺は今サンダーバードかフェニックスかで迷っている。どのくらいかというと。どっかのゲームで御三家を選ぶときぐらいだ。
「なあアルテ、決めていいよ」
「テンリ、決めていいよ」
沈黙の3秒間。の後、俺は言った。
「じゃあコイツラの意思に従おう。コイツラに選んでもらおう」
「そうだね」
そう言って二匹を見る。
二匹は小さな泣き声とともに、一瞬でそれを判断した。
俺の方に走ってきたのはサンダーバードだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる