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完全犯罪は異世界転移で
6話 魔法講義と戦闘訓練
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朝日が窓から差し込み、暖かな光が部屋を満たす。今日は異世界に召喚されて三日目、魔法講義と戦闘訓練の日だ。
起床した俺は、用意された丈夫そうな作りの布服に着替える。今まではずっと制服だったのだが、戦闘訓練には向かないので渋々これを着ることになった。
昨日、部屋に戻ってからはずっとここからの脱出方法を考えていたが、現段階では無理だと悟った。
とはいえ、このまま戦争の道具に使われるのもごめんだ。脱出してから生きていくためにも、もう少しここで学びつつ、方法を探ることにした。
「それに魔法……楽しみだしな」
少し浮かれているのを自覚しながらも、俺は準備を進めていった――。
この世界――ファルシアには、魔法という概念が存在している。
生物は皆、空気中に漂う魔素と呼ばれるものを自然と取り込み、自らの魔力として変換する。
それを使って発動するのが魔法だという。
魔法には多くの種類が存在する。
基本四属性の火、水、風、土に加え、上位属性の光、闇、氷、雷。
他にも使い手がほとんど存在していない、無属性や空間属性。ユニーク魔法と呼ばれる固有のものまであるという。
この世界ではそれら多くの魔法を使いこなすこで、魔法の込められた魔道具と呼ばれる便利なアイテムを作ったり、魔物との戦いに用いたりしてきた。
以上が、昨日に引き続き講義を行った爺さんが教えてくれたことである。
ちなみにこの爺さん、名前をウルリヒ・リンドパイントナーと言うらしい。この国に仕える宮廷魔導師の一人で、結構な大物だと分かった。
「それでは、順番に並んでこの玉の上に手を置いてくれ。適性属性が分かるはずじゃ」
一般的な人間が持つ適性属性の数はおよそ一つから二つ。三つも持っている人間は、一万人に一人くらいだと言う。
「……む、そなたの持つ属性は、土と風じゃな。ふむ、職称号が魔剣士ならかなり優秀なほうじゃろう」
俺の適性属性は土と風のようだ。こういう場合だと少ないかと心配もしたが、他にも同じような数の生徒は多くいたので、悪くは無さそうだ。些か地味ではあるが。
当然のように闇を除く基本四属性と光属性の適性を出した幸正義や、適性が一つもない、という強化フラグを順調に建設しているいじめられっ子の茅野優馬の事は、この際置いておく。
爺さんの言った職称号というのは、そのままの意味だ。俺の称号の[魔剣士]のように、全ての人間には[戦士]や[魔法使い]といった職業を表す称号がある。
これらの称号には、その職に合うスキルの成長速度が早くなるなどの補正がかかるらしい。これも昨日、講義で教わったことだ。
この後、魔法の訓練を行ったが、そう簡単には行かないらしく、使えないまま午前の講義は終了した。
午後からは戦闘訓練だ。この時間では、各々が取りたい戦闘スキルに沿って、訓練を受けることが出来る。
俺は渡されたスキル別の訓練表を見て、二つの訓練を受けることに決めた。
一つ目に受けるのは、【剣術】の訓練だ。
やはりファンタジーと言ったら剣なのか、多くの男子生徒の姿が見受けられた。
剣道部の樫尾の姿もある。
この訓練では、主に基礎体力作りと実戦練習だ。城の中庭に作られたそれなりに広い訓練場で、二時間程走らされたかと思えば、続いて重たい鉄の剣を何回も素振りするように指示される。
帰宅部だった俺にそれについて行ける体力もなく、当然のように途中でへばってしまった。
すると、監督役をしている騎士団長に無理矢理立たされ、倒れるまで続きをやらされる。
遂には倒れた俺が、顔だけ上げて周りを見てみると、死屍累々と言った様子で、他の生徒達も倒れている。
……どうやら訓練には、丁寧に扱うとかそういったものはないらしい。
しかしそこで、剣の打ち合う音が聞こえた。そこへ顔を向けると、大粒の汗を垂らしながらも騎士団長と剣を合わせる樫尾がいた。
