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二代目転移者と白亜の遺産
21話 ランクアップ試験
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「どうしたぁ? ビビって声も出ないのかよ!?」
「へっへっへ、ガキは家に帰ってママのオッパイでも飲んでな!」
「なんとか言ったらどうなんだ、えぇ!? エッボ様が話し掛けてやってんだろ!」
冒険者の粗暴なイメージそのものの様子で俺に絡んできた男達三人組。
このセリフといい、もしかしたら冒険者ギルドに台本でも用意されているんじゃないだろうか。
俺はチラリと受付嬢のデリアさんを見てみるが、彼女は嫌そうな顔で三人を見ていた。
それにしても、しっかりと依頼者と冒険者同士の分別は付いているらしい。
実はこのギルドに入った時から視線は感じていた。
テンプレがやはり来るのかと少し期待していたのだが、どうやら俺が冒険者登録をするのをわざわざ待っていてくれたようだ。
まあ、依頼者に絡んで追い返したら冒険者としはやっていけないだろうからそれは正しい。こんな所に無駄な知恵を回さないで欲しいとも思うが。
「……それで? もしかして試験官でもやってくれるのか?」
俺が無視しているといい加減うるさくなってきたので、話を振る。
テンプレイベントは大歓迎なんだが、クウが嫌がっているのでそろそろやめて欲しい。
「ほぉ、生意気なガキだな! いいだろう、このDランクのエッボ様が直々に相手をしてやろう!」
「エッボ様がやったら死ぬんじゃないですかァこのガキ」
「バーカ、死んだら冒険者には向いてないってことなんだよ! ギャハハハハ!」
どうやらエッボとか言う三人のリーダーっぽい男が相手をしてくれるようだ。
どう見ても三下キャラにしか見えないが、これでもDランクらしい。
どのくらいの強さか分からないので【鑑定】をかける。バレてもこれから戦うのだから構わないだろう。
----------------------------------------------------------
名前:エッボ
種族:人族
Lv:49
称号:重戦士 Dランク冒険者
<パッシブスキル>
身体強化(5) 精神耐性(4) 痛覚耐性(2)
毒耐性(1) 打撃耐性(2)
<アクティブスキル>
斧術(4) 火魔法(2) 威圧(2) 集中
気配察知(3)
----------------------------------------------------------
所詮はテンプレでしかないやられ役だったようだ。
レベルはそれなりにあるが、危険そうなスキルもない。これなら、クウの力を借りずとも普通に勝てそうだ。
だが、油断は禁物。もしかすると俺の持つ【偽装】のようなスキルを持っているかもしれないし、武器が強力なものかもしれない。
だから全力で狩ってやろう。
試験官も依頼扱いになるらしく、エッボ達は律儀に依頼書を提出する。
デリアさんは心配そうに俺を見るが、頷きを返すと渋々依頼を受理した。
俺達はギルドの裏手にある、修練場へと向かう。見れば騒ぎを見ていた他の冒険者もぞろぞろと付いてきていた。
あれだけ騒げば当然と言えるが、止めようとする者は居ないようだ。冒険者は実力がないとやっていけないと皆分かっているからか。
「ところでこれで死んだ場合はどうなるんでしょうか?」
付いてきていたデリアさんに質問をする。
「そうですね……、シンさんには申し訳ないですが、事故として処理されることが殆どです。ですが万が一死亡した場合、エッボには罰金のペナルティが課せられるので流石に死なせるようなことはないと思います」
申し訳なさそうに謝るデリアさんだが、俺が聞きたかったのはそっちではない。
確かに、戦う以上事故で死ぬこともあるだろうから何も無いって訳にはいかないだろうが、それでもやはり罪が軽いと感じる。このあたりは異世界って感じだ。
「俺があいつを殺してしまった場合は?」
