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13話

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アンブラ街──

「ふぅ……やっと帰って来れた。これで暫くはセバーヌも来ないだろう──さて、ヴィレは何処だ?«探索»」
と俺は探索魔法を使う。
どうやらギルドに居るようだな─
ヴィレの動きを確認しながら俺はギルドに向けて歩き出した。


ギルド──

「リズさん、カイさんはまだ帰っていませんか?あとこの依頼完了しました。」
「まだ帰ってきていませんねぇ…はい、確認しました。報酬は金庫に預けますか?」
「そうしてください。」
「かしこまりました。それにしてもこの依頼をこなせるのがカイさん以外に居たんですね(笑)怖くなかったですか?」
「いえいえっ!とても可愛くてもふもふで大人しい犬ですよ!僕もまた遊べて嬉しかったです!」
「あはは……あれが犬ですか……カイさんも規格外ですがヴィレさんも余程ですね(笑)」
とリズは苦笑いを浮かべ、ヴィレはなんの事か分からず首を傾げる。

カラン……ッと扉が開くと鳴る鈴の音が夜遅くなので人の居ないギルド内に響く。
その音に気づいた二人は誰か来たのだろうかと振り向く。
「「カイさん!」」
と二人は息を合わせたかのようにシンクロして名前を呼ぶ。
「すまんな。セバーヌに呼ばれて少し空けていた。ヴィレもいきなりで驚いただろ?」
「もう驚き過ぎてカイさんがいなくなった日は寝れなかったんですよ!」
「また急に居なくなったのでびっくりしましたよ!」
とヴィレとリズは交互に文句を俺にぶつける。
「悪かった。また暫くは連れてかれることも無いだろうから心配するな。」
「そうだ!カイさんカイさん!今日は僕、ハウザーの依頼したんですよ!」
「変わりなかったか?」
「はい!いっぱい遊んだり訓練したりしました!ローナさんも優しくして一緒にお茶を頂いたりしました!”何時でも遊びに来てもいいのよ”って言われました!」
ヴィレは今日起きた事を嬉しそうにまるで子供が親に話すように話す。
「それは良かったな(笑)」
とヴィレの頭をぽんぽんっとする。
「お楽しみの所申し訳ありませんが、そろそろギルドも閉めますので」
「もうそんな時間か。ヴィレ帰るか。宿で俺が居なかった数日の出来事を聞こう。」
「はい!」
と俺とヴィレはギルドを後にした。

「親子にしか見えませんね(笑)」
とリズはクスッと笑い後ろ姿を眺めるのだった。




朝のギルド──

「おはようございます!リズさん!」
「おはよう、リズ」
「おはようございます。カイさん、ヴィレさん─今日はどの依頼受けますか?」
「まだ束の依頼が終わってないからそれから終わらせるよ。」
と束を出して依頼を選ぶ。
まぁ─こんな所だろ。
「この三枚を頼む。それとヴィレのも一緒に頼む」
とゴブリンの巣の探索依頼の紙も渡す。
ゴブリン単体だとEランクでも、武器を持つ一般人でも楽勝だがそうそうゴブリンが単体で行動することは無い。一匹で歩いていたらそれは逸れか巣から追い出されたかだ。
それにゴブリンは繁殖能力がずば抜けて高い。
放っておくと村等が荒らされて厄介な事になるのでな。
こうしてギルドで定期的に巣を探索して異常な繁殖が無いか調べるのだ。
「ヴィレ、これはゴブリン退治も兼ねているからな。俺がいなかった間の成果を見せてもらうぞ。」
「ぅッ……緊張してきました……」
─────
───
──

森の中──
「まずはヴィレの依頼からだ。この辺りにゴブリンの巣があるらしい。探し出せるか?」
「がッ……頑張ります!」
とゴブリンの巣に繋がる痕跡を探し始めるヴィレ。
「カイさん、複数のゴブリンの足跡がこの獣道に向かって進んでいます、何かで草を切った痕跡が新しいので確率は高いと思います。それにこの先には洞窟があったはずです。」
「正解だ、しかしヴィレは探索の魔法は習得してないのか?」
とヴィレに返す。
「周りに探索を教えてくれる人が居なくて……」
あはは……と苦笑いを浮かべるヴィレ。
それにしても探索の魔法は無属性だから魔力と使い方さえ知って居るものであれば教えられる筈だ。
「それなら俺が教える。ヴィレ魔力操作はできるな?」
「初歩であれば……」
「十分だ。まず魔力を操作して全身に魔力を行き渡らせろ、その行き渡らせた魔力を外に勢いよく出す感じで流してみるんだ。」
「やッ……やってみます!」
ヴィレはそう言うと目を瞑り自分の中の魔力を操作し始める。
中々上手いな──これなら直ぐに習得出来そうだな。
「行き渡らせたら放出してみろ」
「……ッ……!」
「反応があっただろ?」
「はい、やはりこの獣道の先で反応がありました。」
「一発で方向まで分かるのは凄いぞ!ヴィレ」
と褒める。
ヴィレは褒められて今までの緊張が解れたのか笑みが溢れる。
後は戦闘時のテンパる癖が治れば良いんだけどな……(笑)
「常に魔力操作をする事で精度も早さも上がるからするようにな。」
「はい!カイさん!」
元気のいい返事だ。
さて、そろそろ調査に向かうか。


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