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完全犯罪は異世界転移で
3話 異世界2日目
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意識がゆっくりと浮上する。でもこの心地よい微睡みにもう少し浸ろうと寝返りを打ち枕に頭を擦り付ける。
しかしそこで気付いた。いつもの布団と感触が違うことに。
「――ハッ!」
瞬間、意識は完全に覚醒し、警戒心を剥き出しにして少年は飛び起きた。
羽吹真夜、異世界二日目の始まりだった。
△ ▼ △▼ △ ▼ △▼ △ ▼ △▼ △ ▼ △
「知らない天井だ、とか言いたかったなぁ……」
ここに来てお約束を自ら逃したことに対し、朝から悔しい思いだった。
窓から朝日が差し込む中、気を取り直した俺は昨日と同じようにベッドに腰掛ける。
昨日は一日中、宛てがわれた部屋に閉じこもっていた。何度か部屋から追い出したメイドが食事を運んできたが、それだけだ。
扉を開けるのは、食事を受け取る時と、外にあるトイレに行く時だけ。
食事に毒でも入っていないかと警戒はしたが、盛る理由が心当たりにないのとそもそも入っていても分からないので諦めた。
そのため、残りは状況確認とステータスの能力について検証する時間に当てた。
その結果、この世界に持ち込んだ教科書や衣服なんかは普通に変化が無かったが、携帯電話は全く使えなくなっていることが分かった。元の世界の物で役に立ちそうな物は殆どなく、仕方なく確認後はひたすらステータスの検証をしていた。
俺は昨日の成果を見るため、ステータスを開く。
----------------------------------------------------------
名前:羽吹真夜
種族:人族
Lv:1
称号:人間不信 親殺し 転移者 魔剣士
<パッシブスキル>
身体強化(1) 精神耐性(4)
<アクティブスキル>
家事(3) 鑑定(2) 拷問 直感 気配察知(1)
<ユニークスキル>
武器支配(1) 偽装
----------------------------------------------------------
検証の結果、意識すれば【偽装】を施したステータスと、していないステータスをそれぞれ分けて見ることができることが分かった。
どうやら、自分の持つスキルの使い方や効果は何となく分かるようだ。お陰で、大体の能力の把握はできた。
【拷問】はその名の通り、【拷問】に関係する行動をとる時、補正がかかる。それは対象の痛覚を増幅させたり、誤って死なないようにできるというものだ。
【直感】はただ感覚が鋭くなる、というものだ。昨日感じた、嫌な感覚もこれの効果だった可能性は高く、単純ではあるが重要そうなスキルと言える。
【鑑定】は対象に使うよう念じると、その対象のデータを見ることができた。
何度も試したせいか、括弧の中の数値が変わっている。どうやらこれはそのスキルの熟練度、スキルレベルと言うらしい。スキルによってあるのと無いのとがあるんだとか。
どうして部屋に引きこもっていた俺がそんな事を知っているのかと言うと、ここの壁が薄いことが関係している。隣はクラスメイトの部屋。
そいつがお付きのメイドにあれこれ質問しているのを、壁に聞き耳を立てて盗み聞きしていたのだ。
おかげで【気配察知】というスキルまで得ることまでできて一石二鳥だった。
称号についても多少知ることができた。
どうやらそれぞれ称号に効果があるらしいが、詳しいことは未だ分かってないものも多いらしい。
例えば[ビーストキラー]という称号を持っていたとする。すると、獣系の魔物に対してのみ、発揮できる力が少し強くなる、と言った具合だ。
俺の持つ【偽装】ともう一つのユニークスキル、【武器支配】についても色々と試してみた。
俺は部屋の隅に置いてある食器から、ナイフを一本取る。
----------------------------------------------------------
[銀のナイフ]
等級:中級
食器用。切れ味は鋭い。
----------------------------------------------------------
これがナイフの【鑑定】結果だ。等級がいくつまであるのかは分からないが、恐らく食器としては相当良い部類に入るだろう。
このナイフに対して、【武器支配】を使うように念じる。すると、ナイフはひとりでに浮き、俺の眼前で静止する。