「――っ! えっと、その場合はシンさんが依頼者ですので何もペナルティは無かった筈です。……ですが、エッボはあれでもDランクです。シンさんに勝てるとは……」
一瞬驚いた顔をしたものの、微妙そうな顔で苦笑いされてしまった。
きっとこんな感じで何人も新人が潰されていのだろう。この街には最高でもCランクまでの冒険者しかいないようだし、エッボはそれなりに強い方だと考えられる。
それにしてもこっちにペナルティは無いのか。向こうにペナルティが発生するのは依頼になっているからだろう。
これなら好きにやっても大丈夫そうだ。顔が自然とにやけてくる。
俺と手を繋いだクウも、俺が上機嫌なのが伝わったのか、ニコニコしている。
嗚呼、久しぶりにいい声が聞けるといいな。
ギルドに備え付けられた修練場は、思ったより広く、設備も整っている。
観客席には多くの冒険者達が集まり、野次や歓声を飛ばす。娯楽が少ないこの世界では、こういった争い事はいい酒のツマミになるだろう。
向かい合った俺とエッボは、お互いに武器を構える。
エッボは自前の身の丈はあろうかと言うほどの大斧。
俺はギルドから貸し出された二振りの長剣を両手にもつ。今回は【武器支配】と魔剣は封印して剣技と魔法で戦う。
あまり剣に頼るのも良くないし、今の自分がどこまでできるかを試す絶好の機会だと思ったからだ。
よく考えればまともな対人戦はこれが初めて。
城で兵士と戦った時も、小屋に住む男や訪ねてきた衛兵でさえ、奇襲で倒している。
だから丁度力を試すのにいいコイツが試験官を引き受けてくれてよかった。
いくら俺でも、何もしていない試験官を殺したりはできないからな。
そうなれば恨まれて面倒なことになる。
「へっ! それじゃあ始めるか。どっからでもかかってきな!」
「ごしゅじんさまがんばれー!」
エッボの声を合図に、戦いは始まる。
歓声は更に大きくなり、俺の斜め後ろでは俺の荷物を抱えたクウが応援してくれている。
「――フッ!」
俺は前傾姿勢でエッボとの距離を詰めると、右手に持った剣を袈裟斬りに振り抜く。
「――なっ!」
予想外の速さだったのだろう。エッボは慌てて大斧で攻撃を防ぐ。【鑑定】してみたが、特別な効果はないようだ。
だがあの反応で防げると言うことはDランクというのも伊達ではないらしい。
とはいえ、俺は両手に剣を持っている。
防がれた剣はそのままに、左手に持った剣でエッボの右腿を突き刺して機動力を奪う。
「がぁっ!」
一際歓声が上がる。止められるかと思ったが、まだ大丈夫のようだ。
「クソが!」
「よっと」
剣を受け止めていた大斧をそのまま振り抜くが、既に俺は離脱している。
「このガキが! 調子にのるん――」
エッボが何か言おうとしたが、再び俺は間を詰める。だが今度はエッボもしっかりと攻撃を受け止める。その後も幾つか剣戟を叩き込むが、上手く防がれてしまう。
俺の【剣術】のスキルレベルは五、こいつの【斧術】は四だ。
俺が二刀流に慣れていないことと、戦闘経験の差が大きいのだろう。
「へっ! なか、なか、やるじゃねえか!」
しかしエッボにも余裕はなさそうだ。俺の攻撃を防ぐのに精一杯で、反撃ができていない。
きっと、ここで止めても試験は合格になるだろう。
――だけどそれじゃあつまらない。
「『アースバレット』」
「――なっ! 【詠唱短縮】だと!?」
至近距離で【土魔法】を放つ。
ギリギリ防いだエッボは驚愕の表情を浮かべながら咄嗟に後ろへ飛び退く。
だが、負傷した足のせいで体勢が崩れてしまった。
「『ゲイルアップ』、……『アースバインド』」
その隙に【風魔法】で移動速度を上げてエッボへと走る。速度が上がった俺に構えようとしたエッボの足を土が絡み付くようにして動きを阻害する。
「こ、こうさ――」
降参なんてさせない。させる訳が無い。
そのまま動けないエッボの大斧を持っている左腕を切り落とす。
観客席からのどよめきも聞こえるが、止められる前に今度は反対の右腕も切り落とした。
「ぎゃあぁああああああ!!」
「エッボ様っ!」
「やめっ――」
エッボの絶叫が修練場に響く。
楽しい。この時だけは相手の感情がはっきりと分かる。苦痛、恐怖、絶望。
