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二代目転移者と白亜の遺産
17話 穏やかな一日
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城を脱出して、この小屋で暮らすようになってちょうど三週間が経った。
八日目には、樵と思われる毛むくじゃらの腕をもったごついオッサンが三人、小屋を尋ねてきたが、対応も面倒なのでクウのご飯になってもらった。
その時になって初めて、人型になったクウがどうやって食べるのか心配になったが、見る見るうちに腕が膨らむと、牙がズラリと並んだ口が現れ、丸呑みにしてしまった。
男達を丸呑みにするほどの大きさまで膨らんだ半透明の口の中で、噛み砕かれながら瞬く間に溶かされる光景を見て、さしもの俺も遠い目になったのも仕方あるまい。
幼女の口が大きく開いて齧り付く様子をイメージしていた俺としては、若干の安心もあったが、どう見てもその光景はホラーのそれだ。
そしてつい先日、樵が帰ってこないことに疑問を持ったのか、武装した衛兵が二人やってきたのだ。
まあ、この世界に来たばかりの俺ならいざ知らず、王城の宝物庫を守る兵士を倒せた俺が負けるはずもない。一人はクウに捕らえてもらい、情報を聞き出した上で色んな実験に協力してもらった。
残念ながら今日の朝に冷たくなっていたが、彼のおかげでこの辺りの情報を粗方、知ることができたのは大きい。
あ、もちろん死んだ兵士はこの後スタッフが美味しく頂きました。
何でも食べられるクウと違い、俺の残りの食料も心許なくなってきたし、そろそろこの小屋も捨てるべきだろう。
衛兵が帰ってこないとなると、俺の手に負えない相手や大人数の人間がやってくる可能性がある。
という訳で、急いで荷物を纏めなければいけないのだが、俺は今椅子に座り、対面に座るクウをジッと凝視していた。
かれこれこの状態で三時間は経過している。
クウも最初の頃は見つめられることに照れを見せていたが、今では暇そうに足をばたつかせながら鼻歌を歌っている。
「~♪ ~~~♪」
そろそろ目が痛くなってきた。
充血した目を見開き、幼女をガン見する俺の姿を見れば、きっと死んだ両親も泣くに違いない。
たがこれは絶対に必要なことだ。
挫けそうな心を励ましながらも、俺は何度もクウに【鑑定】をかけ続ける。
ステータスが何度も出ては消える。
すると突然、ステータスが見えなくなった。
「――よしっ!」
「あ! できたの!?」
思わずガッツポーズをとった俺の姿に、目標を達成したことが分かったのか、クウは椅子から降りて立ち上がると椅子に座る俺の腰に抱き着いてきた。
俺は頬を緩ませてクウの頭を軽く撫でる。
「ああ、多分な。クウ、一度【隠蔽】を解除してくれるか?」
「りょーかい!」
ビシッと右手を敬礼の形にしたクウに癒されながら、再度【鑑定】をかけた。
----------------------------------------------------------
名前:クウ
種族:イノセンススライム
Lv:71
称号:SSSランク魔物 羽吹真夜の従魔
禁忌を喰らいし者
<パッシブスキル>
物理耐性(7) 全属性吸収 状態異常無効
並列思考(5) 統率
<アクティブスキル>
再生(6) 隠蔽(8) 吸収 突進 形状変化
<ユニークスキル>
無限分裂 万物融解
----------------------------------------------------------
相変わらずぶっ飛んだステータスだが、今回の目的はスキル【隠蔽】だ。
このスキルは【鑑定】スキルよりスキルレベルが高い場合、ステータス閲覧を妨害することができるというものだ。
現在の俺の【鑑定】は、スキルレベルが八とクウと同じだが、レベルはクウの方が高いので見れなくなる。
