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7話 監視なんだが
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勝負は一週間後。内容は異世界らしく、決闘に決まった。
ノリノリで話を進める俺に柿渕は戸惑い、勝手に景品にされたアイネは少し拗ねていたが気にしない。
日本では決して味わえない、こういった刺激のあるイベントを俺は求めていたのだ。これぞ異世界!
細かいルールを定め終えた後、俺はアイネとともにあてがわれた王城の一室でくつろいでいた。ソファーに座り、一週間後に思いを馳せる。
しかし、高揚していた俺の気分はアイネの一言で一気に地の底まで落ちることになった。
「ところでアキトさん、【自重】スキルがあるのにどうやって勝つつもりなんですか?」
「…………あ」
このジト目も短い間で随分と見慣れてきた。
「……もしかして、忘れてたんですか?」
「そんなわけないだろ! ダイジョーブダイジョーブ!」
……完っ全に忘れてたわ。
今の俺は、身体能力は一般人程度、使えるスキルは一個も無いというのが現状である。
対する向こうは、こうした争いごとに慣れていないとは言え、召喚特典で神から与えられた何らかのチートスキル持ち。
もしかしなくてもヤバいんじゃ……。
「……私がかかっているんですから、絶対に負けないでくださいね」
微かに涙を滲ませ、心配そうに俺を見つめてくるアイネ。これは脈アリと判断していいんじゃないだろうか。
……いや、そこでがっつくから俺は未だに童貞なのだ。ここは決闘で勝利してカッコいいところを見せ付ければ、向こうから告白してくるに違いない。
おいこらそこ、ヘタレとか言わない。
「一応聞くけど、スキルを外す方法は無いんだよな?」
「はい……あの……、怒ってますか?」
「絶対許さん(怒ってない)」
あ、つい本音が。
「でっ、でも! アキトさんが悪いんですからね! あちこちで女の子に声をかけるし、私が見てるのにあの子とキスなんてするから……」
「ん?」
この女神今なんて言った。
「もしかしてあの時のアレ、見てたの?」
あの時というのは、邪神を倒した直後に魔王とキスした時のことだろう。
つい雰囲気が盛り上がってやっちゃったあれだ。大事な所でヘタレてしまうことの多い俺の人生で、最初で唯一のキスである。
「だって心配で……」
顔を伏せるアイネを前に、俺の脳裏に嫌な考えがよぎった。
いや、でも女神がまさかそんなことで――
「【自重】スキル付けたのって、それが理由だったりしないよな?」
「……」
「沈黙は肯定と受け取るぞ?」
「とっ、とにかくです! アキトさんには少し自重が必要なんです! これからは私がしっかりと見張りますので、ヘタなことはしないでくださいね」
誤魔化したな。
「これからって、ずっと俺と一緒にいるつもりなのか?」
「向こうの世界は部下に頼んできたので、心配は無用です。たまに様子を見に行くことにはなるかも知れませんけどね」
俺は小さくガッツポーズをとる。
色々と言いたいことはあるが、アイネと一緒にいられるというのは素直に嬉しい。
これをキッカケに、俺のハーレムを作っていくのだ!
それに、俺にほんの少しあった非があったかもしれない。これ以上責めるのは止めておこう。
……復讐するかどうかは別だが。
俺はこちらを見つめ、返事を待っているアイネに手を差し出す。
「これからよろしくな、アイネ」
「はいっ! こちらこそよろしくお願いします!」
花が咲くような笑顔を浮かべたアイネが俺の手をとった瞬間のことだった。
「お?」
体が急に軽くなったのだ。前のようにとはいかないが、体の底から力が湧いてくる。
急いで俺がステータスを開くと、【自重】スキルのスキルレベルが五から三に下がっていた。
……なるほど、気分で変動ってこういうことか。
試しに俺は、繋がった手と反対の手を伸ばしてアイネの大きな胸に添える。
そしてそのまま――
「って、いきなり何をするんですかっ!」
「ぐはっ」
手を動かす前に俺はその手を掴まれ、そのまま投げ飛ばされた。
アイネは顔を真っ赤にして怒りを顕にしている。
体が重くなったのを感じ、再度ステータスを見ると、【自重】スキルのスキルレベルが八にまで上がっていた。
体は水中にいるように重い。
……上がり過ぎじゃないかコレ。
ノリノリで話を進める俺に柿渕は戸惑い、勝手に景品にされたアイネは少し拗ねていたが気にしない。
日本では決して味わえない、こういった刺激のあるイベントを俺は求めていたのだ。これぞ異世界!