考える暇なんて与えない。分からなくて気持ち悪い心なんて全部壊せばいいんだから。
俺はあの日、両親を殺したことで知ったのだ。この解放されたような甘美なひと時を。
「あはははははは!!」
取り巻きの二人が駆け寄ってくるがもう遅い。
俺は自分の顔が笑っているのを自覚しながら剣を止めとばかりにエッボの心臓へと突き刺した。
「が……ァ……。――グウゥウウウ!」
即死はしない。俺の持つ【拷問】スキルによって暫くは生きている。
俺はグリグリと突き刺した剣を回しては引き抜き、また奥まで押し込む。
エッボの口からは血が大量に溢れ、俺の興奮を高めるスパイスになった。
「よくもエッボ様を!」
「このガキぶっ殺してやる!」
エッボが地面へ崩れ落ちたのと同時に、取り巻き二人が剣を持って襲いかかってくる。
これは重大なルール違反だな。
「クウ、――ご飯だ」
「わーい!」
クウに呼びかけると、いつの間にか襲いかかってくる二人と俺の間に移動していた。
やっぱり食いしん坊キャラだったか。
「チビ、どかねえとそのまま斬っちまうぞ!」
「そのガキの連れだ! 構わずやっちまえ!」
「――いっただっきまーす!」
クウにも斬り掛かろうとした二人だったが、クウは気にせず食事に移る。
クウの袖の余った両腕が色を黄色から半透明に変え、二メートル程にまで膨らむ。
「「え」」
その塊は横に二つに裂けたかと思うと、ズラリと鋭い歯の並んだ口が現れる。
そしてそのまま驚きで硬直していた二人をあっという間に丸呑みにした。
グシャッ! ゴリ、パキッ……!
そのまま内部で溶かされながら咀嚼される二人。半透明の体から透けて見えるそのあんまりな光景に、観客席に座った冒険者達も呆然としている。中には堪らず吐いている人もいた。
「……さて、これで試験は終わりだな」
「ヒッ!」
修練場の隅で吐いていたデリアさんに話し掛けると、青い顔で俺から距離を取る。
このままだと話にならないとため息をついた俺は、すっかり消化し終えて満足気なクウを連れて修練場の外へと歩き出す。
「それでは、また明日来ます」
静まり返った修練場に、俺の声はよく響いていた。
「へっへっへ、ガキは家に帰ってママのオッパイでも飲んでな!」
「なんとか言ったらどうなんだ、えぇ!? エッボ様が話し掛けてやってんだろ!」
冒険者の粗暴なイメージそのものの様子で俺に絡んできた男達三人組。
このセリフといい、もしかしたら冒険者ギルドに台本でも用意されているんじゃないだろうか。
俺はチラリと受付嬢のデリアさんを見てみるが、彼女は嫌そうな顔で三人を見ていた。
それにしても、しっかりと依頼者と冒険者同士の分別は付いているらしい。
実はこのギルドに入った時から視線は感じていた。
テンプレがやはり来るのかと少し期待していたのだが、どうやら俺が冒険者登録をするのをわざわざ待っていてくれたようだ。
まあ、依頼者に絡んで追い返したら冒険者としはやっていけないだろうからそれは正しい。こんな所に無駄な知恵を回さないで欲しいとも思うが。
「……それで? もしかして試験官でもやってくれるのか?」
俺が無視しているといい加減うるさくなってきたので、話を振る。
テンプレイベントは大歓迎なんだが、クウが嫌がっているのでそろそろやめて欲しい。
「ほぉ、生意気なガキだな! いいだろう、このDランクのエッボ様が直々に相手をしてやろう!」
「エッボ様がやったら死ぬんじゃないですかァこのガキ」
「バーカ、死んだら冒険者には向いてないってことなんだよ! ギャハハハハ!」
どうやらエッボとか言う三人のリーダーっぽい男が相手をしてくれるようだ。
どう見ても三下キャラにしか見えないが、これでもDランクらしい。
どのくらいの強さか分からないので【鑑定】をかける。バレてもこれから戦うのだから構わないだろう。
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名前:エッボ
種族:人族
Lv:49
称号:重戦士 Dランク冒険者
<パッシブスキル>
