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第一章

第一章11「束の間の休息」

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 二人はまたデンテイルズに宿泊する。
 ここ二日間、体力の消耗が激しすぎた。
 上級魔法の強さはこの身をもって知れたが、代償を受けることにも気づいた。
 この代償は経験で何とかなるものなのだろうか。属性によって代償が異なるのか。
 様々な疑問が浮かんでくる。

 それにしても今日の現象はとても気持ち悪かった。
 ループ。如何にも胡散臭い言葉だ。
 それを身をもって感じた。
 あのゴブリンは何者なのか。
 またしても疑問が浮かんでくる。

 これじゃキリがない。もう寝ることにしよう。

「おやすみ。リア。」

 またしても同じ部屋で寝ることになった。ベッドは離れているが安心だが、相手は不満に思っているのだろうか。

「おやすみ!」

 思ってなさそうだ。
 まあ節約のためだ。仕方がない。

 そういえば忘れていた。
 あの闇上級魔法を使った時、何か壊れた音がして。

 自分の胸元、ポケット、いたるところを探すが、ない。
 杖が壊れたのだ。

 おそらくリアのも壊れているだろう。
 あんだけ魔法をぶっ放して壊れない杖のほうが怖い。

 明日2本補充するか。
 そう決意して夢の中に入っていった。



 翌朝、時刻はおそらく7時くらいいだろう。
 登校の感覚がまだ残っており、毎日この時間に起きてしまう。
 一種の職業病と言っても過言ではないだろう。

 少し離れたベッドではリアがぐっすり眠っている。
 起こすのはかわいそうか。

 起きるまで何をしよう。
 そう思い、扉を開けた。

 この世界はモンスターを倒すと自動で財布のお金がたまるシステムということに最近気づいた。
 そして財布の管理は俺が行っている。
 杖を買いに行こう。それも、前のよりずっといいものを。

 ループしていた道中、いやまだループしていたことを信じられない。
 その時に50は超えるだろうという数のモンスターを倒してきた。
 そのモンスターは狼に似た何か、熊に似た何か、鼠に似た何かなど様々な動物型のモンスターがいた。
 スライムやゴブリンなど、よくある敵には遭遇していない。
 少しそのことについて気がかりだがモンスターを倒すことにより大量のお金が入手できた。
 ゴールドといった方が異世界感が出るだろうか。

 俺は杖を見くびっていた。
 しかし、その信用は間違っていた。
 木の杖であの能力なら、鉄とかならバランス崩壊するのではないか。
 インフレしてしまい、つまらなくなるのではないか。
 そんなことを気にしながら、
 でも、死ぬのは一番よくない。

 朝からでも、賑やかな町だ。
 そう思いながら、大通りを歩く。
 朝からでも人が行き交う姿を見ているとこちらまで嬉しくなる。
 ここで商売をした方がいいのではないか。
 そう思わせるほどの繁盛さだった。

 前に来た、杖売りや的なところに着く。
 また、あのおじいさんがいた。

「また来たのか。もしかして壊れたのか?」

「そうです。それでもっと強い杖を買いに来ました。」

「残念じゃが、あれより強いもんは置いてない。」

「そうですか。―――じゃあほかに杖を売っているところとか知ってます?」

「この町には私しかおらん。杖なら中央王国に行くのがおすすめじゃよ。あんたたちは冒険者じゃろ?なら行けるはずじゃ。」

「中央王国ですか。そこは難しいですね。」

 前、この世界の戦争状況について、この町の5人ほどに聞いたが、全員が沈黙した。

「どうしてじゃ?」

「今、そこで戦争が行われているじゃないですか。」

「あー、なるほどな。でも、今は休戦中じゃろ?別に無差別殺人なんか起きるような物騒な場所じゃないし、行ったらどうじゃ。」

「え!言っていいんですか。そんなこと。」

「なんで言っちゃダメなんだ?」

「前、この町の人たちに戦争について聞いたんですけど、誰も答えてくれなくて。」

「あぁー、なるほどな。また下らんことをしやがって。」

「どういうことですか?」

「説明するよ。この町には、あるルールがあってな、それが戦争の話題を出さないというルールなんじゃ。このルールが作られた理由だが、見ての通りこの町には武力がない。戦争なんか始めたら一瞬で終わりじゃ。だから、戦争なんて考えずに、商売を楽しもうっていう考えでこのルールが作られた。」

「そうだったんですか。―――でもあなたはどうして私に?」

「楽観的で得をするのは自分だけだ。決して安全になる訳ではない。」

「それは?」

「わしの持論じゃ。」

「いいですね。話が合いそうな雰囲気がします。色々とありがとうございました。この御恩はいつか返しに戻ってきます。」

「達者でな。」

 素敵な人だった。
 あんなひとが先生だったら学校はどれだけ良い場所になるのだろう。

 とにかく情報の整理をしに宿へ戻ろう。
 その時、歩き出した後ろの方で何やら叫んでいる声が聞こえてくる。
 ふと振り向くと、とある屋台を炎が覆っていた。
 それに気づいた瞬間、セイナは体を傾け、走り出した。
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