次は実戦に移ったらしく、笑みを浮かべながら剣を振るう。どちらも刃引きしてあるとはいえ、鉄でできた長剣を一切の躊躇なく振るうその姿は、まさに武人という言葉がしっくりきた。
とはいえ相手は騎士団長。圧倒的な経験の違いと身体能力の差で、剣を眼前に突きつけてその戦いは終わる。
そしてその光景を最後に、俺は意識を手放した――。
俺の目が覚めたのはそれから一時間後。知らない天井の前に知っている顔が目に映った。
ベッドの端で心配そうにこちらを見つめる聖花と目が合って驚きはしたものの、軽く言葉を交わしてからさっさと次の訓練場所へと向かう。
次の訓練で得られるスキルは【調教】だ。
この世界には、『魔物』と呼ばれる生物が至る所に生息しており、人と共存するものもいれば、人を襲って喰らうものも数多く存在する。
このスキルは、言ってみればその魔物をテイムするスキルである。
魔物を従え、契約によってパスを繋ぐことでその魔物は従魔となり、完全な主従関係が成立する。
しかし、このスキルは習得も難しく、習得したとしてもなかなかテイムすることができないんだそうだ。
だが人に頼れない以上、このスキルは俺にとって必要なものになる筈だ。
城から抜け出した後、戦力がいる。命の価値が軽く、危険なこの世界で安全に行動するためには絶対に裏切らない仲間が欲しいのだ。
それと、可愛い従魔を愛でたいという気持ちもある。というかそっちがメインだ。
そんな訳で俺は今、モフモフに囲まれていた。
----------------------------------------------------------
名前:コロ
種族:フォレストウルフ
Lv:16
称号:Fランク魔物 マルクの従魔
<パッシブスキル>
身体能力(2)
<アクティブスキル>
威圧(1) 瞬足
----------------------------------------------------------
これがそのモフモフ達の内、一匹の【鑑定】結果だ。大型犬くらいのサイズの狼の頭を撫でると、強請るように頭を体に擦り付けてくる。
こいつらは講師のマルク先生の従魔だ。それが何匹も俺に集まっている。
……【調教】習得完了!
起床した俺は、用意された丈夫そうな作りの布服に着替える。今まではずっと制服だったのだが、戦闘訓練には向かないので渋々これを着ることになった。
昨日、部屋に戻ってからはずっとここからの脱出方法を考えていたが、現段階では無理だと悟った。
とはいえ、このまま戦争の道具に使われるのもごめんだ。脱出してから生きていくためにも、もう少しここで学びつつ、方法を探ることにした。
「それに魔法……楽しみだしな」
少し浮かれているのを自覚しながらも、俺は準備を進めていった――。
この世界――ファルシアには、魔法という概念が存在している。
生物は皆、空気中に漂う魔素と呼ばれるものを自然と取り込み、自らの魔力として変換する。
それを使って発動するのが魔法だという。
魔法には多くの種類が存在する。
基本四属性の火、水、風、土に加え、上位属性の光、闇、氷、雷。
他にも使い手がほとんど存在していない、無属性や空間属性。ユニーク魔法と呼ばれる固有のものまであるという。
この世界ではそれら多くの魔法を使いこなすこで、魔法の込められた魔道具と呼ばれる便利なアイテムを作ったり、魔物との戦いに用いたりしてきた。
以上が、昨日に引き続き講義を行った爺さんが教えてくれたことである。
ちなみにこの爺さん、名前をウルリヒ・リンドパイントナーと言うらしい。この国に仕える宮廷魔導師の一人で、結構な大物だと分かった。
「それでは、順番に並んでこの玉の上に手を置いてくれ。適性属性が分かるはずじゃ」
一般的な人間が持つ適性属性の数はおよそ一つから二つ。三つも持っている人間は、一万人に一人くらいだと言う。
「……む、そなたの持つ属性は、土と風じゃな。ふむ、職称号が魔剣士ならかなり優秀なほうじゃろう」
俺の適性属性は土と風のようだ。こういう場合だと少ないかと心配もしたが、他にも同じような数の生徒は多くいたので、悪くは無さそうだ。些か地味ではあるが。