身体強化(5) 精神耐性(4) 痛覚耐性(2)
毒耐性(1) 打撃耐性(2)
<アクティブスキル>
斧術(4) 火魔法(2) 威圧(2) 集中
気配察知(3)
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所詮はテンプレでしかないやられ役だったようだ。
レベルはそれなりにあるが、危険そうなスキルもない。これなら、クウの力を借りずとも普通に勝てそうだ。
だが、油断は禁物。もしかすると俺の持つ【偽装】のようなスキルを持っているかもしれないし、武器が強力なものかもしれない。
だから全力で狩ってやろう。
試験官も依頼扱いになるらしく、エッボ達は律儀に依頼書を提出する。
デリアさんは心配そうに俺を見るが、頷きを返すと渋々依頼を受理した。
俺達はギルドの裏手にある、修練場へと向かう。見れば騒ぎを見ていた他の冒険者もぞろぞろと付いてきていた。
あれだけ騒げば当然と言えるが、止めようとする者は居ないようだ。冒険者は実力がないとやっていけないと皆分かっているからか。
「ところでこれで死んだ場合はどうなるんでしょうか?」
付いてきていたデリアさんに質問をする。
「そうですね……、シンさんには申し訳ないですが、事故として処理されることが殆どです。ですが万が一死亡した場合、エッボには罰金のペナルティが課せられるので流石に死なせるようなことはないと思います」
申し訳なさそうに謝るデリアさんだが、俺が聞きたかったのはそっちではない。
確かに、戦う以上事故で死ぬこともあるだろうから何も無いって訳にはいかないだろうが、それでもやはり罪が軽いと感じる。このあたりは異世界って感じだ。
「俺があいつを殺してしまった場合は?」
「――っ! えっと、その場合はシンさんが依頼者ですので何もペナルティは無かった筈です。……ですが、エッボはあれでもDランクです。シンさんに勝てるとは……」
一瞬驚いた顔をしたものの、微妙そうな顔で苦笑いされてしまった。
きっとこんな感じで何人も新人が潰されていのだろう。この街には最高でもCランクまでの冒険者しかいないようだし、エッボはそれなりに強い方だと考えられる。
それにしてもこっちにペナルティは無いのか。向こうにペナルティが発生するのは依頼になっているからだろう。
これなら好きにやっても大丈夫そうだ。顔が自然とにやけてくる。
俺と手を繋いだクウも、俺が上機嫌なのが伝わったのか、ニコニコしている。
嗚呼、久しぶりにいい声が聞けるといいな。
ギルドに備え付けられた修練場は、思ったより広く、設備も整っている。
観客席には多くの冒険者達が集まり、野次や歓声を飛ばす。娯楽が少ないこの世界では、こういった争い事はいい酒のツマミになるだろう。
向かい合った俺とエッボは、お互いに武器を構える。
エッボは自前の身の丈はあろうかと言うほどの大斧。
俺はギルドから貸し出された二振りの長剣を両手にもつ。今回は【武器支配】と魔剣は封印して剣技と魔法で戦う。
あまり剣に頼るのも良くないし、今の自分がどこまでできるかを試す絶好の機会だと思ったからだ。
よく考えればまともな対人戦はこれが初めて。
城で兵士と戦った時も、小屋に住む男や訪ねてきた衛兵でさえ、奇襲で倒している。
だから丁度力を試すのにいいコイツが試験官を引き受けてくれてよかった。
いくら俺でも、何もしていない試験官を殺したりはできないからな。
そうなれば恨まれて面倒なことになる。
「へっ! それじゃあ始めるか。どっからでもかかってきな!」
「ごしゅじんさまがんばれー!」
エッボの声を合図に、戦いは始まる。
歓声は更に大きくなり、俺の斜め後ろでは俺の荷物を抱えたクウが応援してくれている。
「――フッ!」
俺は前傾姿勢でエッボとの距離を詰めると、右手に持った剣を袈裟斬りに振り抜く。
「――なっ!」
予想外の速さだったのだろう。エッボは慌てて大斧で攻撃を防ぐ。【鑑定】してみたが、特別な効果はないようだ。
だがあの反応で防げると言うことはDランクというのも伊達ではないらしい。
とはいえ、俺は両手に剣を持っている。
