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「ただいま~」
「戻りました~」
と俺とヴィレはギルドの扉を開けるなりそう言って中に入った。
「お疲れ様です♪カイさん、ヴィレ君 後カイさんにお客様が来てますよ」
とリズが休憩スペースの方を振り向いてそう言う。
俺に客?誰…だろう……………ッ!セッ…セバーヌ!!?まずい!逃げなければ!!!!
と俺が逃げようとする。
するとガシッと何かに掴まれてその場から動けなくなった。
俺はギギギッと金属が錆びた様な音を鳴らして恐る恐る後ろを振り返る。そこには目が笑っていないセバーヌが俺の肩を掴んで立っていた。
「フフフ…久しぶりですねカイ…やっと見つけました…今度は逃がしませんよ」
とセバーヌは言ってくる。
何故だ!?何故こんなにも早く見つかった…!?誰にもここで冒険者をやっている事は言ってないはず…
と俺はセバーヌがこんなにも早く俺を見つけた事に疑問を思い思考を懲らす…
「あの…カイさん、こちらの方は…」
とヴィレがおずおずと聞いてくる。
「俺の知り合いのセバーヌだ…」
「初めましてセバーヌです。」
と笑って答えるセバーヌ。
「僕はヴィレです」
「ヴィレさん、少しこの馬鹿…いえカイを借りますね」
「ぁ…はい」
セバーヌは“ありがとうございます”と言って転移の魔法を使った。

「では…言い訳を聞かせてもらいましょうか…カイいえ…魔王様…」
とセバーヌは俺の前で仁王立ちをして言ってくる。俺は人っ子一人居ない野原に転移させられると直ぐに«氷の拘束»«蔓の拘束»«土の拘束»で正座のまま動きを封じられ周りには«防音結界»«逃亡防止結界»«結界»を張られた。しかも俺の頭の上には«氷の槍»が幾つも準備されている。
「セバーヌ…一旦落ち着こう…」
と俺はセバーヌを落ち着かせようとしたが無駄だった…
「ほほぅ…勝手に継承の儀式を行い、勝手に出ていった貴方に落ち着けと言われる筋合いはありませんが?」
とまた目が笑っていない笑顔を向けてく言ってくるセバーヌ。
やばいッやばいッ!マジでやばい!こいつ怒らせると俺でも負ける。
「では改めて訳を聞きましょうか…魔王様」
「飽きたから…(ボソッ」
「なんと言いましたか?」
「魔王に飽きたんだ!悪いかよ!」
「飽きたからまだ幼いターメリに継承の儀式を行い出ていったと?ふざけているんですか?今の我々の状況を分かっていますか?戦争中なんですよ?まだまだ魔王として未熟なターメリに戦策が立てられるとでも思っているのですか?思いませんよね?確かにターメリの魔力は膨大でありますけどまだ幹部クラスに届かない程度ですよ?それに戦争の経験もない知識もまだまだ足ない兵士達からの信頼もあまりない者に皆が付いてくるとでも思いですか?」…グチグチ…
とセバーヌの説教が数時間続いた。
俺も一応反発はしたよ?“200年以上も魔王やっているんだぞ!”って言ったら“先代は500年以上魔王をやっていましたよ”ってセバーヌが返してきて“先代も継承の儀式をした後どっかに行っちまっただろ!俺と変わらないじゃないか!”ってまた反発したら“先代は貴方が次期魔王として相応しくなってから継承の儀式を行い出ていきましたよ…何処に居るかは知りませんが”とまたも返してくる。もうこれ位で分かっただろ?俺はセバーヌに口では勝てない事が…
「まぁ…この位にしておきます」
やっとセバーヌの説教が終わった。
しかし魔法はまだ解かれていない…
「セバーヌ…この拘束を解いてはくれないのかな?」
「自力で解いて帰ってきてください 後貴方の頭の上にある«氷の槍»は数十分で自動的に放たれますので…」
と言ってセバーヌは結界の中から出て“早くしないと死にますよ”と言って転移をして消えた。
はぁあああッ!?お前の魔法を数十分で解けるわけねぇだろ!魔力に物を言わせる俺の魔法と違ってお前の魔法は精密度がやばいんだぞ!この前何発打って拘束を解いたと思っているんだよ!
と俺は一人で心の中でツッコミを入れている。
「ってこんな事してる場合じゃない!」
と俺は土の拘束をまずは解こうと魔法を発動させる…


~~~~ギルド
カランカラン…
「えっと…セバーヌさんでしたっけ?カイさんと一緒じゃないんですか?」
とカイと共にどこかに行ってしまったセバーヌがギルドに一人で入ってきたのを見てヴィレはそう質問をする。
「あのバ…カイは後から来ますよ…」
とセバーヌは言って休憩スペースで本を読み始めた。
数十分後……
カランカラン…
「セバーヌ!なんだあの«氷の槍»は!?追ってきたぞ!」
とボロボロになった俺はギルドに入るなりセバーヌに文句を言った。
「あそこから出られたんですね…あれは貴方の魔力を感知して追跡する様にしました。遠隔操作が要らないので便利なんです」
とセバーヌは本を閉じそう言い返してくる。
清々しい顔しやがって~!そもそも追跡っていつ使うんだよ!使う事ないだろ!
「あれくらい出られないわけ無いだろ」
と俺は腕組みをしてそう言いセバーヌの座っている方の反対側に座る。
「まぁ…ボロボロですけどね」
「これはたまたまだ!」
「そうですか…では私は帰りますので」
とセバーヌは閉じて持っていた本をバックの中に入れて立ち上がる。
「俺を連れてかないのか?」
「連れていってもいいですがどうせ直ぐに逃げ出しますしもう魔王でも無いですしね…後書類の山がありますのでね」
とセバーヌは俺だけに聞こえる音量でそう言って去っていった。
これは…もう戻ってこなくていいって事か…戻らないけどな・・・・・やったー!!!!
こうして一日は過ぎていった。
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