細かいルールを定め終えた後、俺はアイネとともにあてがわれた王城の一室でくつろいでいた。ソファーに座り、一週間後に思いを馳せる。
しかし、高揚していた俺の気分はアイネの一言で一気に地の底まで落ちることになった。
「ところでアキトさん、【自重】スキルがあるのにどうやって勝つつもりなんですか?」
「…………あ」
このジト目も短い間で随分と見慣れてきた。
「……もしかして、忘れてたんですか?」
「そんなわけないだろ! ダイジョーブダイジョーブ!」
……完っ全に忘れてたわ。
今の俺は、身体能力は一般人程度、使えるスキルは一個も無いというのが現状である。
対する向こうは、こうした争いごとに慣れていないとは言え、召喚特典で神から与えられた何らかのチートスキル持ち。
もしかしなくてもヤバいんじゃ……。
「……私がかかっているんですから、絶対に負けないでくださいね」
微かに涙を滲ませ、心配そうに俺を見つめてくるアイネ。これは脈アリと判断していいんじゃないだろうか。
……いや、そこでがっつくから俺は未だに童貞なのだ。ここは決闘で勝利してカッコいいところを見せ付ければ、向こうから告白してくるに違いない。
おいこらそこ、ヘタレとか言わない。
「一応聞くけど、スキルを外す方法は無いんだよな?」
「はい……あの……、怒ってますか?」
「絶対許さん(怒ってない)」
あ、つい本音が。
「でっ、でも! アキトさんが悪いんですからね! あちこちで女の子に声をかけるし、私が見てるのにあの子とキスなんてするから……」
「ん?」
この女神今なんて言った。
「もしかしてあの時のアレ、見てたの?」
あの時というのは、邪神を倒した直後に魔王とキスした時のことだろう。
つい雰囲気が盛り上がってやっちゃったあれだ。大事な所でヘタレてしまうことの多い俺の人生で、最初で唯一のキスである。
「だって心配で……」
顔を伏せるアイネを前に、俺の脳裏に嫌な考えがよぎった。
いや、でも女神がまさかそんなことで――
「【自重】スキル付けたのって、それが理由だったりしないよな?」
「……」
「沈黙は肯定と受け取るぞ?」
「とっ、とにかくです! アキトさんには少し自重が必要なんです! これからは私がしっかりと見張りますので、ヘタなことはしないでくださいね」
誤魔化したな。
「これからって、ずっと俺と一緒にいるつもりなのか?」
「向こうの世界は部下に頼んできたので、心配は無用です。たまに様子を見に行くことにはなるかも知れませんけどね」
俺は小さくガッツポーズをとる。
色々と言いたいことはあるが、アイネと一緒にいられるというのは素直に嬉しい。
これをキッカケに、俺のハーレムを作っていくのだ!
それに、俺にほんの少しあった非があったかもしれない。これ以上責めるのは止めておこう。
……復讐するかどうかは別だが。
俺はこちらを見つめ、返事を待っているアイネに手を差し出す。
「これからよろしくな、アイネ」
「はいっ! こちらこそよろしくお願いします!」
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体が急に軽くなったのだ。前のようにとはいかないが、体の底から力が湧いてくる。
急いで俺がステータスを開くと、【自重】スキルのスキルレベルが五から三に下がっていた。
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試しに俺は、繋がった手と反対の手を伸ばしてアイネの大きな胸に添える。
そしてそのまま――
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アイネは顔を真っ赤にして怒りを顕にしている。
体が重くなったのを感じ、再度ステータスを見ると、【自重】スキルのスキルレベルが八にまで上がっていた。
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……上がり過ぎじゃないかコレ。
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