防がれた剣はそのままに、左手に持った剣でエッボの右腿を突き刺して機動力を奪う。
「がぁっ!」
一際歓声が上がる。止められるかと思ったが、まだ大丈夫のようだ。
「クソが!」
「よっと」
剣を受け止めていた大斧をそのまま振り抜くが、既に俺は離脱している。
「このガキが! 調子にのるん――」
エッボが何か言おうとしたが、再び俺は間を詰める。だが今度はエッボもしっかりと攻撃を受け止める。その後も幾つか剣戟を叩き込むが、上手く防がれてしまう。
俺の【剣術】のスキルレベルは五、こいつの【斧術】は四だ。
俺が二刀流に慣れていないことと、戦闘経験の差が大きいのだろう。
「へっ! なか、なか、やるじゃねえか!」
しかしエッボにも余裕はなさそうだ。俺の攻撃を防ぐのに精一杯で、反撃ができていない。
きっと、ここで止めても試験は合格になるだろう。
――だけどそれじゃあつまらない。
「『アースバレット』」
「――なっ! 【詠唱短縮】だと!?」
至近距離で【土魔法】を放つ。
ギリギリ防いだエッボは驚愕の表情を浮かべながら咄嗟に後ろへ飛び退く。
だが、負傷した足のせいで体勢が崩れてしまった。
「『ゲイルアップ』、……『アースバインド』」
その隙に【風魔法】で移動速度を上げてエッボへと走る。速度が上がった俺に構えようとしたエッボの足を土が絡み付くようにして動きを阻害する。
「こ、こうさ――」
降参なんてさせない。させる訳が無い。
そのまま動けないエッボの大斧を持っている左腕を切り落とす。
観客席からのどよめきも聞こえるが、止められる前に今度は反対の右腕も切り落とした。
「ぎゃあぁああああああ!!」
「エッボ様っ!」
「やめっ――」
エッボの絶叫が修練場に響く。
楽しい。この時だけは相手の感情がはっきりと分かる。苦痛、恐怖、絶望。
考える暇なんて与えない。分からなくて気持ち悪い心なんて全部壊せばいいんだから。
俺はあの日、両親を殺したことで知ったのだ。この解放されたような甘美なひと時を。
「あはははははは!!」
取り巻きの二人が駆け寄ってくるがもう遅い。
俺は自分の顔が笑っているのを自覚しながら剣を止めとばかりにエッボの心臓へと突き刺した。
「が……ァ……。――グウゥウウウ!」
即死はしない。俺の持つ【拷問】スキルによって暫くは生きている。
俺はグリグリと突き刺した剣を回しては引き抜き、また奥まで押し込む。
エッボの口からは血が大量に溢れ、俺の興奮を高めるスパイスになった。
「よくもエッボ様を!」
「このガキぶっ殺してやる!」
エッボが地面へ崩れ落ちたのと同時に、取り巻き二人が剣を持って襲いかかってくる。
これは重大なルール違反だな。
「クウ、――ご飯だ」
「わーい!」
クウに呼びかけると、いつの間にか襲いかかってくる二人と俺の間に移動していた。
やっぱり食いしん坊キャラだったか。
「チビ、どかねえとそのまま斬っちまうぞ!」
「そのガキの連れだ! 構わずやっちまえ!」
「――いっただっきまーす!」
クウにも斬り掛かろうとした二人だったが、クウは気にせず食事に移る。
クウの袖の余った両腕が色を黄色から半透明に変え、二メートル程にまで膨らむ。
「「え」」
その塊は横に二つに裂けたかと思うと、ズラリと鋭い歯の並んだ口が現れる。
そしてそのまま驚きで硬直していた二人をあっという間に丸呑みにした。
グシャッ! ゴリ、パキッ……!
そのまま内部で溶かされながら咀嚼される二人。半透明の体から透けて見えるそのあんまりな光景に、観客席に座った冒険者達も呆然としている。中には堪らず吐いている人もいた。
「……さて、これで試験は終わりだな」
「ヒッ!」
修練場の隅で吐いていたデリアさんに話し掛けると、青い顔で俺から距離を取る。
このままだと話にならないとため息をついた俺は、すっかり消化し終えて満足気なクウを連れて修練場の外へと歩き出す。
「それでは、また明日来ます」
静まり返った修練場に、俺の声はよく響いていた。
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