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0話 プロローグなんだが
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「終わったな……」
俺は目の前に横たわる、邪神だったモノに目を向ける。
ぬらりと光る異形の触手は地面に力なく横たわり、無数の目があった頭部には大きな風穴が空いていた。
「……」
ふと視線を感じた俺は、隣に目を向けた。
俺の隣にいた銀色の髪を持つ少女は、何かを言いたそうにこちらを見つめている。
……合った目線を外す。
「辛い戦いだった……」
「…………」
また俺が一人呟くが、少女は黙ってその赤く輝く瞳でひたすらに俺を見つめる。心なしか、俺を責めているような気がするのはなぜだろうか。
仕方なくため息を吐いた俺は、少女に話しかけた。
「……何か言いたいことが?」
「………………苦戦」
「しただろ?」
「――全くしておらんではないかっ!」
いやいや、ここに来るまでは本当に大変だったんだって。
無駄に異空間を作って閉じこもってるわ、四天王とか七天将とか変な肩書きの雑魚が群がってくるわで、ここに来るまで三分もかかってしまった。
「そもそも! 出会い頭に最強の邪神を一発って幾ら何でもデタラメすぎじゃ! まだ口上のために口を開いたところだったではないか! 向こうには向こうなりの美学があるんじゃぞ!」
ヒステリックに叫ぶ少女に、俺はやれやれと首を振る。
彼女は元魔王。何かしら思うところはあるのは仕方のないことだろう。
「俺は『自重』はしない主義だからな!」
「少しはせんか! 全く、何で妾はこんな奴を――んっ!」
俺は彼女の唇を自分の唇で塞ぐ。
とっさの出来事に目を白黒させた彼女だったが、状況を理解するとともに白く美しい顔が真っ赤に染まっていく。
数秒経って唇を離すと、「あっ……」と、名残惜しそうな声が漏れた。
「おっ、お前のためでもあったんだ。急ぐのは当然だろ」
はっ、恥ずかしいっ! カッコつけるところで吃ってしまった。……初めてだからこういうこともあるよな。
幸い、耳まで林檎のように赤くした彼女が気づくことはなかったようだ。
「……そうじゃな。これでようやく妾達は――」
そう彼女が言いかけた時だった。
俺の足元に青白く光る魔法陣が現れる。どこか見覚えのある魔法陣。
――って、これはまさか!
「なんじゃ? え? ……」
何が起きているのか分かっていない彼女を横目に、俺は後ろを振り向いた。
「お前らはっ!」
そこには、何人もの見知った顔が立っていた。
俺をこの世界に呼び出した国の国王に王女様。
宮廷魔道士の爺さんは杖をこちらに向けて何かを唱えている。
他にも獣人国の王様に、エルフの女王。果ては魔族の各族長まで。どうしてここにいるんだよ!?
何十人もの魔道士が一斉に呪文を詠唱すると同時に、俺の足元にある魔法陣の光がどんどん強くなっていく。
「――なっ、出られないだと! この力は……女神か! おい! てめえらここから出しやがれ! 俺を一体どうするつもりだ!」
「そなたには元の世界に帰ってもらう」
代表して前に一歩進み出た召喚国の国王が、無情にも告げた。
「何でだ! 恩を仇で返しやがって! 俺は――」
「うっさいわ! あれだけ国を滅茶苦茶にしやがって!」
「そうだそうだ! 魔王様まで誑かして!」
「私の国なんてもうメチャクチャよ! どうしてくれるの!」
各国の重鎮達が、品の無い罵倒を繰り返す。
これが人間の醜い本性か……。
俺があんなにも尽くしてやったと言うのに、なんて奴らだ。
「――アキトッ!」
我に帰った銀髪の少女が俺を呼んだのを最後に、俺は光に包まれていった――
俺は目の前に横たわる、邪神だったモノに目を向ける。
ぬらりと光る異形の触手は地面に力なく横たわり、無数の目があった頭部には大きな風穴が空いていた。
「……」
ふと視線を感じた俺は、隣に目を向けた。
俺の隣にいた銀色の髪を持つ少女は、何かを言いたそうにこちらを見つめている。
……合った目線を外す。
「辛い戦いだった……」
「…………」
また俺が一人呟くが、少女は黙ってその赤く輝く瞳でひたすらに俺を見つめる。心なしか、俺を責めているような気がするのはなぜだろうか。
仕方なくため息を吐いた俺は、少女に話しかけた。
「……何か言いたいことが?」
「………………苦戦」
「しただろ?」
「――全くしておらんではないかっ!」
いやいや、ここに来るまでは本当に大変だったんだって。
無駄に異空間を作って閉じこもってるわ、四天王とか七天将とか変な肩書きの雑魚が群がってくるわで、ここに来るまで三分もかかってしまった。
「そもそも! 出会い頭に最強の邪神を一発って幾ら何でもデタラメすぎじゃ! まだ口上のために口を開いたところだったではないか! 向こうには向こうなりの美学があるんじゃぞ!」
ヒステリックに叫ぶ少女に、俺はやれやれと首を振る。
彼女は元魔王。何かしら思うところはあるのは仕方のないことだろう。
「俺は『自重』はしない主義だからな!」
「少しはせんか! 全く、何で妾はこんな奴を――んっ!」
俺は彼女の唇を自分の唇で塞ぐ。
とっさの出来事に目を白黒させた彼女だったが、状況を理解するとともに白く美しい顔が真っ赤に染まっていく。
数秒経って唇を離すと、「あっ……」と、名残惜しそうな声が漏れた。
「おっ、お前のためでもあったんだ。急ぐのは当然だろ」
はっ、恥ずかしいっ! カッコつけるところで吃ってしまった。……初めてだからこういうこともあるよな。
幸い、耳まで林檎のように赤くした彼女が気づくことはなかったようだ。
「……そうじゃな。これでようやく妾達は――」
そう彼女が言いかけた時だった。
俺の足元に青白く光る魔法陣が現れる。どこか見覚えのある魔法陣。
――って、これはまさか!
「なんじゃ? え? ……」
何が起きているのか分かっていない彼女を横目に、俺は後ろを振り向いた。
「お前らはっ!」
そこには、何人もの見知った顔が立っていた。
俺をこの世界に呼び出した国の国王に王女様。
宮廷魔道士の爺さんは杖をこちらに向けて何かを唱えている。
他にも獣人国の王様に、エルフの女王。果ては魔族の各族長まで。どうしてここにいるんだよ!?
何十人もの魔道士が一斉に呪文を詠唱すると同時に、俺の足元にある魔法陣の光がどんどん強くなっていく。
「――なっ、出られないだと! この力は……女神か! おい! てめえらここから出しやがれ! 俺を一体どうするつもりだ!」
「そなたには元の世界に帰ってもらう」
代表して前に一歩進み出た召喚国の国王が、無情にも告げた。
「何でだ! 恩を仇で返しやがって! 俺は――」
「うっさいわ! あれだけ国を滅茶苦茶にしやがって!」
「そうだそうだ! 魔王様まで誑かして!」
「私の国なんてもうメチャクチャよ! どうしてくれるの!」
各国の重鎮達が、品の無い罵倒を繰り返す。
これが人間の醜い本性か……。
俺があんなにも尽くしてやったと言うのに、なんて奴らだ。
「――アキトッ!」
我に帰った銀髪の少女が俺を呼んだのを最後に、俺は光に包まれていった――
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