そのまま動かすように意識すると、自在に回転したり飛ばすことができた。
どうやらこれが俺の能力らしい。武器を操り支配する、何とも微妙な能力だ。
スキルレベルが低いためか、動かせるのは一本。能力が及ぶ範囲はは五メートルまでだ。部屋にある家具なんかにも発動できるか試してはみたが、動くことは無かった。対象はナイフのように武器と認識されたものだけのようだ。
強い能力ではあると思いたいが、盗み聞きした話では、召喚された者が持つユニークスキルは基本、一つから三つ。俺の【偽装】は戦闘には使えないので実質一つだ。とはいえ、結構個人的にはカッコイイので気に入っているのだが。
「……問題はこれか」
俺は学校カバンからタオルに包まれた物をそっと取り出す。包まれてもなお、その上からは生物の本能を恐怖させる、重圧の様なものが伝わってきた。
俺は意を決してタオルからそれを取り出し、【鑑定】を発動させた。
----------------------------------------------------------
[魂削包丁]
等級:特級
効果:吸魂 自己修復
魔剣。殺された者達の怨念が宿っており、
生ある者を拒絶する。
斬った人間の魂を削り取り成長していく。
----------------------------------------------------------
包丁全体は黒く染まり、赤黒い血管の様なものが刃に通っている。時折、鼓動のようにその血管が脈動し、生きているかのように錯覚する。
……まさか血塗れの包丁を異世界に持っていくだけでこんな変化をするとは思わなかった。
この持っているだけで邪悪認定されそうなこのアイテム。形状は普通の洋包丁だか、何のフォローにもならないだろう。
扱いをどうしようかと頭を悩ませていると、不意にドアがノックされる。急いで包丁をタオルに包むと、元の鞄に詰め込んだ。
「――何の用です?」
「朝食のご用意が整いました。それと、皆さんに連絡があるとの事ですので、食堂にご案内致します」
思わず硬い声になってしまったが、これくらい向こうは気にしないだろう。
どうやら何か話があるようだ。そう言えば、能力のチェックもまだされてなかったことを思い出す。
俺は荷物を纏めると、メイドの待つドアへと向かいながら、一人笑みを浮かべる。
異世界なら本当に楽しめそうだ。
しかしそこで気付いた。いつもの布団と感触が違うことに。
「――ハッ!」
瞬間、意識は完全に覚醒し、警戒心を剥き出しにして少年は飛び起きた。
羽吹真夜、異世界二日目の始まりだった。
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「知らない天井だ、とか言いたかったなぁ……」
ここに来てお約束を自ら逃したことに対し、朝から悔しい思いだった。
窓から朝日が差し込む中、気を取り直した俺は昨日と同じようにベッドに腰掛ける。
昨日は一日中、宛てがわれた部屋に閉じこもっていた。何度か部屋から追い出したメイドが食事を運んできたが、それだけだ。
扉を開けるのは、食事を受け取る時と、外にあるトイレに行く時だけ。
食事に毒でも入っていないかと警戒はしたが、盛る理由が心当たりにないのとそもそも入っていても分からないので諦めた。
そのため、残りは状況確認とステータスの能力について検証する時間に当てた。
その結果、この世界に持ち込んだ教科書や衣服なんかは普通に変化が無かったが、携帯電話は全く使えなくなっていることが分かった。元の世界の物で役に立ちそうな物は殆どなく、仕方なく確認後はひたすらステータスの検証をしていた。
俺は昨日の成果を見るため、ステータスを開く。
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名前:羽吹真夜
種族:人族
Lv:1
称号:人間不信 親殺し 転移者 魔剣士
<パッシブスキル>
身体強化(1) 精神耐性(4)
<アクティブスキル>
家事(3) 鑑定(2) 拷問 直感 気配察知(1)
<ユニークスキル>
武器支配(1) 偽装
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検証の結果、意識すれば【偽装】を施したステータスと、していないステータスをそれぞれ分けて見ることができることが分かった。
どうやら、自分の持つスキルの使い方や効果は何となく分かるようだ。お陰で、大体の能力の把握はできた。