俺達はここ二週間、ほぼ毎日のように【鑑定】をかけ続けて【隠蔽】のスキルレベルを上げるために時間を使った。
元々、【鑑定】スキルを持っている人は少ない。転移者は全員最初から習得していたが、それは例外だ。
これだけ【隠蔽】のスキルレベルを上げておけば、殆どクウのステータスを見られて騒ぎになることはないだろう。
「これで準備は完了だな。クウ、明日には街に向かうぞ。そろそろ人が恋しくなって……はないけど、食料も仕入れたいしな」
「おおきいとこいけばおいしいものたべれるー?」
「ああ、クウのお陰でお金もあるし好きなだけ食わせてやる!」
「やったー!! ごしゅじんさまだいすきー!」
いい加減、干し肉ばかりの生活は飽きたところだ。この小屋には保存食として干し肉がそれなりにあったが、そろそろ野菜も食べたい。
クウもしょっぱい干し肉は口に合わないらしく、食べる度に顔を顰めていたからな。
俺達が今いる場所は、大陸の西端にあるシオン王国から東南に進み、大陸中央にあるアロンディア聖国と、大陸の四分の一を占め、南へと広がるヴェグリーズ大森林の間だ。
このまま森の奥へと進めばヴェグリーズ獣王国にも行けるが、一度森を出てアロンディア聖国を目指した方が近い。
ここから一つの村と一つの街を経由して、とりあえずはアロンディア聖国の首都を目指すつもりだ。
アロンディア聖国首都を目指す理由の一つに、その都市があらゆる種族を平等に扱い、『楽園』と呼ばれるほど治安がいいと、城で聞いたことがあるからだ。
いくら強力な武器やユニークスキルを持っていても、俺はまだまだ弱過ぎる。
クウならば何とかなるような気がするが、この命の価値が低い世界で安全に生き残るにはもっとレベルを上げなくてはならない。
幸い、この世界にはファンタジー定番の冒険者という職業がある。
とりあえずアロンディア聖国で冒険者登録をして、暫くは地道に強くなっていこう。
窓から外を見れば、まだ昼を少し過ぎたくらいだ。まだ日は高い。
今日は一日のんびりして、明日から動くとしよう。
「クウ、たまには一緒に遊ぶか?」
「ほんとに!? やったー!」
こうして、穏やかな一日は過ぎていった。
八日目には、樵と思われる毛むくじゃらの腕をもったごついオッサンが三人、小屋を尋ねてきたが、対応も面倒なのでクウのご飯になってもらった。
その時になって初めて、人型になったクウがどうやって食べるのか心配になったが、見る見るうちに腕が膨らむと、牙がズラリと並んだ口が現れ、丸呑みにしてしまった。
男達を丸呑みにするほどの大きさまで膨らんだ半透明の口の中で、噛み砕かれながら瞬く間に溶かされる光景を見て、さしもの俺も遠い目になったのも仕方あるまい。
幼女の口が大きく開いて齧り付く様子をイメージしていた俺としては、若干の安心もあったが、どう見てもその光景はホラーのそれだ。
そしてつい先日、樵が帰ってこないことに疑問を持ったのか、武装した衛兵が二人やってきたのだ。
まあ、この世界に来たばかりの俺ならいざ知らず、王城の宝物庫を守る兵士を倒せた俺が負けるはずもない。一人はクウに捕らえてもらい、情報を聞き出した上で色んな実験に協力してもらった。
残念ながら今日の朝に冷たくなっていたが、彼のおかげでこの辺りの情報を粗方、知ることができたのは大きい。
あ、もちろん死んだ兵士はこの後スタッフが美味しく頂きました。
何でも食べられるクウと違い、俺の残りの食料も心許なくなってきたし、そろそろこの小屋も捨てるべきだろう。
衛兵が帰ってこないとなると、俺の手に負えない相手や大人数の人間がやってくる可能性がある。
という訳で、急いで荷物を纏めなければいけないのだが、俺は今椅子に座り、対面に座るクウをジッと凝視していた。
かれこれこの状態で三時間は経過している。
クウも最初の頃は見つめられることに照れを見せていたが、今では暇そうに足をばたつかせながら鼻歌を歌っている。
「~♪ ~~~♪」