当然のように闇を除く基本四属性と光属性の適性を出した幸正義や、適性が一つもない、という強化フラグを順調に建設しているいじめられっ子の茅野優馬の事は、この際置いておく。
爺さんの言った職称号というのは、そのままの意味だ。俺の称号の[魔剣士]のように、全ての人間には[戦士]や[魔法使い]といった職業を表す称号がある。
これらの称号には、その職に合うスキルの成長速度が早くなるなどの補正がかかるらしい。これも昨日、講義で教わったことだ。
この後、魔法の訓練を行ったが、そう簡単には行かないらしく、使えないまま午前の講義は終了した。
午後からは戦闘訓練だ。この時間では、各々が取りたい戦闘スキルに沿って、訓練を受けることが出来る。
俺は渡されたスキル別の訓練表を見て、二つの訓練を受けることに決めた。
一つ目に受けるのは、【剣術】の訓練だ。
やはりファンタジーと言ったら剣なのか、多くの男子生徒の姿が見受けられた。
剣道部の樫尾の姿もある。
この訓練では、主に基礎体力作りと実戦練習だ。城の中庭に作られたそれなりに広い訓練場で、二時間程走らされたかと思えば、続いて重たい鉄の剣を何回も素振りするように指示される。
帰宅部だった俺にそれについて行ける体力もなく、当然のように途中でへばってしまった。
すると、監督役をしている騎士団長に無理矢理立たされ、倒れるまで続きをやらされる。
遂には倒れた俺が、顔だけ上げて周りを見てみると、死屍累々と言った様子で、他の生徒達も倒れている。
……どうやら訓練には、丁寧に扱うとかそういったものはないらしい。
しかしそこで、剣の打ち合う音が聞こえた。そこへ顔を向けると、大粒の汗を垂らしながらも騎士団長と剣を合わせる樫尾がいた。
次は実戦に移ったらしく、笑みを浮かべながら剣を振るう。どちらも刃引きしてあるとはいえ、鉄でできた長剣を一切の躊躇なく振るうその姿は、まさに武人という言葉がしっくりきた。
とはいえ相手は騎士団長。圧倒的な経験の違いと身体能力の差で、剣を眼前に突きつけてその戦いは終わる。
そしてその光景を最後に、俺は意識を手放した――。
俺の目が覚めたのはそれから一時間後。知らない天井の前に知っている顔が目に映った。
ベッドの端で心配そうにこちらを見つめる聖花と目が合って驚きはしたものの、軽く言葉を交わしてからさっさと次の訓練場所へと向かう。
次の訓練で得られるスキルは【調教】だ。
この世界には、『魔物』と呼ばれる生物が至る所に生息しており、人と共存するものもいれば、人を襲って喰らうものも数多く存在する。
このスキルは、言ってみればその魔物をテイムするスキルである。
魔物を従え、契約によってパスを繋ぐことでその魔物は従魔となり、完全な主従関係が成立する。
しかし、このスキルは習得も難しく、習得したとしてもなかなかテイムすることができないんだそうだ。
だが人に頼れない以上、このスキルは俺にとって必要なものになる筈だ。
城から抜け出した後、戦力がいる。命の価値が軽く、危険なこの世界で安全に行動するためには絶対に裏切らない仲間が欲しいのだ。
それと、可愛い従魔を愛でたいという気持ちもある。というかそっちがメインだ。
そんな訳で俺は今、モフモフに囲まれていた。
----------------------------------------------------------
名前:コロ
種族:フォレストウルフ
Lv:16
称号:Fランク魔物 マルクの従魔
<パッシブスキル>
身体能力(2)
<アクティブスキル>
威圧(1) 瞬足
----------------------------------------------------------
これがそのモフモフ達の内、一匹の【鑑定】結果だ。大型犬くらいのサイズの狼の頭を撫でると、強請るように頭を体に擦り付けてくる。
こいつらは講師のマルク先生の従魔だ。それが何匹も俺に集まっている。
……【調教】習得完了!
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