【拷問】はその名の通り、【拷問】に関係する行動をとる時、補正がかかる。それは対象の痛覚を増幅させたり、誤って死なないようにできるというものだ。
【直感】はただ感覚が鋭くなる、というものだ。昨日感じた、嫌な感覚もこれの効果だった可能性は高く、単純ではあるが重要そうなスキルと言える。
【鑑定】は対象に使うよう念じると、その対象のデータを見ることができた。
何度も試したせいか、括弧の中の数値が変わっている。どうやらこれはそのスキルの熟練度、スキルレベルと言うらしい。スキルによってあるのと無いのとがあるんだとか。
どうして部屋に引きこもっていた俺がそんな事を知っているのかと言うと、ここの壁が薄いことが関係している。隣はクラスメイトの部屋。
そいつがお付きのメイドにあれこれ質問しているのを、壁に聞き耳を立てて盗み聞きしていたのだ。
おかげで【気配察知】というスキルまで得ることまでできて一石二鳥だった。
称号についても多少知ることができた。
どうやらそれぞれ称号に効果があるらしいが、詳しいことは未だ分かってないものも多いらしい。
例えば[ビーストキラー]という称号を持っていたとする。すると、獣系の魔物に対してのみ、発揮できる力が少し強くなる、と言った具合だ。
俺の持つ【偽装】ともう一つのユニークスキル、【武器支配】についても色々と試してみた。
俺は部屋の隅に置いてある食器から、ナイフを一本取る。
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[銀のナイフ]
等級:中級
食器用。切れ味は鋭い。
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これがナイフの【鑑定】結果だ。等級がいくつまであるのかは分からないが、恐らく食器としては相当良い部類に入るだろう。
このナイフに対して、【武器支配】を使うように念じる。すると、ナイフはひとりでに浮き、俺の眼前で静止する。
そのまま動かすように意識すると、自在に回転したり飛ばすことができた。
どうやらこれが俺の能力らしい。武器を操り支配する、何とも微妙な能力だ。
スキルレベルが低いためか、動かせるのは一本。能力が及ぶ範囲はは五メートルまでだ。部屋にある家具なんかにも発動できるか試してはみたが、動くことは無かった。対象はナイフのように武器と認識されたものだけのようだ。
強い能力ではあると思いたいが、盗み聞きした話では、召喚された者が持つユニークスキルは基本、一つから三つ。俺の【偽装】は戦闘には使えないので実質一つだ。とはいえ、結構個人的にはカッコイイので気に入っているのだが。
「……問題はこれか」
俺は学校カバンからタオルに包まれた物をそっと取り出す。包まれてもなお、その上からは生物の本能を恐怖させる、重圧の様なものが伝わってきた。
俺は意を決してタオルからそれを取り出し、【鑑定】を発動させた。
----------------------------------------------------------
[魂削包丁]
等級:特級
効果:吸魂 自己修復
魔剣。殺された者達の怨念が宿っており、
生ある者を拒絶する。
斬った人間の魂を削り取り成長していく。
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包丁全体は黒く染まり、赤黒い血管の様なものが刃に通っている。時折、鼓動のようにその血管が脈動し、生きているかのように錯覚する。
……まさか血塗れの包丁を異世界に持っていくだけでこんな変化をするとは思わなかった。
この持っているだけで邪悪認定されそうなこのアイテム。形状は普通の洋包丁だか、何のフォローにもならないだろう。
扱いをどうしようかと頭を悩ませていると、不意にドアがノックされる。急いで包丁をタオルに包むと、元の鞄に詰め込んだ。
「――何の用です?」
「朝食のご用意が整いました。それと、皆さんに連絡があるとの事ですので、食堂にご案内致します」
思わず硬い声になってしまったが、これくらい向こうは気にしないだろう。
どうやら何か話があるようだ。そう言えば、能力のチェックもまだされてなかったことを思い出す。
俺は荷物を纏めると、メイドの待つドアへと向かいながら、一人笑みを浮かべる。
異世界なら本当に楽しめそうだ。
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