そろそろ目が痛くなってきた。
充血した目を見開き、幼女をガン見する俺の姿を見れば、きっと死んだ両親も泣くに違いない。
たがこれは絶対に必要なことだ。
挫けそうな心を励ましながらも、俺は何度もクウに【鑑定】をかけ続ける。
ステータスが何度も出ては消える。
すると突然、ステータスが見えなくなった。
「――よしっ!」
「あ! できたの!?」
思わずガッツポーズをとった俺の姿に、目標を達成したことが分かったのか、クウは椅子から降りて立ち上がると椅子に座る俺の腰に抱き着いてきた。
俺は頬を緩ませてクウの頭を軽く撫でる。
「ああ、多分な。クウ、一度【隠蔽】を解除してくれるか?」
「りょーかい!」
ビシッと右手を敬礼の形にしたクウに癒されながら、再度【鑑定】をかけた。
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名前:クウ
種族:イノセンススライム
Lv:71
称号:SSSランク魔物 羽吹真夜の従魔
禁忌を喰らいし者
<パッシブスキル>
物理耐性(7) 全属性吸収 状態異常無効
並列思考(5) 統率
<アクティブスキル>
再生(6) 隠蔽(8) 吸収 突進 形状変化
<ユニークスキル>
無限分裂 万物融解
----------------------------------------------------------
相変わらずぶっ飛んだステータスだが、今回の目的はスキル【隠蔽】だ。
このスキルは【鑑定】スキルよりスキルレベルが高い場合、ステータス閲覧を妨害することができるというものだ。
現在の俺の【鑑定】は、スキルレベルが八とクウと同じだが、レベルはクウの方が高いので見れなくなる。
俺達はここ二週間、ほぼ毎日のように【鑑定】をかけ続けて【隠蔽】のスキルレベルを上げるために時間を使った。
元々、【鑑定】スキルを持っている人は少ない。転移者は全員最初から習得していたが、それは例外だ。
これだけ【隠蔽】のスキルレベルを上げておけば、殆どクウのステータスを見られて騒ぎになることはないだろう。
「これで準備は完了だな。クウ、明日には街に向かうぞ。そろそろ人が恋しくなって……はないけど、食料も仕入れたいしな」
「おおきいとこいけばおいしいものたべれるー?」
「ああ、クウのお陰でお金もあるし好きなだけ食わせてやる!」
「やったー!! ごしゅじんさまだいすきー!」
いい加減、干し肉ばかりの生活は飽きたところだ。この小屋には保存食として干し肉がそれなりにあったが、そろそろ野菜も食べたい。
クウもしょっぱい干し肉は口に合わないらしく、食べる度に顔を顰めていたからな。
俺達が今いる場所は、大陸の西端にあるシオン王国から東南に進み、大陸中央にあるアロンディア聖国と、大陸の四分の一を占め、南へと広がるヴェグリーズ大森林の間だ。
このまま森の奥へと進めばヴェグリーズ獣王国にも行けるが、一度森を出てアロンディア聖国を目指した方が近い。
ここから一つの村と一つの街を経由して、とりあえずはアロンディア聖国の首都を目指すつもりだ。
アロンディア聖国首都を目指す理由の一つに、その都市があらゆる種族を平等に扱い、『楽園』と呼ばれるほど治安がいいと、城で聞いたことがあるからだ。
いくら強力な武器やユニークスキルを持っていても、俺はまだまだ弱過ぎる。
クウならば何とかなるような気がするが、この命の価値が低い世界で安全に生き残るにはもっとレベルを上げなくてはならない。
幸い、この世界にはファンタジー定番の冒険者という職業がある。
とりあえずアロンディア聖国で冒険者登録をして、暫くは地道に強くなっていこう。
窓から外を見れば、まだ昼を少し過ぎたくらいだ。まだ日は高い。
今日は一日のんびりして、明日から動くとしよう。
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