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6話

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カランカラン…
「あっ!おはようございます、カイさん!」
と受付場所を綺麗に拭いているリズがカイに気づいて挨拶をする。
「おはよう、今日は朝からなのか?」
「今日は朝から夕方までの当番です。」
とリズはニッコリと笑いながら言った。
「カイさん!おはようございます!」
と背後から聞き覚えのある声で挨拶をされた。振り返ってみるとヴィレがそこにいた。
「よぉ~ヴィレおはよう」
とカイは片手を挙げて挨拶を交わす。
「昨日集めた素材を持ったままでした。すみません…」
とヴィレが謝ってくる。
「気にするな、俺が別れる前に言わなかったからだ」
とヴィレのせいではない事をカイは言う。
「リズ今から素材の鑑定できるか?」
“少し待っててください”と言って奥に入っていった。
「お待たせしました、一人鑑定士がいたので出来ます。素材を出してください」
と数分後に戻ってきてリズはそう言った。カイはヴィレの鞄に入っている方を先に出させた。まずはこれだけ先にしてくれとカイは言った。
“鑑定に持っていきますね”とだけ言ってリズは素材を鑑定士に届けに行った。届けに行って戻ってきたリズにカイは練習場を貸してくれと頼んだ。リズは何時もの事のように“まだ誰も使っていませんから先に行って出しておいてください”と言って練習場の使用書を書きにいった。
カイは分かったと応えて練習場に行き昨日狩ったファイア・ドラゴンを並べてクララ草も砂が付かないようにシートを敷いた後綺麗に並べた。後はリズと鑑定士を待つだけだとカイは思って近くに腰掛けて待っていた。
「カイさん、お願いがあるんですけど…」
とヴィレが突然そう言ってきた。
「…なんだ?」
「僕を強くして下さい!」
と頭を下げてヴィレがお願いをしてきた。
そうだな…確かヴィレはテンパってしまうから前のパーティーから能無しと言われて追い出されたんだっけ…俺が見る限りテンパらなかったら結構強いと思う。しかしどうやって治すかだな…ん~と腕を組んで考え込む。
「ダメですか…」
と考えているカイにヴィレはショボンとして聞いた。
「ダメじゃないぞ…しかしどうやって戦う時のテンパりを治そうか考えてたんだ」
と言うとヴィレは元に戻って嬉しそうだった。
「カイさん、他の人にはまだ言っていないんですけど…僕は勇者なんです」
「………は?もう一度言ってくれ…」
「僕は勇者なんです!」
と今度はさっきよりも大きい声でヴィレは言ってきた。
「ハァァァァァ!!勇者ーーー!!」
とカイは大声で叫んで驚いた。
ヴィレが勇者だと!俺は勇者を育てるのか!?
“証拠はこれです”と言ってギルドカードのステータスの称号部分を驚いているカイに見せてきた。書いてある…ちゃんと書いてある…これは本当だ…ギルドカードは嘘付けないからな…
「こんな僕が勇者って笑えますよね…肝心な時に何も出来ないから…」
「いや…ヴィレお前なら出来ると俺は思うぞ?」
「本当…ですか……?」
「本当だ、俺が立派な勇者にしてやるよ」
とは言ったものの元魔王が勇者を育てるって笑えるwwwターメリには悪いがヴィレを鍛えさせてもらうぜ

こうしてヴィレの特訓が始まった─。
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